見出し画像

ここからはじめる現代文ドリル 感想


対象読者

ここからはじめる現代文読解がどのような本か気になっている方、どう使えばいいかわからな方、そもそも使うか迷っている方、今回はそういった方々が対象です。
「強み→弱み→感想→注意点→オススメの使い方」の順に話を進めていきます。

ここからはじめるではなく、ここからつなげるについて知りたい方はこちらの記事を参照してください。

強み

*読み慣れと現代文の学習が同時にできる
殆どの現代文の参考書は一番レベルの低い参考書であっても、長文(中文含む)を扱っている事が殆どです。そうなると、苦手な人はそれだけでも取り組む際の高いハードルになってしまいます。英語でイメージしてもらうと分かりやすいと思うのですが、長文が読めない内に英語長文の学習しようとするとかなり勇気がいりますよね。これと同じような現象が、扱っている文章が長い参考書だと起きてしまい、どうしても高いハードルになってしまっています。
しかし、本書はかなり短い文章、文(一文)からはじまるのでそういったことが起こりません。非常に取り組みやすい作りになっています。扱われている文章が短いので、今までまともに活字に触れてこなかった人にも気楽に取り組みやすく、読み慣れをしていくのにもうってつけです。
読み慣れをしていく素材として優秀だと述べましたが、本書はそれと同時に読解の技術について学べることも強みです。短い文章で読み慣れをしていくとなるといくらでも候補があるでしょうが、読み慣れをしながら現代文についても学べるとなると、かなり選択肢が絞られてきます。本書はその二つが同時にできる数少ない選択肢の内の一つです。

*入り口、出口を徹底的に意識した作り
レベルをホントの初歩まで下げたり、よくある質問や勉強法を載せてあったりするので、入り口作りが徹底されています。加えて、各項目毎に押さえておきたい内容が明示されていたり、修了反対模試がついていたりするので、出口作りも徹底されています(修了判定模試の解説にどのポイントを使っているのか明示されているのも復習しやすくいいと思います)。
入り口作りが徹底されているので、挫折しにくいですし、出口が明確になっているので、何ができるようになったら、この参考書の内容を習得したと言えるのか分かりやすい作りになっています。このおかげで、学習者にどこまですればいいのか?、どこまですれば完璧といっていいのか?という不安を抱かせにくくなっています。

*現代文の学習法やよくある質問について触れられている
最初の方に現代文の学習の仕方、現代文学習でよくある質問について答えてあるので、これらを読むことによって、これからの現代文学習の指針が立ち、迷いにくくなります。はじめたばかりの人にとっては、質問したいことや、どう勉強すればいいかわからないこと、が多いと思いますので、非常にありがたいです。

*同じことについて繰り返し学習できる
ゼロから覚醒と違い、ドリルというだけあって同じことに何度も触れることができます。ゼロから覚醒では各内容について、簡単な問題が二問しかなくなかなか定着まで持っていけませんでしたが、この参考書の場合一つの事項についていくつも問題がついているので、具体例を数多く見れ定着させやすくなっています。

*クロスレクチャーの前段階として使いやすい
クロスレクチャーはゼロから覚醒シリーズと違って、はじめから長い文章ではじまるので苦手でな人には厳しい面があります。読解法が同じで、長文に入る前の練習として、短文、中文で練習できる本書は前段階として使いやすいと思います。



弱み(改善して欲しい点)

いくつかあるので列挙していきます。
1
問題と解答の傍線部分が違ったり、答えが違ったり、問題が完全に別のものになっていたりするので修正して欲しいです。日本語の言葉が抜けていることはこれまで稀にあったのですが、今回はその誤植も、それ以外の誤植?もかなりの頻度で見られます(私も誤字がひどいので人のことは言えない)。一つ例を挙げると助詞が助動詞になっていたりです。一部ですが、そもそも答えがあっていない所もあります。主語述語の発見の所を見てみてください。例題と演習問題にそれぞれ一つずつおかしい部分があります。
2
普通の参考書問題集は問題の近くに解答を載せる場合、問題の番号を黒に、解答を赤にするのですが、本書はその色が逆転して問題の番号が消え、逆に解答の番号は残ってしまう作りになっています。そのため、赤シートなどで解答が隠せず極めて使いにくいです。何のために色分けしているのかわかりません(そもそも赤シートがついていないのでその使い方を意図していないと、言われればそれまでですが)。
3
例題と演習問題に問題として不適切な問題が混じっています。答えの方を答えさせたいのであれば、選択肢を削るかもう少し設問条件をキツくしたり、補足説明を加えたりしないといけません。そうしないと答えがわれます。稀に学びさせたい内容と、その問題で使うべき内容がズレていることが気になります。例えば、譲歩の講の例題は、問題提起のところで出すべき問題だと思います。
4
もう少し読解との関連性を示すべきです。そうしないと使っている高校生、受験生が本当にこの勉強に意味あるのかなと不安になってしまいます。
右下の「ここからはじめる」で読解での活かし方、補足で現代文における国文法の位置付けについて触れられていますが、もっと触れるべきです。教えている人は具体的な使用場面が浮かび重要性がわかりますが、一から積んでいく人には具体例(経験)がないので重要性がわからずどうしても不安になってしまいます。
もし指導教材として使う場合、指導者は意識的にその文法が読解でどう生きるのか、結びつきを言っていったほうがいいと思います。固有名詞は〜として使われることがお多いよ、数詞は〜として使われたり、構造の把握や、予測に役立つよなどです。
5
判別を要求する所での判別法の説明が薄すぎます。ドリルだから当たり前だろ!と言われるかもしれませんが、これが一冊目に据えられているので何か補助を必要としているものとは思えません。初学者向けなのですから、もう少し説明を丁寧にすべきだと思います。ゼロから覚醒が対応する参考書で、それを踏まえた上でこのドリルはするもんなんだ!と言われるかもしれませんが、ここで言及していることについては載っていません。解決できないのです。一つ例を挙げると文節の分け方などです。問題として問われているのに、ネやサで区切ればいいなどの記述はありません。その他にも判別を要求するのに、その判別の仕方に触れられていない部分がいくつもあったので、説明を追加すべきだと思います。
6
通常の国文法の参考書のように文節→単語のような形式にするなら、レベルも通常のものと同様に助詞、助動詞の知識が身についていなくても解けるものにしておくべきです。本書は前半部分に単語の判別問題がかなりあるのですが、助詞助動詞の知識はその後のページで扱っていて、まだその知識を習っていないにもかかわらず、それらが理解できていないと解けないレベルで問題が作られています。それなのに、解説で問題を解く上で必要なその講で扱われていない内容が詳しく扱われていたり、何ページで扱うからそこを参照してくださいなどのコメントがあったりすることはないです。このような状態だと、なぜ解答がそうなるのか理解できず、使っていて躓いてしまう人が多いと思います。
7
読解のための国文法なのですから国文法の区分けに無理に合わせる必要はなかったと思います。格助詞、接続助詞、副助詞、終助詞に分けることにどれほどの意味があるでしょうか。殆どないといっていいでしょう(一部の大学で出題される純粋な国文法の問題は考えないものとする )。それをするぐらいなら英文解釈が各文法事項を名詞、形容詞、副詞、動詞と機能の側面から繋ぎ合わせるのと同じように、この国文法の参考書も論理関係や、働きの側面から繋が合わせたほうが良かったかと思います。そうすれば、読解への意識付けもスムーズで、これって役にたつの?という不安にも陥りにくいです。機能の側面で繋ぎ合わせた後、拾いきれなかった所を具体例が出てきた時にその都度学習していく構成であればよかったのではないでしょうか。
8
全体的に解説を丁寧にして欲しです。例題に関してはそもそも解説をつけてほしいです(一部ついてます)。例題に関して直前でやってるから別にいいだろと思われるかもしれませんが、読解問題ではそうはいきません。知識を直接問うてるタイプならまだしも、読解問題や、前で説明している内容だけでは解けない問題は、別で解説をつけた方がいいです。そうでないと答えだけになってしまい、思考過程を確認しようがありません。ここからはじめる古典文法の方はついているのでこちらもつけてみてはいかがでしょうか。
例題に関してだけでなく、全体的に解説が簡素です。加えて欲しい部分の解説がなかったり、解説がずれている部分があったりします。
別冊の解説は基本的にその講で触れられた内容しか説明がないので、問題を解く上で必要なことでも、触れられていないことが多々あります。説明を聞きたいのはそこじゃないんだけどなぁって思う部分が多いと思います。
実際に解いていて思ったのですが、解説がずれてる部分がいくつかありました。柳生先生の参考書は小論文以外、授業、参考書含め殆ど取り組んでいて熟知しているつもりですが、この問題このルールじゃなくない?と思う場面がいくつかありました。加えて、少し変形したものを問題として扱う時に問題にも解説にも何も言及がないので、解説を読んだ人が同じものと見れてなかったり、(見かけが)違う問題なのになぜ同じように考えているのか理解できなかったりして、腑に落ちないことも多いのではないかなと思います。

感想

おそらく先生は最初からこの参考書のように国文法とレトリックに特化した参考書を書きたかったのではないでしょうか。ゼロから覚醒はじめよう現代文がコンセプトとしてかなり近い参考書ですが、あちらはさまざまな都合から特化した形にはなっていないです。
ゼロから覚醒は、「長文を扱わない学習は現代文の学習ではない」という過激派の意見を考慮してか、初心者向けであるにもかかわらず、無理矢理入試問題を扱おうとする構成上、第一部と第二部との間にかなり飛躍があります。英語に例えると英文法をして、その後いきなり長文に入るようなものです。昔に書いた東大現代文の参考書ルートで第二部は一旦飛ばしてくださいと言ったのもこのこの接続の悪さがゆえです。そのうえ、なまじ入試問題を扱おうとするせいで、国文法やレトリックについての説明が薄くなってしまい、扱う内容も練習する機会もあまり取れない状態になってしまっています。
しかし、今回のこれからはじめる現代文ドリルは、そういった飛躍がなく綺麗にレベルの上がっていく作りなっていまし、国文法やレトリックに特化した内容になっているので、以前から仰られていた先生の書きたいものを書けた一冊だと思います。

注意点

*内容を説明できるようにすることを目標にする
読解のパートからはその項目自体について説明できるようにしてください。問題は簡単なものばかりなので、問題が解けるようになることを最終目標にすると、たいして理解してなくても解けてしまいます。それでは本当の意味でなかなか習得できません。問題は最終目標ではなく、内容を理解させやすくするための一つのツールだと思ってください。
小説から読解法そのものを聞く問題ではなく、通常出会う問題に即した形になるので、問題のレベルが一段あがります。

*解説もしっかり読む
講義部分で説明していない、または、強調されていないプラスアルファの内容も書いてあったりするので、しっかり読みましょう。

*チェック項目も利用する
左下に小さく書かれていて見逃しがちですが、身についているかの確認になりますので、そこをみて必ず確認するようにしてください。

オススメの使い方

弱みを踏まえた上で、では実際に上手に使うためにはどうすればいいかについて述べていきます。

*単語問題は飛ばして二周目以降に取り組む
この本は単語問題がかなりネックになっているので、無視するか、助動詞や助詞に理解が深まった2週目以降から取り組むと、スムーズに進めることができます。

*わからない所はくわしい国文法を使って調べる
これでも分からないことが出てくると思いますが、その時は他の媒体でプラスで調べるようしてください。

*15もしくは17講から取り組む(それ以前は興味が湧いたら)
ここからはゼロから覚醒と同じような内容で、学習者が読解につながっていると実感しやすい所になります。ここから学ぶことによって余計な不安を抱かずにすみます。
修了判定模試で問われる内容が文節分けを除くと、17講以降の内容しか出題されないというのもこの取り組み方の理由です。

これらを意識してもらうと上手く取り組むことができます。

与太話

言い訳がましいのですが、今回の記事は客観的に評価したつもりです。いい所、悪い所のどちらかを無理矢理広げようという意図もないです。その点だけはご理解のほどよろしくお願いいたします。

受験生の参考になれば幸いです。

この記事が参加している募集

現代文がすき

もしよろしければサポートお願いします!頂いたサポートは参考書や授業など記事をかくための活動費として使わせていただきます!