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子どもにやりすぎたくないんです。どうしたらいいですか?

花まる子育てカレッジで、1月26日に講演をした動画がアップされました。
そこでお話しした内容の中から、こちらで質疑応答部分を紹介させていただきます。

動画を全部見るためには、会員登録(最後に説明があります)が必要なのですが、下記のリンクから5分間だけ最初の部分を見ることができるので、
ご関心がありましたら、最初の部分だけでもどうぞ。

タイトルは「教育熱心さは虐待になるの?
        子どもが健やかに育つために親ができること」

タイトルよりも、日本の普通の子育ての話が中心ですので、
子どもの育ちに関わっている皆さん、特に子育てや教育に迷いのある方、
もっと知りたいと思っておられる方に少しでもお役に立てばと思います。

当日の動画はこちらから。

最初の半分(37分)は講演ですが、後半(48分)は質疑応答でした。
質疑応答のほとんどが、「自分はやりすぎたいわけではないし、これでいいのか、いつの間にかやりすぎになってしまっていないか、不安です」という内容であったように思います。そこで、今日、ご紹介するのは、質疑応答部分の骨子です。動画の中では、この回答の文章(メモ)をもとにして、より詳しく説明しています。時間の都合で扱えなかった質問もここには書いてあります。
視聴者の方からは「気持ちが楽になりました」という感想をいただいています。
なお、回答は、いただいた質問に対する答えに限られたものですから、やりすぎてしまう保護者の方たちにあらゆる面から答えたというほどまとまったものにはなっていませんが、まずは少しでもお役に立てば幸いです。


質問 「親がどのように考えれば、子どもの健やかな成長を見守ることができるようになりますか?」(年少〜年長の保護者様より)
 早期&先取り教育、知識詰め込み学習はあまり意味がない、小学校に入ればその差は大してなくなると頭では分かっているつもりですが、勉強もできないよりはできたほうがいいだろう、環境もいじめなど軋轢が少しでも少ないほうがいいだろう、と考えてしまい、お勉強させることや、より良い教育環境を目指すことをやめられません。親がどのように考えれば子どもの健やかな成長を見守ることができるようになるでしょうか?

 学ばせること(☓勉強させること)やよりよい教育環境を目指すことは悪いことではありませんよ~!大人は、子どもが楽しく脳や体や心を動かして生活できるように、配慮しましょう。
1.乳幼児期は勉強の基礎を作る時期。何を身につけておくといいと思いますか?
2.もっと知りたい、取り組みたい、と思うようなことをやっているとき、子どもの脳や体は心は育っています。阻害したり剥奪したりしないように。
3.教科書の勉強は(基本的に)学校に任せて、その勉強を支える様々な体験ができるような時間を学校外で作りましょう。
4.対人コミュニケーションの練習中の子どもたちの中で、いじめや軋轢はあって当たり前。兄弟が少ないと学ぶ機会も少なくなります。それが起きないようにしたり、やり過ごしたり、乗り越えたりする術を学ぶことが大切です。温室育ちでは後になって困るかもしれません。どこから介入が必要であるかは難しいところで一概には言えませんが、全くない方が安心というわけでもないということは知っておきましょう。


質問 有名校や進学校に通うことや、スポーツや音楽で優勝することなどの成果を求めることは、よくないことですか?

1.悪いことではありません。
2.勉強やスポーツや音楽を一生、楽しむことができることが大切だと思います。楽しく成果を求めることができるでしょうか。
3.一方で、競争の世界は厳しいものです。成功者はごく一握りだけ。成果が出ないときの対応を考えたことはありますか?
4.その分野でもしダメでも、他の分野で楽しく生きていくことができますか。
5.成果を求めるために、何かを犠牲にしているとしたら、そのリスクが高すぎることはありませんか?
6.子どもに成果を求めるのではなく、自分自身の人生において自分のことで成果を求めていますか?


質問「進学校に入学するのは危険でしょうか?」(小5の保護者様より)
 例の大学受験会場(1/15の東大)での事件を見て、今の時代、子どもが進学校に入学するのは危険なことなのかと悩み始めています。子どもが中学受験の塾に通っていますが、中学受験や塾を辞めた方がいいのかと親としては心底悩んでいます。進学校に行っても、勉強以外に趣味や友達など、他に大事なことを持っていれば大丈夫なのでしょうか?それとも、今の時代、自分が他に大事なことを持っていたとしても、県内トップレベルの学校に在籍すると、周囲の友達や先生の影響から異常な行動を起こしてしまう心理状態になるのでしょうか?親として、出来ることも知りたいです。周囲でも、進学校を目指して勉強している親子がこの事件を受けてとても悩んでいるので、武田先生からアドバイス頂けたら幸いです。進学校に在籍すると、周囲の友達や先生の影響から異常な行動を起こしてしまう心理状態になるのでしょうか?親として、出来ることも知りたいです。

1.必ずしもそういうことではありません。
 でも、今の日本においては「自分は他人よりも価値の高い成功者だ」と思ってしまうリスクはあるでしょう。人を見下す感覚が身についたり、常にいい状態を保たなければ不安を感じるようになったりしないように意識する必要があるかもしれません。
2.そのリスクを軽減するために、年齢、職業、生活レベル、価値観、言葉遣いや持っている技術などが異なる多彩な人々と出会う機会を日常的に作りましょう。特に社会的弱者と言われる立場の人たちと対等に出会えることが大切でしょう。


質問「親の期待を子供に背負わすのは、親のエゴでしょうか?」
 あれもこれも出来るようになってほしい!小さな頃より英語、お習字、スイミング、バレエ、バレーと日替わりでした。中学では学習塾も通いました。長く続いたもの、早期で止めたのと色々でしたが、どの習い事でもお友達が出来て嫌がらずには通ってたように思います。最近子供の発達を学び始めて、私がしてきた事は成長発達を阻害していたんでは?と思いました。今のママたちに話す事が出来る立場になった今、何が子供にとっての1番なのかもう一度考えたいです。先生のご意見をお願いします。

こちらのリンクが参考になると思います。

1.子ども想いの親であれば、子どもによりよく育ってほしいと願うものです。経済的にOKであれば、いろいろな選択肢の中から厳選して、やりたいことをさせてあげられるといいと思います。
2.不足していると欲しいと思うのが人間です。昔から、可愛い子には旅をさせよ。苦労は買ってでもせよ。と言います。なんでも与えてしまうと、欲しいもの、自分にとって必要なものが見えなくなります。
3.何でもできる存在がうらやましいですか?できないことがあって、みんなに支えてもらえる、みんなと協力し合える不完全な存在よりも?どちらの人生が豊かだと思いますか。
4.では、自分にその想いがかけられたらどうでしょうか。
 誰かに、英語も、料理も、掃除も、経理も、身だしなみも、物理も、音楽も、ダンスも、スタイルも、社会常識もある女性を求められたら?パーフェクトな母を子どもに、妻を夫に求められたら?



質問 遊びを知らない子どもは増えていますか?

1.増えています。本来、赤ちゃんは誰でも遊べます。
  でも、自由に遊ばせてもらっていない。
2.遊びに限らず、生活体験がない。
3.名のない遊び、ルールを自分で作る遊びを知らない。
4.ちょっと上の年齢で遊ぶ子どもを見ていない。
5.0歳から外遊びで異年齢の子の遊びを見ていると身につく。
6.遊びの中に脳を育てる要素がすべて入っている。
7.遊びは学び、非認知能力の育成という言葉に踊らされないこと。
  やらされる遊びはその時点で遊びではなくなる。


質問 やりすぎないためにできることを教えて下さい。

1.自分がされて嫌なことはしない。
2.子どもの声を聴く。
3.自分の子どもだけを見ない(広いコミュニティの中で育てる)。
4.子どもを他の子どもと比較しない。
5.子どもが毎日楽しく生きていればいい。
6.自分の価値観を振り返り、どんな大人になれば幸せか考える。



質問「中学受験をする子どもが多い都市での子育てで気をつけた方が良いことは?」(年少〜年長,小2の保護者様より)
 東京都内在住ですが、近所のほとんどの子が中受する環境にいます。子供たちは習い事もたくさんしていて放課後遊ぶ時間も少なくなってきています。中受のために小一から塾へ通う事、高学年になると勉強ばかりの日々。かといって高校受験では行きたい学校、選択肢が少ないようです。そこで我が家は小学校受験で高校までいける学校を選びました。もう少し地方都市にいれば子供にこんな窮屈な環境ではなく伸び伸びしてもらえたのでは、と。当時の自分と比較すると寂しく思います。このような都市生活で、自然体験や実体験を大切にしようとしてはいますが、受験全般、何かアドバイスなどあればご教授願いたいです。どうぞよろしくお願いいたします。

1.周りが中学受験をするから、塾に行くから自分も?
 私自身は、自分の価値観に従って行動してきました。みんなと同じでなければならないと考えていると、今の日本では、必ずしも子どものためにならないことをやらなければならないことが増えてしまいます。そうしなければならないと思い込んでいることの中には、そうしなくてもいいということもあるのではないでしょうか。例えば、私は自分の子どもたちに重いランドセルではなく、軽くて使いやすいデイパックを持たせました。本人が軽い方がいいと言ったからです。ランドセルは重すぎて子どもの体の成長発達によくないという情報も聞いていましたので、それでいいと思いました。それで何も問題はありませんでした。
2.今の環境のままか、環境を変えるか、生き方は自分で決めていいものです。経済的な理由などでどうしても逃れられない場にいるのでない限り。何かを優先し、何かを捨てているのでしょう。自分の人生です。
 どうせ無理→だったらこうしてみたら?(植松努さん)
 どういう生き方をするかは自分で決めていいと思います。
3.その上で。子どもの勉強ができるかどうかは、乳幼児期の脳に基盤ができているかどうかが大きく影響します。好奇心や主体性を阻害せず、他人が嫌なことはしないという範囲内で、自由な生活を保障しましょう。早くから詰め込みの勉強をすれば成績が上がるというのは幻想です。


質問 出来たら嬉しい、でも出来なくても大丈夫、と思える為に大切な心がけ、または声のかけかたはありますか?(録画配信予定の参加者さんより) (25,22,13,8歳の4人の子ども)
 子どもでも大人でも"〇〇が出来た"と成果や成長が嬉しいものですが、それはともすると、"〇〇出来ない自分はダメだ"や、"〇〇出来ないアイツはダメだ"と自分も他者も見下してしまう思考に繋がりかねないなと思うのです。出来たら嬉しい✨でも出来なくても大丈夫✨と思える為に大切な心がけ、または声のかけかたはありますか?

1.失敗や間違いはどんなときにダメで、どんなときにはいいですか。他者に取り返しのつかない被害を与えるときでしょうか。
2.失敗は成功のもと、ではないですか。
3.他者が失敗を見せてくれることで自分が学べますよね。感謝して学びたいなあ。
4.自分ができるかできないかということと他者は関係がないのに、比較してしまうのはなぜでしょうか。
5.できなくて大丈夫なときと大丈夫でないときがあります。ダメなときはごまかさずにしっかり落ち込んで、むしろ立ち上がって(レジリエンスと言います)、次に向かうことを練習しましょう。
6.見下されてきた人は、見下すことを覚えます。いつも間違えてもできなくても見守ってもらえて来た人は、他の人にもそうするでしょう。だから、大人になってからでも、今までの体験から離れて、学び直しをしなければならないのでしょう。


いかがでしょうか。子育てや教育に迷っている親ごさんたちに、少しでもお役に立ちますように。

※ 花まる子育てカレッジの会員登録は、月額1000円あるいは2000円ほどで、150本!!動画見放題ということです。チャンネル登録すると、どのチャンネルも最初少しだけ見ることができて、その先は会員登録が必要というシステムになっているようです。


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