どこかの猫

絵と言葉と猫がすき。

「寂しさ」に、向き合うということ。

駅は、散り際のお花見に集まった人々でごった返している。川沿いの遊歩道には、ずらりと並んだ屋台のケバブとフランクフルトのにおいが漂う。
自撮りをする若者たちの声が響き、犬を連れて歩く夫婦、花びらを追いかける子供たち、シャッターを切る音、それらのざわめきが4月の明るい光の中に溶けていく。

その喧騒の中を、コートのポケットに手を突っ込んだまま、ぷらぷらと歩く。まだ、風は少し頬に冷たい。
この街に引っ越

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ありがとうございます。うれしくて飛び跳ねます。
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人生ではじめてのデートは。

人生ではじめてのデートのことを、思い出してみる。

それは、たしか高校一年生のときで、小学校のときからずっと思いを寄せていた子との、念願のデートだった。
7年越しの片想いだった。共通の友達をつたって、別の高校へ進学した彼のメールアドレスを聞き出し、彼の好きな音楽の話からメッセージのやりとりを繋ぎ、一通一通たぐり寄せるようにして、ついに取り付けたデートの約束だった。

待ち合わせの日、それはそれは、

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花柄のワンピースと水族館

秋の風が窓を吹き抜けて カーテンを揺らす

重たい瞼をこすり、久しぶりの快晴の土曜日に

洗濯物を済ませておかなくてはと、スイッチを入れる

小さな部屋の小さなベランダから これまたビルとビルの間に

小さく切り取られた青空を見ている

駅前に高く伸びているオフィスビルが、ガラス張りの壁面いっぱいに

青空を反射して、雲がゆったりとその背景を動いていく

物干しにゆれる、花柄のワンピースに目を落と

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ありがとうございます!!うれしくてほかほかしています。
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彗星とロールケーキ

学生のころ、お互いにいいなと思いながらも、
結局付き合うことのなかった人と、数年ぶりに会うことになった。

大学1年、18歳の頃から続く時系列のなかに、
私たちの記憶は、「線」ではなく「点」で、ぽつぽつと残されている。

それは、お互いに当時別々の恋人がいたから、ということもあるし、立て続けに会うとどちらかの気持ちが大きくなりそうで、もう一方が距離を置く、みたいなことを繰り返していたからでもあった

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海へ行った話。

海へ行ってきた。

快晴の続く、ゴールデンウィーク。飛び石のカレンダー通りに仕事をして、特段大きなイベントや行楽も無く、もう連休は終わろうとしていた。金曜日の夜。

ベランダに吹く夜風は穏やかで、東京の夜空にもちらちらと星が光っていた。天気予報によれば、明日もよく晴れて行楽日和になるらしかった。

スマホに表示された「晴れ」のマークを見て、私はおもむろにソファから立ち上がり、トートバッグにタオルと

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ありがとうございます!!うれしくてほかほかしています。
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特別な、何かになりたかった

小学校2年生だったと思う。
文集に載せるから、将来の夢を書きなさいと言われ、カードが配られた。

私は、机の上に乗った真っ白な紙を見つめてしばらく悩んでから、
こっそりと「魔女になりたい」と書いた。

「ケーキ屋さんになりたい」「サッカー選手になりたい」「アナウンサーになりたい」クラスメートたちの朗らかな夢に挟まれて、私の「魔女になりたい」という一行も、文集に印刷された。口にしてはいけない呪文を言

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