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シャーロット・ブロンテから紐解かれるアン・シリーズの秘密の数々…名前や年代、アンの誕生…

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シャーロット・ブロンテから紐解かれるアン・シリーズの秘密の数々…名前や年代、アンの誕生日、アヴォンリーの原郷などを、謎主婦が解き明かします。2010年の『真実の赤毛のアン(改訂版「ブロンテになりたかったモンゴメリ」)』の続編!2020年8月23日〜up♪

最近の記事

アンの誕生日 は なぜ”Middle March”?(改)

1)誕生日が決まるまでの推移 アン・シャーリーの kindred(ヨセフを知っている一族)の一人として描写される人物は、1917年に出版された ”Anne’s House of Dreams” で初めて描かれます。 その人物の名はマーシャル・エリオット夫人(初登場時の名前はコーネリア・ブライアント)。 名前だけでなく、その異彩を放つ人物造形からも半世紀前のロンドンで活躍した女性作家、ジョージ・エリオットがそのモデルであると思われます。 この作家には、 ”Middle Ma

    • 白ゆり姫はシャロットの姫

      『赤毛のアン』の28章でアンが小舟に横たわって演じたエレーン姫は、詩人テニスンが謳った ”The Lady of Shalott”というアーサー王伝説がモチーフである詩からの再現、といったら皆さんは驚かれるでしょうか。 テニスンが1842年に書いた”The Lady of Shalott” を画題として、ウォーターハウスが描いた同名の絵(日本語版Wikipediaでは「シャロットの女」という訳になっています)は、まさにアンが演じた白ゆり姫のイメージそのもの。 しかし現在、2

      • 『赤毛のアン』と『マーミオン』〜後編

        アン・シリーズに度々登場する、ウォルター・スコットの『マーミオン』。『マーミオン』の引用箇所の歴代翻訳家の方々の「誤訳」については、「『赤毛のアン』と『マーミオン』〜前編」で述べた通りです。 さて、題名の「マーミオン」はイングランドの勇将の名前で、物語の主人公として登場しますが、実は相当の悪者でもあります。 マーミオンの悪の面が鮮明になればなるほど、それと対照的に浮かび上がってくるのがイングランドのAbberley地方のかつての領主デ・ウィルトン。 マーミオンの策略によって

        • 『赤毛のアン』と『マーミオン』〜前編

          『赤毛のアン』29章に書かれたこの2行は、『マーミオン』という物語詩の第六曲三十四からの引用です。 ウォルター・スコットが1808年に出版した『マーミオン』のストーリーは、とても劇的。 イングランドの、とある地方の元領主デ・ウィルトンには、クレアという恋人がいました。 クレアはイングランドの名門グロスター家のお姫様です。 そのクレア姫を、イングランド国王の寵臣であるマーミオンが我がものにしようと謀ります。 己の欲のために名門の姫と結婚しようとするマーミオンと、苦難の末にク

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          もう一人の《小さなエリザベス》〜女王陛下との数奇な巡り合わせ

          ”Anne of Windy Willows” に登場する ”little Elizabeth” がアン・シャーリーと同じ誕生日と置かれていることを手がかりに、アンの誕生日(3月15日)がシャーロット・ブロンテ(3月31日)とその夭折した次姉エリザベス・ブロンテ(6月15日)のそれぞれの命日から取られているとの推論を、『赤毛のアン ヨセフの真実』第2章3節「アン・シャーリーの誕生日」に記しました。 ”little Elizabeth” とエリザベス・ブロンテには名前の一致だけ

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          アン・シリーズのメイフラワー

          赤毛のアンの世界にはふたつのメイフラワーが描かれています。 それは、大文字で始まるMayflowersと小文字で始まるmayflowersです。 「大文字で始まるメイフラワー」が描かれているのは、 "Anne of Green Gables" 20章の9箇所と35章の1箇所 ” Anne of the Island” 20章の1箇所と22章の3箇所、23章の1箇所 と全部で15箇所です。(脚注1を参照のこと。) 一方、「小文字で始まるメイフラワー」は、 ” Anne o

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          アン・シリーズは続くよどこまでも

          2007年に初めてまとめた『もっと「赤毛のアン」を描きたかったモンゴメリ』、2010年の『真実の赤毛のアン』(その改訂版を2012年に『ブロンテになりたかったモンゴメリ』として)と、これまで10数年かけて解き明かしてきたモンゴメリの人生。 彼女とシャーロット・ブロンテの文学的な関係や、両者の文学性の背景となる歴史観、「ヨセフを知っている一族」というモンゴメリ独特の人間観について、『赤毛のアン ヨセフの真実』というタイトルで「8月26日」が「水曜日」となる2020年の夏、無事

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          赤毛のアン ヨセフの真実 / 第五部 補章編 アヴォンリーとマリラの名前

          補章 その1 "Avonlea" は創造的アナグラム 本稿第4章2節で、 "Avonlea" はシェイクスピアの生誕地の "Avon" からではなく、 "Abbey” や "Abbot” の ”Ab” の音からネーミングされた可能性について触れました。 確かにストラトフォード・アポン・エイヴォンの "Avon" の綴りは "Avonlea" の語頭と同じであり、モンゴメリがシェイクスピアに因んだという解釈が定説となるのも不思議ではありませんが、モンゴメリはスペルよりも音に

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          赤毛のアン ヨセフの真実 / 第四部 秘密の時間軸

          第9章 操作された時間軸 第1節 スペイン風邪がさせた決心 1913年7月末にシャーロット・ブロンテの禁断の恋文のニュースを知った後、モンゴメリは ”Anne of the Island” 、 ”Anne's House of Dreams” 、 ”Rainbow Valley” 、そして ”Rilla of Ingleside” の4作品をほぼ2年おきに世に出します。 アンとギルバートが婚約する ”Anne of the Island” から始まり、第一次世界大戦が終結し

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          赤毛のアン ヨセフの真実 / 第三部 ウィルが「盗んだ」指輪

          第6章 青春の光と影 第1節 ポリーという愛称 これまでお話してきたように、シャーロット・ブロンテのお話からインスパイアされたイメージで形作られた舞台設定と、これからお話するように、モンゴメリ自身の思い出が余すところなく注ぎ込まれている『赤毛のアン』。 そのマニアぶりは "Anne of Green Gables" だけでなく、アン・シリーズ全般に渡って物語の細部に埋め込まれていくわけですが、シャーロット・ブロンテが生前最後に出版した "Villette"は、少女時代のモ

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          赤毛のアン ヨセフの真実 / 第二部 失われた世界への憧憬

          第3章 Anne’s House of Romance第1節 ボーリングブローク      モンゴメリは、アン・シャーリーの生まれた場所をノヴァ・スコシャの ”Bolingbroke” と名付けました。 しかし、実際のノヴァ・スコシャにはそのような地名はありません。 では、その名前はどこから来たのでしょうか。 これもまた、シャーロット・ブロンテの "Jane Eyre” からのようです。 "Jane Eyre” をお読みになった方はお分かりの通り、そこにも「ボーリングブロ

          赤毛のアン ヨセフの真実 / 第二部 失われた世界への憧憬

          赤毛のアン ヨセフの真実 / 第一部 埋め込まれたブロンテ

          序章 〜ようこそDORの世界へ〜 1942年4月24日。 "Anne of Green Gables" の著者、L. M. モンゴメリは67歳で亡くなりました。 その死因については近年、モンゴメリの次男から連なる近親者から「過剰服薬による自殺」だったと告白されています。 最晩年には視力も衰え、手の痛みから文字が書きにくくなっていたことや、まだ終息の見えない第二次世界大戦の渦中であったこと、夫の精神の病が悪化したこと、そして長男の度重なる不祥事に悩まされていたことなどなど、

          赤毛のアン ヨセフの真実 / 第一部 埋め込まれたブロンテ