【一次創作】【小説】【夢魔シリーズ】夢魔のはじまり
カランコロン。
ドアに取り付けられた鉄製の小さいベルが耳に心地いい音を奏でる。店内は珈琲の香りがふんわりと漂う。和らいだ日差しが窓から差し込んでくる午後二時過ぎ。駅前から少し路地を入ったところにあるこの喫茶店は、静かでゆったりとした時間が流れている。お昼を過ぎれば混雑のピークも過ぎて暖かな日差しも相待って、立ったままでも眠れてしまいそうな程だ。ここの給仕をしている夢藤拡はぼんやりと店内を見回し、客のお冷の減りと空いた皿はないかをさっと確認した。何もなさそうであることを確認