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東進 今から始める受験数学 テーマ別への準備 ⅠAⅡB 志田晶

対象読者

志田先生の今から始める受験数学テーマ別への準備がどのような講座なのか気になっている方。東進で公開授業を受けたりCMを見たりして、先生の授業に興味が出てきた方。これらの方々が今回の記事の対象です。

授業内容

基本は教科書レベルの内容を扱い、後続のテーマ別数学とは異なりほぼ縦割り(一部横割り)で進んでいく講座です。一通り学習していることを前提に作られているので、初歩的な部分の計算方法(平方完成や微積、ベクトルの計算など)や、記号の使い方などについては説明がありません。処理方法や公式も知っていることが前提で進んでいきます。
それに加え、ポイントや定石の具体例、解答や、別解などでⅠの時にⅡを使って説明することがあったりするので、初学者向けではないです。具体的に言うと図形の性質でベクトルを使ったり、複素数と方程式で微分法の内容が出てきたりします。
そのため、一通り単元に触れたことがある人が、受験に向けてほぼ初歩から固めていくための講座になっています。データの分析は扱われていないので、その点は注意しておいてください。

授業ではテーマ毎のポイントに加え検算方法や計算のコツについても適宜触れられます。

東進の先生では珍しく、志田先生は基本的に雑談がないのですが、√aの作図の所で、ガロア理論と絡めて志田先生の大学生時代についてすこしだけ雑談があります。

感想

志田先生らしくとても高クオリティの授業でした。長年の経験から受験生が疑問に思いがちな所、質問にきそうな所、誤解しがちな所、参考書で学習していると見落としがちなこと、どう説明すれば受講者が理解しやすいのかなどを完全に把握しており、全くの疑問が残らない"ほぼ"完璧な授業でした。
ただ、天下り的な解説や発想の説明を一部カットしている部分が多少あるので、そこだけが唯一の悪い点かなと思います(個人的には分野によっては解法が整理されていない感じがします)。レベル上、気にしすぎてもいけないのですが、解法の発想部分の説明がどうしても鉄緑や小山先生、五藤先生、池谷先生らに比べると弱いです(分野間や問題のレベルによっても差があります)。しかし、繰り返しになりますがそれ以外は流石のクオリティですので、ひとまずこの講座を上のレベルへの足がかりにしてもらい、次の段階で発想法などを体系的に学習していただくといいと思います。

黒板の下につけてある赤いシールの範囲に板書を納めないといけないためか、式間や考え方についてかなり口頭で説明されるので、口頭説明もしっかりメモをしていないと後でノートを見返した時に何をしているのか分からなくなりそうだなと感じました。自分の知ってる範囲では、レベルにしては板書だけで見ると1番式間を飛ばしている先生です。
さらに、問題解説の前にされるpcで作ってきたポイントや定石、知識の説明より、途中途中の口頭説明や問題の最後でする口頭のポイント説明の方が上手くまとめられていることが多いので、先生の授業ではメモがより重要になるなと感じました。

年齢的なものなのか、先生本人も一部気づいていらっしゃるのですが、言い間違いが結構あったのが少し気になりました。大抵の場合は直前直後の説明と矛盾するので、気づけると思います。

授業の進め方

まず始めにその授業で扱う単元がどのような単元なのか、どう勉強していくべきなのか、注意点について説明され、その後、扱う問題に関連する知識や定石についての説明があります。この時高校の範囲内で説明できることについてはなぜその公式が成り立つのか、なぜそのような定石になるのかについて、具体例を用いた説明や証明があります。複数例見た方がいい場合は、追加で練習コーナーとして簡単な問題で確認が入ります。これが終わり次第問題解説です。問題解説は息が長い問題は最初に全体の流れを説明してから解答に入り、解答が終わると、最後にまとめるねっ!と言いその問題のポイントや注意点、全体の流れを説明し終わります。この後問題によっては、いくつかコメントしていきますっ!、これってさぁなんかと似てない?、これはさぁ、数学的にどういう意味かわかる?といって問題に関連する内容を話したり、問題の設定を変えたりして問題を深掘っていきます。
説明の際に、ビジュアル的に説明したほうがわかりやすいものや、時間の都合上板書している暇がないもの(追加の説明や別解など)については、先生が事前にpcで作ってきたものを用いて説明されます。

前提学力

東進の受験数学基礎と同じレベルなので、内容が身についていなくてもいいので、単元に一度触れたことがある人向けです。初学の方は記号や基本処理について説明なく行われることがあるので、基本的にオススメしないです。完全に初学の方は入門問題精講ややさしい高校数学、スタサプのベーシックレベル数学、東進さんだと高等対応数学を検討してみてください。

テキスト

他の志田先生の講座と基本的にテキスト構成は同じです。基本事項まとめ、授業用例題、復習用例題からなっています。ただ、他の講座とは異なり単元毎学んでいく講座なので、基本事項まとめは前に纏めてすべて掲載というわけではなく、単元毎に分割された形になっています。復習用例題では授業で扱いきれなかったタイプの問題やより問題数をこなして欲しいと先生が考えた問題が掲載されています。
基本事項まとめでゼロから説明がありますが、授業と違ってかなり解説が簡素なので、本当に一度身についた人の抜け漏れのチェック用だと思ってください。後でも述べますが、復習用例題も正直かなり解説が簡素で式間、行間もあり、欲しい解説がなかったりするので、もし自力で解くのがキツイなと感じる方は網羅系や志田先生の参考書と併用することをオススメします。

注意点

必ずメモを取ってください。パソコンで作ったものや口頭説明が意外と多いので大変かもしれませんが、必ずメモを取ってください。感想の部分で触れたように、どうしてその考え方になるのか、式間などについてかなり口頭で説明されるので、板書だけをノートに取ってしまうと後で何を書いているのか全くわからなくなってしまいます。それに、先生は口頭説明でも大事な事を数多く言う(むしろ口頭説明の方が大事です)ので板書だけをノートにとるのは非常にもったいないです。絶対に板書の内容だけノートにとるということはしないでください。東進生を見ていると結構な数の方が、そうしているので本当に注意してください。

練習コーナーは止めてでもいいので必ず一度自分で考えてください。先生の練習コーナーは躓きがちな所や誤解しやすい所を的確についてくれるので、その場で考える価値は十分あります。
練習コーナーの板書は先生は取らなくてもいいとおっしゃっていますが、自分が実際に考えてみて考えつかなかったこと、盲点だったことだけでも、問題そのままではなくメモ書き程度でいいので書いておくことをオススメします。

授業中なんでこうなると思う?、ここさぁ、なんでこうなってるかわかる?と問われることが結構あります。こういった時も先程の練習コーナーと同じで、なんでだと思う?(無視笑)ではなくしっかり考えるようにしてください。数学はみなさんが思っているよりもずっとずっと知識の側面が強く、発想法にしても、定石にしても覚えておかないといけないものばかりです。しかし、数学において大事なことは知識だけではありません。知識に加えてそれらを扱えるだけの知的腕力(運用力、理解力、解決力)も大事になってきます。ではそれをどうつけるのかというと、自分がわからないものにぶつかり、しっかりと頭を使い、「なるほど!わかった」という経験を積んでいくしかありません。当たり前のことをいいますが、楽器をひけるようになりたければ、楽器を引かなければいけませんし、速く走れるようになりたいならば、速く走る練習をしないといけません。筋肉をつけたければ、筋トレをしないといけません(もろん今あげた例はすべてコツ、注意点があることはわかっています)。したがって、知的腕力を鍛えたければ思考回数を増やし、頭に負荷をかけながら「なるほどな」という経験を積んでいくしなないのです。だからこそ、練習コーナーや授業中に先生から考えてみてくださいと言われたり、なんでだと思う?と聞かれたりしたら、その機会を大事にし映像を止めて必ず自分の頭で考えるようにして欲しいのです。
予習は言わずもがなです。
復習もしつこくしてください。

オススメの使い方

この講座と網羅系を併せて使うことをオススメします。併せて使うといってももちろん軸は講座です。理由は先生が授業中にこのタイプの問題は自分で探して解いておいてください、自分で練習を積んでおいてくださいとおっしゃり問題を探さないといけない場面や、復習問題の解説が薄くより詳しい解説が欲しい場面(テキストの解説はほぼ解答のみの状態で市販の問題集の方が解説がしっかりしている)が出てくるからです。そういった時にスムーズに類題や類題の解説を探すためにも網羅系を用意しておいたほうがいいです。網羅系以外の志田先生の共通テスト黄色本やスモールステップ完全抗議でも大丈夫です。ただし、欲しい類題や類題の解説が所々抜けているので、その点は留意しておいてください。
網羅系であればどれであっても構わないのですが、解説の書き方的にニューアクションレジェンドがオススメです。ポイントが明文化されており、思考プロセスがしっかりしているので、学習しやすいと思います。

受講後は

志田先生がおっしゃるように、一度教科書を読み返した後、後続講座のテーマ別数学に進んでください。教科書を読み返すと授業で学んだ内容の類題に触れられるので、単純に復習になりますし、授業を受けて理解が深まったことで、教科書の何気ない説明やまとめ、解き方の数学的な意味がわかり新たな発見も多いと思います。
もともとテーマ別につながるように作られたこともあり、受験において頻出であるのに、テーマ別で本格的に触れるがゆえに、あえて深入りせず触りしかしていない所や重要なのに扱っていない所がかなりあります。したがって、それらを補強するためにも基本的にこの講座の後は、教科書を読み終わり次第テーマ別数学に進んでください。金銭的にどうしても厳しい方は問題集などを使って補強していただくといいと思います。

受験生の参考になれば幸いです。


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