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何かを言いたくてたまらなくなる。ツッコミも含めて言いたくなる。映画「PERFECT DAYS」について、今更。

昨年末公開なのにやっと先日観た映画「PERFECT DAYS」。あちらこちらで話題になり、絶対自分の好みだ、あぁこれは自分の映画かもしれない、と思い続け、期待が膨らむ一方だった。
トイレ清掃員として働く平山という男。古びたアパートから仕事に向かい、丁寧に働き、仕事が上がれば風呂やお酒を楽しみ、古本を読んで眠る。これは究極のミニマルライフ。最高じゃないか。
自分は、羽田空港清掃員の新津春子さんを取り上げた「プロフェッショナル 仕事の流儀」をたまたま観たときから新津さんのファンになり、彼女の働き方や、その佇まいの清らかさにとても惹かれている。なんとなく、新津さんのような仕事ぶりに、その休暇も含めたような生活が描かれた映画なのかな、という想像をしながら映画館へ足を運んだ。

うん、映像きれいである。清掃員の淡々とした日常に、のびのびとした休日の様子。時折起こるちょっとしたイレギュラーなこと、だけどそれでも続く日常。そんな感じかな?と思ったけど、ちょっと違った。

なんだこれ、めっちゃファンタジーやん。

〜ここからネタバレ全開〜

まず、主人公の住んでいるボロいアパート。メゾネットタイプ?実在の物件だとは思うが理想的よね。畳敷きのメゾネットタイプ。場所はスカイツリーの近くということは押上とか本所のあたりかな。駐車場がアパートの前にあって、平山はそこに仕事で使っている軽バン?を停めている。で、そこから毎朝首都高を駆って渋谷区へ。そこで清掃業務に従事しているみたいだ。
ん? 渋谷区まで車通勤?駐車場代は?押上って結構今家賃高いよな?平山お給料いくら?職場渋谷区なら、東京の東側じゃなくて西側に住むほうがスムーズな気がするぞ?

仕事のプロフェッショナルぶりをしっかり描くというよりも、意外と本人を巡る人間模様が多い。そしてそれが全部おじさんに都合がいいかんじ。

  • カセットテープを愛する平山。逆にカセットが高く売れることが判明したり、若い同僚のガールフレンドにちやほやされてほっぺにチュッとされる

  • 素直な女子中学生?女子高生?な姪っ子が突然家出してくる。「家出するならおじさんのところにしようと思った」的発言。まじで???

  • たまに顔を出すスナック的店のママは石川さゆり。ほんのり平山だけ特別扱いしているかんじ

  • 姪っ子を連れ戻しに来る平山妹。運転手付きの高級車で登場。「たまにはお父さんのホームにも顔出して上げて。もうわかんないと思うけど」的発言。あれそうなるまで平山どうしてたの?あと実家が元々太い?

  • 石川さゆりの店に入ろうとするとき、たまたま見かけてしまった元夫との抱擁シーン。後に声をかけてくる元夫の三浦友和。さゆりが店を開いたのは、友和と別れたあとだという。病気で余命いくばくもないという友和は、「あいつのこと、よろしくお願いします」となぜかイチ客の平山に言う。ちなみに友和はさっくり再婚済。お前今まで何してた?お前さゆりに離婚後何してあげてたんだよ??

いやーまぁあまりにも、あまりにもおじさんに都合が良すぎないか?映画だとしても都合良すぎないか?それも含めてパーフェクトなデイズってことですかね。

いっとき、指名手配犯の桐山聡の生活と、この映画の生活とを照らしあわせるように語っているのをいくつも見かけた。犯罪は許されないが、正直、半世紀近く前の事件については知らない部分も多く、どこかである意味現実感がない部分もあるかもしれない。それゆえ、現場仕事を繰り返し、アパートに暮らし、たまにミュージックバーで楽しむ桐島容疑者の生活と、平山とが重なる部分は当然あるのかもしれない。

この映画では、平山のバックボーンは描かれない。過去にどんな生活だったのか、どんな仕事をしていたのか。ただ、どこかに品の良さや知性を漂わせる平山は、ただのおじさんじゃないぞ、という余白も感じられる。押上のメゾネットに住んで車通勤しているくらいだから、実は清掃員のしごとも、毎日のミニマムライフも、振りで、実は資産家だったとしても全然驚きはない。

単純でシンプルで、だけどおじさんの理想はちゃんと具現化されている、そういう意味でほんとにパーフェクトの日常を描いているんだと思う。

あー、うらやまし。

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