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口紅を買えなかった日のこと、の続き。
少し前に、「口紅を買えなかった日のこと」という日記を書いた。タイトルの通り、口紅を買おうとデパートのカウンターに立ち寄ったものの、買えずじまいで撤退したという出来事を書いたものである。
暗い内容であったので、大声でシェアするようなものではないと思い、ひっそりと公開した。Twitterでは一応ツイートしたものの、評判もふるわず、すぐに流されていった。翌日noteを開いたときに、わずかながらに「スキ
花柄のワンピースと水族館
秋の風が窓を吹き抜けて カーテンを揺らす
重たい瞼をこすり、久しぶりの快晴の土曜日に
洗濯物を済ませておかなくてはと、スイッチを入れる
小さな部屋の小さなベランダから これまたビルとビルの間に
小さく切り取られた青空を見ている
駅前に高く伸びているオフィスビルが、ガラス張りの壁面いっぱいに
青空を反射して、雲がゆったりとその背景を動いていく
物干しにゆれる、花柄のワンピースに目を落と
特別な、何かになりたかった
小学校2年生だったと思う。
文集に載せるから、将来の夢を書きなさいと言われ、カードが配られた。
私は、机の上に乗った真っ白な紙を見つめてしばらく悩んでから、
こっそりと「魔女になりたい」と書いた。
「ケーキ屋さんになりたい」「サッカー選手になりたい」「アナウンサーになりたい」クラスメートたちの朗らかな夢に挟まれて、私の「魔女になりたい」という一行も、文集に印刷された。口にしてはいけない呪文を言
口紅を買えなかった日のこと
私は口紅を一本も持っていない。
グロスや、わずかに色のつくリップクリームの類は持っているけれど、いわゆる「ルージュ」と呼ばれるような、正式な口紅といえるものは所持していない。
口紅は、いつか大人になったら買うものだという意識があったからかもしれない。仕事ができて、知性をまとっていて、所作が美しく、それまでの人生で得た経験の深みを佇まいから感じさせるような、「大人」の女性。
だから、まだ私には