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喜ばしい言葉と、飽き飽きする言葉のあいだに

ご飯できたよ〜。

母がそう呼びに来たとき、うわっ!なんて久しぶりなんだこの言葉は!とウキウキして食卓へ向かった。夜ご飯を母が1人で作ったのは8ヶ月振りのことだった。

昼間のうちに母が、ひじき、れんこん、にんじん、大豆の煮物を作ってくれるので晩ごはんの定番のひとつになり、それに加え、麻婆豆腐と鮭を焼いてくれて、玄米で食べる。おやつのつもりでセブンで買ってきたイカの炒めもの入ってて夜の一品にするものいい感じ。

去年の9月に転倒をし、容態が急変した12月から入退院を繰り返し、退院後は私が食事の用意をしていた。1,2ヶ月前ぐらいから少しづつできることを取り戻していく日々を過ごしながら、今日初めて晩ごはんを全部作れるまでになった。めでたすぎてお赤飯を炊きたいぐらいだけど、今までお祝いの日にお赤飯を食べたことがないし、むしろあまり好きじゃない。

そんな元気になりつつある母を見て喜びがある一方で、耳にタコができると言いたくなるぐらい飽き飽きする言葉を浴びせられている。毎日毎日、朝起きたとき、昼ごはんが終わったとき、仕事をしているとき、夜ご飯が終わるたびに、母は決まってこういう。

漫画は?

またかよ…と半ば呆れた声が出てしまうほどに聞き飽きたその言葉に、ハイハイと従い、自分の作業を始める前にAmazonを開きこれなら読めそうかなという当たりをつけた漫画をiPadへダウンロードしていく。iPadで漫画を読む楽しさを知ってしまった母は、同じものを読んでも楽しそうにしていて、飽きる気配がまったくない。

せめて私と似たような趣味性の漫画を好んでくれれば探しやすいのだけれど、恋愛ものが好きみたいで、試しに私が好きなもの(山系とか)選んだらつまらないとバッサリ切られた。そうですか。

唯一、二人の趣味があったのは惣領冬実のMARS。母が入院中に暇だろうから気晴らしにと思い持っていったのが漫画にハマるきっかけだった。

1996年の発売以来ずっと持ち続けている漫画で処分する気が一度もない。78歳の母が初めて読んだ記念すべき漫画がMARSで、しかも今でも何度も読み直しているそうで嬉しい限りだよ私は。

漫画を読む母に飽き飽きする一方で、自分の好きな漫画を好きと言ってくれのは嬉しいとかほんと都合が良いなぁと思いつつ、それでもこうも毎日何度も何度も漫画言われると、もういい加減にしてくれ!!!と言いたくなるのをぐっと抑え、夜な夜なKindle Unlimitedで漫画を探し続ける。

数日前に部屋の中で転んでしまいヒヤヒヤしたり、毎日面倒なこと課せられたりしているけど、それと同時に嬉しいことも訪れる日々を一喜一憂しながら過ごしている。

今日はnoteを書く前に母に漫画を渡しているので呼ばれること無く書き終えられた。書いているときに呼ばれるとイラッとした顔をしてしまうのでnote前にはかならず漫画を差し出しておこう。

最後まで読んでいただきありがとうございます。頂いたサポートをどのように活用できるかまだわからないです・・・。決まるまで置いておこうと思います。