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住民の話は聞くな 地方と住民の反省

全国の地方あるある。
誰も悪くはないが、結果は後の住人の後悔となる。
これは一本の橋の話。


この下に映る小さな橋。車は通れない。

地域の声は「子どもを守れ」

トップ写真は私の散歩道。春も可愛い。
人口1万5千人程度の我が町でもインフラ整備が進んだ昭和の高度成長期。
上の写真でも見てとれるが、川の右側(東側)は住宅地となっており、もともと住民が多い地区だった。その数百メートル東には国鉄(JR)の駅がある。上の写真の100メートル程下流には長崎本線の複線線路がある。
小さな町の中心に位置する場所。

他方、トップ写真の左側(西側)は田んぼが広がり、農家の集落が水面に浮かぶ孤島のようにポツポツと点在する地域。戦後のベビーブームに乗り、子どもが増えた昭和30年代。後期高齢者になった私の母もその頃この場所で生まれ育った。

人口が右肩上がりで増加。
共に増えたのは新三種の神器と呼ばれたカラーテレビ、クーラー、そして車。
そして交通戦争と呼ばれる昭和30年代の交通事故死亡者数の増加。日清戦争の日本兵の死亡者数を一年で超えたからそう呼ばれたらしい。
犠牲者のほとんどは子どもと高齢者で、当然全国的な社会問題となる。
一次産業中心の田舎でも徐々に子どもと高齢者、車と電車で通勤する人たちが増加した。

川の向こうにある駅や中学校、高校にいくには川に架かる橋が必要となり橋の計画が持ち上がる。
そこで当時の親世代(現在100歳くらいの住民)が声を上げた。

「子どもが危ないから、車が橋を通れないようにして欲しい」
「町とつながると、たくさんの車が地域を走るようになるから危ない」

そうして橋は昭和36年3月に完成、63年前のことだ。
希望通り、車が通れない小さな橋。
そして三世代が交代、川の西側からは人と子どもと活気が失われた。

再度人口が増えたのは、この橋の北側500メートルの場所に「大橋」が架けられて新興住宅地が造成されてからになる。団塊ジュニアが家庭を持つ平成中期だ。

祖父が元気だった頃によく聞かされた話で全部が正確だとは思わないが、嘘でも大袈裟でもないだろうと、現在の政治の口利きや行政と地方議会の話を見聞きすると思える。

さてさて、別に21世紀に暮らす私が当時の結果や判断をガタガタ言うつもりも先人の失敗を論いたくもない。だが思考停止はしたくない。

先人(私の祖父含む)は良かれと思って車が通らない橋、優しさからデザインされた橋だ。子どもを事故から守るという課題を解決するために。
その課題解決は成功した。

しかし他の可能性は失われたのかもしれない。
そしてこれから先50年後にはどのような未来が待っているのか?悲観論ではなく現実的なイメージはどうなるだろうと想像を積み上げてみる。
幸せであってほしい。


だが現在の生活者として、地域ブランドを研究する立場として思うことがある。
そして2024年に完成しているインフラに対する疑問や反省、課題や対策について考える。

2024年現在、各地で計画されているすべての案件に100年先の絵図はあるのか?

せめて20年先でも良い。
人口減少が止まる数十年先の日本。その時の課題は今でも十分予測可能であるにもかかわらず、どのように手をうとうとしているのか?

理解できないのは、我々生活者が身近な課題を曖昧にしているから。
これは政治が悪いとかではなく、我々個人が受け身すぎることが原因の一つ。
結果が出てからそれを評論する。行政は「市報などで伝えています」という。
しかし誰も興味を持たない。四年に一回の選挙の時に車から低姿勢でお願いする候補者をいろんな思いで見つめるだけ。

まずは身近な場所を知ることから始まる。
広島の安芸高田市の市長と議会のやりとりがYouTubeや SNSで話題だが、あれは今のこの国が抱えている様々な課題やモヤモヤがつまびらかにされているから。
同族嫌悪でイライラして眉をひそめる。

安芸高田市のやりとりは、我々がいかに地域に対して興味も知識も知恵もなかったのかを気づかせてくれた。安芸高田の皆さんにお礼が言いたいくらいだ。
ありがとう。

田舎と言われる地方に住むとわかることだが、地方議会や政治に声を上げることを極端に嫌がる。嫌われる。変人扱いされる。
だから地方議会は勝手に密室になる。そして、国の予算がなくなる前にハコモノを作らなきゃと行政と首長と議会と一部の関係者で何かがきまってる。

私の街も市長が逮捕された。
なかなかのインパクトだが、きっとこれは他山の石のようなもんだろう、他の街からすればね。

声が大きい人の意見を聴く時には注意が必要だ。
耳に優しい正しい意見は時として害になる。

地元を愛するためにはロマンとそろばんを意識しないとね



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