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経営戦略総論(15):仕組み化と行動KPI

前回のnote 経営戦略総論(14): 「数字で語る」PIMSからKPI、非財務情報開示の中で

キーエンスを代表とする最近の成長企業はKPIを適切に設定して、プロセスの仕組み化とともに、プロセスや実行管理の指標として、すべての組織や社員に徹底的に使い込ませているところに、他社との競争力に大きな違いが出ているようです。

経営戦略総論(14):「数字で語る」PIMSからKPI、非財務情報開示

と書きましたが、今回はキーエンス関連の書籍や記事からの私の所感となります。

キーエンスのすごさ

企業戦略事例として最近、ベストセラーとなっている「キーエンス解剖」を読んでみました。

社員の平均年収が2000万円を超える高収益企業として有名なキーエンスですが、そのメカニズムは徹底した「仕組み化・ルール化」「数値管理・行動KPI」にあることがわかりました。

普通の会社ではここまで細かくルール化、仕組みを作られても徹底できていないと思います。分単位の日報や複数回のロールプレイング、デモの回数、ニーズカード提出まで、社員の行動を細かくKPI化しているところも少ないでしょう。

下記noteに、そうした行動KPIやルールを守らせるルール(仕組み)がキーエンスにはあると書かれています。

ちなみに、行動KPIに関しては、全ての項目でランキングを週次で配信(1位から最下位まで)されます。
さらに、全員が成果を出しやすい仕組みになっており、成果を出し、重要KPIを達成すると給与に跳ね返ります。この仕組みが日本一給与が高い会社の裏側にあります。

CRO Hackさんのnote 「キーエンスのルールを守らせるルール」より


一方で、常に数字や行動管理に縛られることで燃え尽きてしまう社員も実際にはいるようで、この本の帯にも書かれていますが、ネットではキーエンスで働くと「30代で家が建ち、40代で墓が建つ」と揶揄されることもあるようです。

キーエンス・マフィア

最近、急成長企業にキーエンス出身の経営陣や営業パーソンが多いことがこの本の『「キーエンスイズム」の伝道者たち』という章でも取り上げられています。「ペイパルマフィア」ならぬ「キーエンス・マフィア」が増えつつあると。
それらの会社の決算説明会資料を見ると、明快に定義されたKPIを元に業績を伸ばしていることが見てとれます。

まずM&A総合研究所ですが、この企業ではM&Aアドバイザー数一人当たり売上高、そして「時間軸」を意識したM&A平均成約期間を重要KPIとしてあげ、毎年、その推移を開示しています。

M&A総合研究所 2022 年 9 月期 通期 決算説明資料 より


つぎにソフトウェアテスト事業で業績を伸ばしているSHIFT社では、
エンジニア数、エンジニア単価、期待在籍年数(時間軸)、顧客者数、顧客単価をあげて、こちらも毎年、その推移をグラフにして開示しています。

株式会社SHIFT 2022 年 8 月期 第 4 四半期および通期 決算説明会資料 より

これらの企業では、社員にはさらに行動KPIレベルまで落として、仕組化・ルール化されているものと推察されます。

「知の探索」の仕組み化

そして、もう一つ、私が感じた彼らキーエンスイズムの凄さ・強みは、営業・ソリューション提案といった領域だけでなく、ニーズ調査、製品開発といった領域においても仕組み化やいくつかのKPIを設定し、付加価値の高い製品を次々に提供し続けているところです。

「両利きの経営」においては「知の深化」をする組織と「知の探索」をする組織のマネジメント手法や仕組み、評価制度等々コングルエンスモデルの違いをどう両立させていくかが大きなテーマでした。

特にこれまでBtoBの現場に踏み込んだ深いニーズ調査や技術革新を伴う製品イノベーション創出といった「知の探索」の領域は千三つの世界
失敗を恐れずに前に進むビジョンや目標を持ち続けて、繰り返し試行錯誤しながら開発を続けているイメージが強いと思います。
そうした製品開発組織にいる社員は製品売上や歩留まり・品質といった結果や課題は受け止めるものの、プロセスまで「管理」されることは苦手・嫌いな人たちが多いのではないでしょうか。

キーエンスはこの「知の探索」の領域においても、製品開発のプロセスをニーズ探索から高付加価値製品提供にいたるまで徹底的に作り込み、並外れた組織能力に支えられた仕組みを構築しています。

さらに詳しく知りたい方は下記、書籍「キーエンス 高付加価値経営の論理」や著者が語る「はじめに」をぜひ読んでみてください。


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