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もっと生徒主体の学びへ。教員のアンラーン(unlearn) 【週刊新陽 #64】

新陽高校には、さまざまな方が視察に来られます。

生徒の挨拶や活発に活動している様子を褒めてくださる方も多いのですが、同じくらい良くいただくのが教職員についての感想。

「職員室の明るい雰囲気、そして先生たちが自らが挑戦する姿を示していること。新陽高校は、生徒が未来を考えることができる学校だと感じました!」

「おもしろい学校があると聞いて訪問させていただきましたが、何より驚いたのが職員室。先生方の表情や言葉から教育に対する熱い思いを強く感じました。」

新陽での当たり前が他の高校では当たり前でなかったり、多くの方がイメージする”学校”と違ったり、驚かれることもしばしばです。

そこで今週の週刊新陽は、新陽の先生たちがどのように『教育の再創造』に挑戦しているか、その一部を書きたいと思います。


学びを更新し続ける高校

現在取り組んでいることをお話する前に、まず、この数年で変化してきた新陽の学びについてご紹介します。

2017年〜:1人1台端末

GIGAスクール構想により小中学校は昨年度、高校も今年度より、全国の学校で1人1台端末と通信環境を整備することになりました。

新陽では、2017年度入学生から1人1台端末とGoogleアカウントを配布しています。(2017年度生はタブレット型端末のiPad、2018年度はiPadとノートパソコンのChromebook、2019年からは全員Chromebookを使用。)

校内はWi-Fi環境が整っていて、どの科目の授業においてもパソコンを使用することは特別なことではありません。

2018年〜:探究コースと探究学習

問題解決型の学習として近年注目されている探究学習。今年から適用されている高校の新・学習指導要領では『探究』がキーワードとなっています。

2018年度に一期生が入学した探究コースは、教育の価値観を「偏差値から経験値へ」「最終学歴から最新学習歴へ」シフトし、デザイン思考や起業家教育などの授業もあります。

また、他コースにおいても探究基礎という学校独自の科目があったり、教科横断でのPBL(Project-Based Learning)を取り入れた授業があったり、新陽では探究的な学習に取り組む場面が多々あります。

2021年度入学生から単位制に移行し、コース制の活動は継承しつつ、さらに発展した探究学習を行っていく予定です。

2019年〜:定期テスト廃止

新陽では、定期考査を2019年4月に廃止。探究学習など学びのあり方が変われば学習成果の見取り方や評価の仕方も変わるべきと、年4回行っていた全校一斉の定期テストをなくしました。

そのかわり、小テストや単元ごとテストなど授業内で理解度を測る機会を設けたり、目標に対する到達度を複数の観点を用いて評価したりしています。

今年3月に卒業した生徒は定期考査が廃止された最初の学年ですが、進路は多岐に渡っており、特進コース以外でも一般入試で大学に合格した生徒や、推薦入試や総合型選抜で力を発揮し希望する進路を実現した生徒もたくさんいます。(進路実績はこちら

なお、多面的に生徒の力を見取るという方針は生徒募集においても同様で、新陽の入試では教科の筆記試験がありません。テストの点数やランクだけでは測れない力や意欲を見せてほしいと、独自の試験方法や制度を設けています。

「ひとつの絶対的な正解」は無い問いについて
個人やグループで探究するPBL
札幌大学のプレアホールをお借りして
成果発表会を行うこともあります


2020年からは学びの共同体へ

ICT教育や探究学習など先進的な取組を積極的に進めてきた新陽の先生たちが、いま学校全体で取り組んでいるのが『学びの共同体』に習って進めている学習者主体の学びです。

『学びの共同体』とは、「一人残らず子どもの学ぶ権利を保障する」ことと「質の高い学びを実現するために教師の専門家としての成長を実現する」ことを目的としたビジョン・哲学・活動システムで、30年以上前に始まった学びの改革として日本のみならず世界17カ国で実践が蓄積されています。

新陽が『自主創造』という校訓や『人物多様性』というビジョンのもと、もっと生徒一人ひとりが学びの主人公になるためにはどんな授業をデザインし、どんな風に生徒を見取るべきなのか。このテーマを究めるため、昨年から北海道大学大学院教授の守屋淳先生にご指導いただき、授業研究や研修会を行なってきました。

そして今年5月31日、『学びの共同体』の提唱者である東京大学名誉教授の佐藤学先生を招聘し公開授業研究会を開催。

授業実践や生徒の様子を見学していただきましたが、全国から多くの教育関係者の方が来校またはオンライン参加してくださり関心の高さを感じました。

授業公開の後、守屋先生と佐藤先生からフィードバックをいただき、最後に佐藤先生による講演会。「ポストコロナ時代の学校改革〜学びのイノベーションへ」と題した講演では、あらためて「聴き合う関係として学びの共同体」や「探究と協同の学びの関係性」について教員一人ひとりが考える機会となりました。

全員で見学し、協議会で扱った
田渕先生の授業
佐藤学先生の講演会
守屋淳先生からのフィードバック
授業研究会を企画運営した教務部メンバー
お疲れ様でした!

先生たちも真剣に学んでます

翌日の6月1日は、公開授業研究会の熱が冷めやらぬ雰囲気で1日がスタート。

授業の冒頭や最後に「昨日、先生たちの研修があったんだけど、そこでガーンと頭を殴られたような衝撃を受けた。」とか「刺激を受けた1日だった!先生たちも学んでるんだ。」と佐藤学先生の話をしている先生が何人もいて、さっそく『学びの共同体』の改革の第一の条件「学びの場と関係をつくる」ために教室配置をグループに変えたクラスもありました。

一方、生徒たちのことを考えるからこそ急激に変えるのではなく、準備してゆっくり進めたいという先生もいます。そんな中、あらためて教務部から『学びの共同体』を実践していこうと提案があり、「どうやったら進められるか」「実践するにあたって課題はなにか」などのディスカッションを教員全員で行いました。

さらに、6月15日には、国語科の佐々木秀穂先生が自主的に勉強会を開催。

佐藤学先生の講演で納得できたことがある一方で、「実際の授業のイメージがわからない!」と感じた秀穂先生は、関連する本を読んだり講演スライドを見たりして内容をまとめたのだそうです。

「それをみんなに共有するので、一緒に悩んだり実践したりしてくれる人、募集!」と声を上げてくれたところ、多くの先生が参加し、終わった後「やっと分かった気がする」と言う先生が続出しました。

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生徒主体の学びとは何か考えるなかで、「すべての生徒が学びに向かう授業には何が必要か?」「日本の公教育で一般的とされる一斉授業のスタイルは、本当に生徒にとってベストか?!」という問いが生まれてきました。

同時に、授業に「ただ一つの正解」は無い、とも思っています。今回、勉強会を主催してくれた秀穂先生がよく「授業はライブだ」と言っていて、まさに二度と同じ授業はないからこそ一回一回が真剣勝負。

新陽の先生たちはいつも本気です。

学びの場づくりとしての席替えに悩む
3年担任の西村先生
掲示された新しいレイアウト図を見て
自分の席を探す1年生
机の配置を変えるとともに
授業の進め方も見直した川岸先生


【編集後記】
6月2日、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の教育・人材育成WGから出された『Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ 』にも、学びの「時間」と「空間」の多様化について触れられています。
新陽が取り組んでいる学びのアップデートは、国が進める教育の転換の方向性とも合致していて、むしろ一歩先に挑戦してきたように思います。

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