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はじめての「はじめてのトランスジェンダー」その13  Q 21 トイレや更衣室などは、戸籍の性別に準じて使用を認めるべきでは

こんにちは。
はじめての「はじめてのトランスジェンダー」その13です。

はじめてのトランスジェンダーというサイトがありますね。

こちらのサイトはトランスジェンダーについて知りたいという人に紹介されることが多いサイトです。
しかし、このサイトには非常に多くの問題点が指摘されていて、トランスジェンダーについてはじめて学ぶ人に対して非常に不誠実な内容となっています。
それをなるべく丁寧に説明していきたいと思います。

今回は Q 21 トイレや更衣室などは、戸籍の性別に準じて使用を認めるべきでは
について見ていきます。


1 性同一性障害への同情を利用して全トランスジェンダーに合い鍵を渡そうとしている


質問への回答の全文を見てみます。

「Q 21 トイレや更衣室などは、戸籍の性別に準じて使用を認めるべきでは

性同一性障害の診断をもつトランスジェンダーの半数以上が戸籍の性別変更に至ってない現状があります(Q4参照)。戸籍とは異なる性別で日常生活を送っている当事者は多く、また移行先の性別で馴染んでおり特にトランスジェンダーであることを公表していない場合も多くあります。戸籍に準じた扱いを求めることは望まないカミングアウトの強要やアウティングにつながりかねません。」

「性同一性障害の診断をもつトランスジェンダーの半数以上が戸籍の性別変更に至ってない」と読み手に対して、まるでトランスジェンダー=性同一性障害であるかのような印象を与える文章です。

こちらの北海道文教大の推計によると
性同一性障害は2800人に1人。つまり人口の約0.03%です。

それに対して、サイト運営者の話だと
トランスジェンダーは人口の0.6%程度。
つまり、トランスジェンダーの中で性同一性障害に該当する人は1/5にしかすぎません。

トランスジェンダー=性同一性障害であるかのように見せてルールを作ろうとすること、それ自体が残り4/5について誤魔化す意図を感じるものです。

それは二重の意味で不誠実な行為であると考えます。
第一に、「はじめてのトランスジェンダー」を見てトランスジェンダーの人たちと共生する社会の在り方を考える人達を欺くものです。

第二に、トランスジェンダーの4/5を占める、
性同一性障害でないトランスジェンダーを「存在しない者」として扱うことです。トランスジェンダー当事者の透明化を行っているのです。サイト運営者はトランスジェンダーを尊重さえしていないと私は感じました。

また以前の記事で述べたように、「はじめてのトランスジェンダー」ではトランスジェンダーの定義の中でも比較的狭い定義に基づいて計算しており、
定義次第ではずっと多くの人がトランスジェンダーになります。

トランスジェンダーという言葉自体が多義的であり、かつ多様な人々を含む概念であるからこそ、
個人次第で判断するとなると実質的にルールが存在しない状態になるでしょう。

そして、そういう反論があると分かっているからこそ、読み手のミスリードをするために「性同一性障害の診断をもつトランスジェンダー」という言葉を使っているのかも知れません。


2 アウティングを防ぐ方法が女子トイレ利用だけのように錯覚させている

「戸籍に準じた扱いを求めることは望まないカミングアウトの強要やアウティングにつながりかねません。」というとまるでトランス女性が女子トイレを使わない=即アウティングであるかのように聞こえます。
ですが、設備の工夫でそうはならないようにすることができます。

TERFと呼ばれる人達の多くは女子トイレとは別にユニセックストイレや誰でもトイレを充実させることを提案しています。
こういうことを言うとトランス活動家は「女子トイレが別にある時点でそれを使わないこと自体がアウティングになる」などと主張します。
(そういう人の視野からトランス男性は漏れています)

それならば女性の中でも身体能力に自信があるなど、そういうトイレを使っても被害に遭う心配がない人がユニセックストイレを積極的に使えばいいでしょう。
そうすれば、ユニセックストイレを使っている=トランスというイメージは払拭され、
アウティングではなくなるでしょう。


3 アウティング防止は対症療法であって解決ではない

そもそもアウティングを防ぐというのは、差別への対症療法ではあっても、解決策ではありません。

被差別属性の多くはアウティングどころか、隠すこと自体ができません。
女性は自分が女性であることを隠すことはほぼできません。
身体障害の多くは隠すことができません。
(外見に表れない内部障害等もありますが。)
黒人が肌の色を隠し通すのは難しいでしょう。
イスラム教徒が決まった時間に礼拝するためには自分の所属する会社や学校に信仰を打ち明けないといけません。
高齢者や子どもは一目見れば分かります。

本来は、そういう属性があったとしても、その人の一側面として尊重され、違いがあっても社会に参加できる状態を目指すべきであるはずです。

現状の社会では様々な偏見があることは事実であり
隠すことができる属性ならば隠すことで偏見を避けられるということはたしかにあります。
しかし、それは望ましい状態ではなくあくまで対症療法です。

本来目指すべきは「トランスであろうがなかろうが関係なく個々人の能力・人格が評価される状態」であるはずです。
そして「トランスは隠すべきことである」とされている社会を継続したままではそれは実現しないでしょう。

社会の成熟に合わせながらではありますが、
隠すことばかりが推奨される状態は変えるべきものではないでしょうか。


4.まとめ

以上のことから以下のことがいえます。

・性同一性障害はトランスジェンダーのごく一部のみであるにも関わらず、性同一性障害=トランスジェンダーであるかのようにミスリードしている。
・「ユニセックストイレ」「だれでもトイレ」を設置して運用の仕方も工夫する、などといった選択肢を検討しない。
・それによって、男子トイレでないなら女子トイレという選択肢しかないかのように描いている。
・マイノリティ属性が他者から知られることは珍しいことではない。
・本来は知られても差別をされない状態を目指すべきなのに、知られないことが優先されるかのように話している。

Q21については以上です。

目次はこちら
はじめての「はじめてのトランスジェンダー」目次|ヘイトを許さない一市民🐸人権を相対化する改憲に反対|note

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