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読書感想文・図書館

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読んだ本のまとめです
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記事一覧

黒の皇子

読み手を選ぶ「賢者サロモンの書」の読み手、ノアの話の三巻目。 今回は、人を操る「人形術」に操られ天使を呼び出してしまう。 油断である。 ザスーン帝国の皇帝一家が反乱によって赤ん坊に至るまで殺される。 他国に出ようとしていたアレクセイ王子だけが助かるが、呼び出した怪しい鏡のようなものを覗いたノアと目を合わせ、 「自分がサロモンの生まれ変わりで、お前が(弟子で敵の)レトだ」と 暗示をかけようとする。 目を合わせて暗示をかけようとする時点で怪しさしかない。 魔女狩りの生き残りが

紅の魔女

「青の読み手」の続編である。 過去の魔女狩りの話が出てくる。 ルドン派と呼ばれる宗教団体。 男子修道院と女子修道院があるが、その昔、男子修道院が 女子修道院を「魔女」として告発というか売った過去がある。 虐殺された丘で、成仏できない修道女や魔女として殺された者たちの霊が 夜ごと(発光しながら)さ迷い歩き、人に憑りつくのである。 実はそれは悪魔の仕業で、青の読み手であるノアは、成仏できない者たちを助けることができたのだ。「サロモンの書」の力を借りて。 男子修道院の者たちは、魔

おばちゃんたちにいてほしい

おばさんは Wild Ladies と訳されるらしい。 おばさんならすぐに「ワイルドだろう?」とスギちゃんを真似るだろう。 おばあさんなら ただの old ladies なんだろうか これって韻を踏む感じになるんだろうか おばさんが幽霊になって出てきても 日本人にはあまり違和感はないのではないだろうか。 ファンタジーとは思わないのではないだろうか。 「ロッカーの花子さん」という漫画があったけれど ファンタジーだとは思わなかった。私だけか。 (たたりとか呪いとかに関係が無け

縁切り上等

離婚弁護士松岡紬が、さまざまな離婚案件に携わる話である。 彼女の実家が、江戸時代から「縁切寺」として有名な某東慶寺をモデルにしていて、舞台も鎌倉である。 縁切り関連の川柳が章ごとに掲げられており、川柳自体も味わい深い。 モラハラ、浮気、暴力とは、女性側からの離婚したい三大理由であろう。 けれど、夫側が自分の力加減に無自覚だったり、妻が心を病み始めていたり、財産分与とか養育費とか、弁護士が必要な場面があるのだ。 この弁護士事務所には、探偵の男性出雲と事務員の女性聡美がいる。

BLANK PAGE 

「文春WOMAN」に連載されていた作品だそうだ。 エッセイと、インタビューと対談がまとめてある。 そして亡くなった樹木希林という母親の事を繰り返し思い起こしている。 目次の顔ぶれも興味深い。 樹木希林さんは、夕日が見えると必ず「見なさい」と声をかける人だったそうだ。娘には外国語を習得させたが自分は日本語で通したそうだ。 面白い大人がいると、仕事の場に也哉子さんを連れて行ったそうだ。 ハワイに行くとまずパールハーバーで祈ったそうだ。 インタビューした人たちそれぞれの母親像

青の読み手

誰にも抜けない剣を抜くと、それが勇者の証である、という話がある。 同じように 誰の目にも白いページにしか見えない本を読める というと それが魔法使いの証だったりする。 貧民街に住み、下町ねずみと呼ばれるノアは、小さな使い走りをして、その稼ぎを親方にピンハネされながら暮らしている少年だ。 姉のように慕っている行方不明の少女ロゼを探している。 ひょんなことから一冊の本を盗み出すことに使われ、本に選ばれる。 サロモンの書と呼ばれるその本は、悪魔を呼び出せる本であり、呼び出す代償

ドーン 2

読み終わったが、結局宇宙人は出てこなかった。 政治の問題が大きかった。 火星探査も政治利用と言えた。有人探査は時期尚早と言われていた。 大統領選があって、声が大きくて、ちょっと反対意見を言うと 「陰謀論だ」とかわめきだす人に対する、地味な候補がいた。 陰謀論ではなく、陰謀があった。 生物化学兵器の開発を、その禁止条約が適用されない地域でしていた。 軍事介入に投入する軍隊は、差別される貧困層の青年を 本人の意向を確認することなく送り出すし、傭兵も沢山使って 「アメリカ人死者」は

ドーン

火星に行く宇宙船の中で 乗組員が、メルクビーンプ星人に思考を乗っ取られると言い出す。 というような話から始まるのでSFか とちょっと驚いた。 宇宙船では協調性とか問題解決とか、精神的にタフな人しかなれないのではと思っていると、分人という考え方が出てきて いろいろな人と接して、「その人との関係性の中だけの自分」というのが 沢山いるのに、宇宙船の中では「分人」になれないストレスがあるのではないか とでてくるのである。 そのうち、人種差別の話とかアメリカの大統領選の話が出てきた

混ぜて炒めてあげようか?

最初の詩から強烈だった。 「新島」というタイトルの詩。噴火してできた島のことだ。 「炒飯作れる?」と聞かれた後の「混ぜて炒める」発言なのだ。 「あんたのどうにもならないところ  混ぜて炒めてあげようか?」 「お前を蝋人形にしてやろうか」よりも強烈なんじゃないだろうか。 どうにもならない と 認識されていて 混ぜて炒めたらどうにかなるかも と励まされているような? この際 炒めてもらった方がよいかもしれない と徐々に思えてきたりする。Мか。 「いいとも」だったか「タモ

だれかのことを強く思ってみたかった

前半はモノクロの写真。後半はカラー写真。 写真が数ページあって、小説は3ページくらい。 むしろ「詩」なんじゃないかと思うような美しい文章だった。 夢とも現実とも思い出とも言えるような 時間と空間の間を漂うような内容の掌編小説群だった。 「幸福の反対は現実」とか 原っぱなどで「あるはずのない死体を探す」とか 胸に残る言葉がたくさんあった。 むしろ恋愛よりも、家族のことやすれ違う人々のことを 強く思ったり思い出したりする、 「忘れ得ぬ人々」のような小説だった。 写真につい

この夏の星を見る

「この夏」とは、2020年。 コロナの蔓延のため、修学旅行などの学校行事や、部活の大会などが次々とつぶれた夏だ。 吹奏楽部で実家が旅館だったために友達に微妙に距離を置かれた高校生 普通に公立中に入学したと思ったのに、一クラスだけの学年で男子が一人だと知り、当然できると思ったサッカーを諦める中学生 この先生がいる高校、と思って入学したので女子の多いことは気にしないという高校生。 手作りできる天体望遠鏡を作って、どの星をとらえたかを競う 「スターキャッチコンテスト」を企画、実行

社会人大学人見知り学部卒業見込み

賞を取った2010年ころから3年くらいの、雑誌に連載していたエッセイである。 テレビで「おかえりこちら側の人」というのが面白くて見ていて、 エッセイも読んでみようと思ったのだった。 ワイドショーなどで他人のお宝とか、住宅とか、グルメとか 正直どうでも良くて、顔に出てしまっていた、とか、 いろいろ頭の中でぐるぐるしていたことが後から腑に落ちるとか。 相方の春日さんはネタも考えず上昇志向もなく、「自分は幸せ」と 言えてしまうのでかなわないと思ったとか。 いろいろ悩み過ぎている

ジェンダー・クライム  天童荒太

男性の、他殺死体が発見される。 首をひもなどで絞殺されたような感じで、裸で。 裸にするのは、身元を割り出されないためにはあることなのだろう。 だが解剖したら、直腸から、ビニールでくるまれた細い紙が出てきて 「目には目を」と書いてあったのだ。 誰の何に対するる復讐なのか という話になる。 女性への性暴力事件と、訴えた女性への非難中傷 政治家周辺からの握りつぶし、元刑事の情報屋からの脅し。 青年四人による犯行だが、やめようと止めていた青年が一番悪いことにされたり、示談にして「

レーエンデ国物語 月と太陽

二巻と三巻を同時に借りることになってしまったのだったが 結局三巻は諦めて返した。 二巻が600ページもあったので、というふがいない理由。 三巻をもう一度予約するかどうか、ちょっと迷っている。 何故かと言うと 搾取され続けている人たちが立ち上がる話なのだが 女性が性暴力に合うという場面も多いのである。 戦争が描かれていれば、一つの村を皆殺しにして、女性たちには性暴力 というのが当たり前のようにあったのだろうけれど 今でも、あるのかもしれないけれど そういう場面をあえて読みた