江 桂花

江 桂花(ごう けいか)です。 小説を中心に、自分の好きなものたちをしっかりと見なおす…

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江 桂花(ごう けいか)です。 小説を中心に、自分の好きなものたちをしっかりと見なおすために、思ったことを書き留めておくために書きます。 Amazonのリンクはアフィリエイトリンクです。

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2022年に読んだ本の一覧

今年、2022年に読んだ本を振り返ってみました。今年は翻訳文学に挑戦した一年になったなと改めて気づきました。来年はもう少し国内の作品にも目を向けつつ、もっとたくさんの作品に触れられるといいなと思います! 読んだ本の一覧1.スタンダール『パルムの僧院(下巻)』 翻訳小説に慣れていないためか、上巻を読むのはだいぶしんどかった。下巻を読むころにはだいぶ慣れてきて、陽気でチャーミングなファブリスのことを愛おしく感じた。 2.江國香織『すいかの匂い』 だいぶ昔に読んだことがあっ

    • 『裸のランチ』ウィリアム・バロウズ(訳 鮎川信夫)、読書メモ

      ※ネタバレ注意です。 作品の基本情報と概要1959年に出版。1950年代のアメリカ合衆国、ビート・ジェネレーションを代表するウィリアム・バロウズによる長編小説。 麻薬から立ち直ったバロウズが1956年から執筆を開始。完成した原稿をパリのアレン・ギンズバーグに送り、ギンズバーグからパリの出版社オリンピア・プレス(※)に持ち込まれた。 ※オリンピア・プレス:パリのアングラ出版社で、ウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』やサミュエル・ベケット『マロウンは死ぬ』などを出版。 麻薬

      • 『悲しみよ こんにちは』フランソワーズ・サガン(訳 河野万里子)、読書メモ

        1954年出版。作者のフランソワーズ・サガンはフランス人で、当時18歳。私が読んだのは新潮文庫のもので、200ページに満たないくらいの量。(※ネタバレ注意です) あらすじ遊び人の父・レイモンと、その父にそっくりの娘・セシル。セシルが17歳の夏、これまで女性をとっかえひっかえしてきた父は、突然婚約者を連れてくる。婚約者のアンヌは、父娘とはまったく正反対のまじめでエレガントな大人の女性。 これまやりたい放題に暮らしてきたセシルにとって、知性をそなえたアンヌは魅力的な女性である

        • 『グレート・ギャツビー』スコット・フィッツジェラルド(訳 村上春樹)、読書メモ

          米国作家であるスコット・フィッツジェラルドの代表作で、出版は1925年4月。今回は村上春樹訳。(※ネタバレ注意です) あらすじこの物語の語り手であるニック・キャラウェイは、中西部では名前の知られている裕福な家の出身。ニューヨークの東に位置する地域に引っ越してきたニックの家は、毎晩派手な乱痴気パーティーを催している謎の大金持ちの隣人、ジェイ・ギャツビーと知り合いになる。 ジェイ・ギャツビーは何者なのか?どのような過去を持ち、運命を背負った人間なのか?という、ニック=ぼくの視

        2022年に読んだ本の一覧

        • 『裸のランチ』ウィリアム・バロウズ(訳 鮎川信夫)、読書メモ

        • 『悲しみよ こんにちは』フランソワーズ・サガン(訳 河野万里子)、読書メモ

        • 『グレート・ギャツビー』スコット・フィッツジェラルド(訳 村上春樹)、読書メモ

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          保坂和志『猫に時間の流れる』読書メモ

          初版発行は1997年8月。表題作「猫に時間の流れる」と、「キャットナップ」の計2作が収録。検索すると中公文庫版が出てくるのですが、私が持っているのは新潮文庫版。いろいろ探したのですが新品が入手できず。(※ネタバレ注意です) 八十年代後半物語の舞台は、八十年代後半の東京。きらびやかな東京ではなく、かといって路地裏の薄暗いじめついた東京でもない。東京がまだ、大都会じゃないかった頃。牧歌的な東京の風景。 八十年代後半というと「ああ、私は生まれた頃なんだなぁ」と思いますが、見聞す

          保坂和志『猫に時間の流れる』読書メモ

          島口大樹『遠い指先が触れて』読書メモ

          島口大樹さんの作品は、デビュー作・群像新人文学賞受賞作の『鳥が僕らは祈り、』、そして第166回芥川龍之介賞候補作の『オン・ザ・プラネット』と読んで、今回の『遠い指先が触れて』で三作品目。 ※読書メモのためネタバレもあります。 装丁の写真島口大樹さんの作品は『鳥が僕らは祈り、』『オン・ザ・プラネット』そして今回の『遠い指先が触れて』も写真。 いずれも写真家・馬込将充さん撮影。馬込将充さんのtwitterを拝見したのですが、いい写真ですよね。写真の装丁てありそうでそこまで多

          島口大樹『遠い指先が触れて』読書メモ

          橘オレコ『プロミス・シンデレラ』漫画メモ

          ウェブコミック配信サイト『裏サンデー』(小学館)にて、2018年1月8日から2022年3月21日まで連載していたラブコメディ漫画。2022年8月17日現在、完結しており、全15巻・全110話。「次にくるマンガ大賞2018」Webマンガ部門で12位。私はたしか、Twitter広告で見かけて読み始めました。(※ネタバレ注意です。)(※サムネイルは単行本10巻の表紙。) あらすじ主人公の今井早梅(いまいはやめ/旧姓:桂木)は29歳。夫・正弘の浮気をきっかけに離婚。専業主婦だった早

          橘オレコ『プロミス・シンデレラ』漫画メモ

          村田沙耶香『信仰』読書メモ

          2022年6月に発売したばかりの村田沙耶香さんの短編・エッセー集。いずれも2019~2021年にかけて雑誌・新聞などに掲載されたものたちが収録されています。※ネタバレ注意です。 小説を書く人という信仰村田沙耶香さんの書く文章というのは、文の調子じたいは軽やかでテンポよく、サクサク読めてしまうところがあるのですが、それによって掬い上げられるものは非常にドロリとしていて、触れたときに「ぅわ……触っちゃったよ…ちょ、これ、どうしよ……」という気持ちにさせられる。 文學界2022

          村田沙耶香『信仰』読書メモ

          小砂川チト『家庭用安心坑夫』読書メモ

          第167回芥川賞(2022年下半期)候補にもなっていた本作ですが、2022年6月に群像新人賞を受賞した作品でもあり。つまり、作者は今年デビューしたばかりの方。 今回も、ネタバレを多いに含んだ内容なので、まだ読んでいない方・ネタバレが嫌いな方はご注意ください。 「尾去沢ツトム」を通じて接する2つの世界メインストーリーの主人公は「小波」。彼女はおそらく、私たちと同じ現代を生きる女性で、アラサー。夫と団地暮らしで、故郷は秋田県。極貧の家庭で育ったらしく、それらしい描写がところど

          小砂川チト『家庭用安心坑夫』読書メモ

          恩田陸『祝祭と予感』が文庫化!『蜜蜂と遠雷』をもう一度

          2022年4月7日(木)に、恩田陸『祝祭と予感』文庫版が幻冬舎文庫から発売されました。今回はネタバレなしを意識して書きましたが、作品をまっさらな状態で楽しみたいという方はご注意ください。また、本編『蜜蜂と遠雷』については一部作品の冒頭部分を引用しています。 まずは『蜜蜂と遠雷』について本稿で取り上げる『祝祭と予感』は、『蜜蜂と遠雷』の主人公たちのスピンオフ短編集。風間塵に、亜夜に、マサルに、「彼らに、また会える」!!という煽りで出版されました。 この『蜜蜂と遠雷』、私が読

          恩田陸『祝祭と予感』が文庫化!『蜜蜂と遠雷』をもう一度

          年森瑛『N/A』の読書メモ

          第127回文學界新人賞受賞作、年森瑛さんの『N/A』を読んだので、感想&読書メモです。ネタバレが入ってしまうかもしれないので、まっさらな状態で読みたい方はご注意ください。 羨ましい羨ましい羨ましい自分が小説を書きはじめてから(いやはじめる前からだったか)、完成度の高い作品には焦りをかんじてしまう。こんなにいい作品を読んだのに、自分のこんな気持ちのせいでもったいない。 …でも、羨ましいものは羨ましい。 とにかく人物の掘り下げ方がおそろしいほど徹底的だった。"主人公はこんな人

          年森瑛『N/A』の読書メモ

          1週間以上続いた体調不良、耳鳴・難聴・めまい・聴覚過敏…

          文章はどんどん書こうってことで日記を… 今回の体調不良ここ1週間ほど、だいぶひどい体調不良が続いていた。 そもそも、なんか変だなーと感じはじめたのは2021年9月ごろ。強い耳鳴り・難聴の状態が1ヶ月以上続いた(過去にメニエールやっておりたまにある。しかし、ふだんならこういう症状は数日~一週間ぐらいで解消するはずなのに…)。加えて聴覚過敏のような症状も出ていたせいで日常生活にはわりと支障が出ており、1ヶ月ほどだましだましやってきたものの、とうとう耳鼻咽喉科に受診。まあ、受診

          1週間以上続いた体調不良、耳鳴・難聴・めまい・聴覚過敏…

          「プラダを着た悪魔」の鑑賞メモ

          今年はちゃんと小説以外の分野にも手を伸ばそうと思い、映画でも見ようと視聴したのがこちら、「プラダを着た悪魔」。ネタバレもあると思うので、ネタバレ嫌いな方はご注意ください。 あらすじと基本情報2006年にアメリカで公開された映画で、ローレン・ワイズバーガーの小説が原作になっているそう。日本での公開も同年。 筆者は当時高校生で、一に部活、二に部活、三、四も部活で、五も部活、みたいな生活をしており、当時の流行やカルチャーについてはほとんど記憶にないし接触もしていないのです…が、

          「プラダを着た悪魔」の鑑賞メモ

          今、過去いちばんに太っている

          今、過去いちばんに太っている。 ここ何年も"太らないデブ"を自称してきたけれど、 3年半前から同居人がいることで食生活が変わったために第一段階、 1年半前から在宅ワークが始まったために第二段階、 とうとう健康診断で「痩せましょう」的なアレを受け取ってきた(血液検査などは良好だったんだけどね…)。 自分も、一度でいいから「痩せている人生」というのを経験してみたいと思っているが、一時的に減量に成功しても、またずるずると元の体重に戻ってしまうというのを、大きいもので2回、小さい

          今、過去いちばんに太っている

          猫がきた、その次の日

          正確にいえば連れてきたのだけど。 猫がきた日、猫はとにかく寂しそうに鳴き続けた。 「みゃあ!みゃあ」と、心細そうに、訴えるように、しかし力強く。 おそらく母猫を呼んでいるのだと思った。 ほんとうは、こんなに小さいな子を連れてくるべきではなかったのかもしれない。 とんでもなく悪いことをしてしまったのだと、すでに後悔しはじめていた。 私が寝る段になっても、猫は大声で泣き続けた。 眠りに落ちながら、それでもずっと猫の声が聞こえていた気がする。 「ぴゃあ!ぴゃあ!ぴゃ

          猫がきた、その次の日