短歌おきば 2021-10

青葉慕ふ蟬の声々あと絶えて今ひとしほの秋の山風

入日さす池辺にかろき秋津羽の天飛ぶはてぞ色まさりける

秋風に契りやしけむ咲きかへり今朝ふたたびの桂花匂ひぬ

言問はむ木末隠れの庭すゞめ羽に桂花の香をやうつすと

弓はりの入りにし月の面影に長き夜のこる雲のさびしさ

ひとり聞く長き寝覚めのくもり夜のこなたかなたの雨音の秋

入日色うつろふ庭の秋暮れてこのごろさびし虫の音の宿

なく蟲の思ひしをれてふくる夜の秋風すごきひとり寝の床

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