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印刷リスクの視点からみた万博ロゴ最強説!

先日「大阪・関西万博」のロゴが発表されましたね。2025年に開催される国際博覧会のシンボルのロゴマーク「いのちの輝き」です。

「見た目がw」とちょっと話題の例のロゴですが、今回はあえて、趣味趣向やデザイン印象の話はしません。

万博ロゴがあらゆるシーンにおいて、いかによく考えられていて、皆にとって優しいロゴマークである。ということを実際にグッズ制作をしたことがあるデザイナー視点で「最終候補5作品」と合わせて解説していきます。

特に商業印刷では「なるべくリスキーなデザインはしない。」というのが大前提です。というのが大前提です。今後、皆さんがプロジェクトのロゴマークを決する際に、絶対に知っておいてほしいリスク回避をご紹介していきます。絶対に知っておいてほしいリスク回避をご紹介していきます。

この視点がないと、後々めんどくさいことになりますので、今からロゴを作ろうと思っている方は必見です!

引用元:https://logo.expo2025.or.jp/public_comment.html


【ポイント1】 色による視認性とコスト削減

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今回決定した「E案」は「赤」「青」の2色もしくは「白」も含めた3色構成であることがポイントです。ベース枠が「赤」というだけで、他のロゴ作品と比べてもかなり汎用性があり、これだけでロゴとしての決定打にあたると思っています。【視認性】と【印刷コスト】という面でさらに深堀りしてみましょう。

【視認性】白地以外で見えにくくなる可能性は無いか?

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たとえば、上記の画像のように、下地の色による影響や遠方から見た時の印象という面でもシンプルな形状でかつコントラストがはっきりしているロゴデザインというのはどんな場所においても視認性が高いといいます。少しでもゴチャっと潰れて見えてしまうものは、使い方に注意が必要です。

同時に、単色ロゴ使用での展開も想定しておくことも重要かつ利便性があります。
行政や業者間などで簡単な資料を作るときはモノクロ印刷でプリントをすることもあるでしょうし、スタンプラリーで活躍する単色の判子も作ることができますので、1色でも見栄えが変わらないロゴはとても使い勝手が良いです。

【印刷コスト】様々なノベルティグッズを作るのであれば知ってて!

特色を使ったノベルティや衣類(シルクスクリーン)では
色数が増えるほど金額が高くなる、というケースが多いです。

分かりやすいのは「刺繍・ワッペン」を想像してみましょう。
帽子やポロシャツなどのオリジナルグッズを作る際に、衣類には刺繍という選択肢がでてきます。複雑な形状や再現が難しく、業者を泣かせます。
また色数が多いと使用する糸も増え、コストが何倍も違うこともざらにあります。

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刺繍に限らず、「オリジナルグッズを作るぞ」というときには、

● そのデザインで制作や印刷に支障がでないか?
● 1色と3色以上とでコストがどのくらい違ってくるのか?

最低でもこの2点は予め調査しておいたほうがよいでしょう。

[補足]ただし、インクジェット印刷やオフセット印刷(CMYK)が可能なグッズ制作会社であれば、色の多さは影響しないこともあります。


【ポイント2】 印刷エラーの原因?再現ができないこともある

ポイント1で指摘したからと言って、他のロゴ作品はダメ!という訳ではないです。それぞれ個性的でクリエイティブな作品だと思っています。

しかし、商業デザインとして活用する際には、使用目的をシビアに考えなければいけない。という点を今回はしっかり踏まえておきたいところ。映像でワンポイントで使うだけなら、どの案も問題ないのですが、印刷やグッズ制作となるとそうも言っていられません。
何万個と発注し、何百万円を経費がかかるのですから、見切り発車で進めて、「このロゴはちょっと使いにくいなぁ〜」と面倒なことにならないようにしておく必要があります。

【印刷リスク】ロゴマークの芸術性を維持できるか?

みなさんは、パソコン画面では読めていた文字でも、いざプリントアウトするとインクが滲み文字が潰れてしまった…。という経験はありませんか?
実はそれ、プロの現場でも同じこと。意外と印刷というのは大雑把な一面があります。

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印刷は0.1mmの線はかろうじて印刷できますが、「通称:ヘアライン」と呼ばれる0.08〜0.001mmなどの細い線は出力できません。スマホやパソコン画面で見ていいな〜と思っていても、印刷したら、細部が表現ができていない?ということもよくあります。

ロゴのサイズを横幅20mm位に小さくしたときに、細かい表現がぼやけて見えないか確認してみてください。線がガタガタになりそうと思ったら、要注意です。

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さらにオフセット印刷の場合は、CYMKの4つの色版が少しずれることも多々あります。(通称:版ずれ)
0.5mmずれただけでも近接した色とぶつかり細かいエッジが潰れてしまいます。印刷はアナログであると再認識させられるエラーの1つです。


「じゃあ、超印刷の上手い職人がいるところに頼めばいいんじゃね?」
「失敗したら、もう一回刷り直しさせればいいじゃん。」

と言われたらそれまでですが…。1点ものの芸術作品を作るのであれば、こだわるのも良しでしょう。ただし、ビジネスでは予算と時間が決まっており、それに関わる労力も考えなければなりません。
したがって、あえてリスクを負いそうなデザインを選択する必要はありませんよね

以上をふまえて、E案以外の最終作品を検証してみましょう。

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画像に上げた箇所が、少々気になるところです。
ポイント1での解説では優秀だった「C案」も強いていうなら、細かい白抜きが「E案」よりも複雑で唯一のウィークポイントでした。

まとめ:いやはや「E案」強し!

結果:色数は少なく、なるべくシンプルな形状が最強!

いかがでしたでしょうか。
「E案」が選ばれたのは必然か?と思ってしまうくらい、一番使い勝手のよいロゴが最終決定だった!という分析でした。

シンプルなのに万能、どこか愛嬌とオリジナリティがあると思わせる今回のロゴはとてもよく考えられているなぁ〜と感心致します。
また、2025年の一大国際イベントですから、選定する側はそこも踏まえて決議を出しているとは思います。広く普及させなければならない大きなプロジェクトのロゴに背負わされた使命に「いのちの輝き」くんなら乗り越えていけると思います!

これからロゴを決定していく際には、見た目だけではなく、印刷方法や運用面から視点を加えて、ジャッジすることも考えてみてくださいね。


fin 走り書き[2]
デザイナー:イシカワ

おまけ:表紙は筆者が水彩鉛筆で描いたいのちの輝き。うん、むずかしい・・・


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