第九夜 旅行

夫と夫の妹さん、その娘のZZちゃん、夫の両親の6人で車に乗って旅行をしている。

東京から北へ車を走らせる。

運転は夫がしていて、お義父さんは助手席に、

お義母さんと妹さんとZZちゃんと私は後部座席に乗っていた。


とある県の真ん中くらいで、ZZちゃんが高熱を出してしまった。

さっきまで元気だったのにおかしい。

高架下の日陰に車を止めて、少し休むことにした。

そこへ自衛隊になった私の弟がやってきて、

「この辺りには溶岩のある谷があるから磁場が乱れていて、

それに反応して熱が出てしまっているのかもしれない。子どもは敏感だから」と教えてくれた。

私たちは再び車を走らせた。

弟の言った通り、県境に差し掛かる頃にはZZちゃんはすっかり元気を取り戻していた。

県境を過ぎたところで私たちは車を乗り捨て、舗装されていない砂埃の舞う坂道を歩いた。

陽炎がゆらゆらしている中、

私は、ZZちゃんを抱きながら歩く妹さんの後ろを、少し離れたところでゆっくりと歩いた。


気がつくと私たちはゴンドラに乗って川を滑っていた。

辺りは夕暮れで、空はフラミンゴのような鮮やかな赤ピンク色に染まっていた。

川は透きとおった水色で、水面が夕日を浴びてキラキラしていた。

よく見ると、キラキラしていたのは蝶の羽根で、紫色の蝶たちが水面に水を飲みにきているのだった。

ゴンドラの周りに、次から次へと蝶たちが水を飲んでは去り、飲んでは去っていった。

蝶の群れが通り過ぎるたびに水面の辺りがキラキラ光るので、ZZちゃんは大はしゃぎだった。

途中、左手に立派な鉄門のある真っ白い大豪邸を通り過ぎたかと思うと、

前方右手の岸から川にせり出した木の枝からは極楽鳥がゆったりと飛び立つところだった。

ゴンドラは水の流れるまま音も立てずに川を滑っていった。

こんなにも幻想的な景色を生きているうちに見られるなんて、旅行はするものだな、

これまで出不精だったけれど、これからは努めて外に出て見聞を広めよう、と思った。

胸のあたりがスーッと軽くなり、目も冴えわたり、身体中に清らかな空気が通り過ぎた。

そして、深く息を吸い込んだところで目が覚めた。

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