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はじめての「はじめてのトランスジェンダー」その16  Q24 刑務所など収容施設におけるトランスジェンダーの扱いはどうなりますか

こんにちは。
はじめての「はじめてのトランスジェンダー」その16です。

はじめてのトランスジェンダーというサイトがありますね。

こちらのサイトはトランスジェンダーについて知りたいという人に紹介されることが多いサイトです。
しかし、このサイトには非常に多くの問題点が指摘されていて、トランスジェンダーについてはじめて学ぶ人に対して非常に不誠実な内容となっています。
それをなるべく丁寧に説明していきたいと思います。

今回は Q24 刑務所など収容施設におけるトランスジェンダーの扱いはどうなりますか


1 130人の受刑者は少ないのか

質問への回答の全文を見てみます。

「Q24 刑務所など収容施設におけるトランスジェンダーの扱いはどうなりますか

差別禁止法がある国でも、性自認にもとづきトランス女性を必ず女性刑務所に移送するという運用にはなっていません。たとえば2019年春時点で英刑務所にいるトランス女性は130人とされていますが女性刑務所にいるトランス女性は11人にすぎません(法的な性別変更をしていない人のデータです)。これは精神科医等を連ねる審査パネルがリスク等を検討し、承認された場合にのみ女性刑務所に移送することになっているためです。刑務所におけるレイプとしてはイギリスでカレン・ホワイトというトランスジェンダーの性犯罪者が女性刑務所に収容され性暴力をふるう事件が起きたことが、日本でも引き合いに出されています。カレン・ホワイトは過去の犯歴を照会することを怠ったためにリスクアセスメントが正しくできなかったとして、英国法務省は謝罪し再発防止を誓っています。」

まず、トランス女性受刑者全体が130人とのことです。

上記のイギリス政府統計によると
2019年の女性収監者全体は3,795人です。
このfemaleがトランス女性を含むのか、
生物学的女性のみなのかわかりませんが
含むなら130人というと、130/3795≒3.4%
含まないなら130/(3795+130)≒3.3%です。
女性受刑者の3.3%がトランス女性。
しかもその3.3%には法的な性別変更をしている人は含まれていないとのことです。法的性別変更済みの人を含めば、4〜5%程度でしょうか。

サイト運営者の話によるとトランス女性は人口の0.6%とのことでした。
人口の0.6%の人が、受刑者の4〜5%を占めているというのは、絶対数としては少ないとしても、割合として見ると非常に多いように見えます。


2.女性受刑者にとっては「11人にすぎません」では済まない

「トランス女性を必ず女性刑務所に移送するという運用にはなっていません」といいますが、
必ずではないが、女性刑務所に移送することもあるという運用にはなっています。
それが11人とのことです。

こういうと少なく感じるかもしれませんが、
刑務所は数人ずつの部屋に分かれて生活するのが一般的です。
イギリスの刑務所の構造は分かりませんが、
2〜4人程度の部屋で寝泊まりしているとして、その中に一人身体的男性がいた時に、
同じ部屋に収監された女性の心情としてはどうでしょうか?
統計では3,795人のうち11人に過ぎなくとも、
女性受刑者にとっては3人のうち1人なのです。

女性の犯罪者には、自身が性犯罪や性虐待の被害に遭ったことがある人も多いです。
そういう人にとって、3人の中の一人がペニスがある部屋で寝泊まりも排泄もするのは、どういう意味を持ちますか。

また、下記のイギリス国会資料によると、
トランスジェンダーの受刑者の半分以上は性加害をしているとのことです。

そういう空間での11人は「11人にすぎません」と言えるような数値でしょうか?

そして、その11人の中で実際に刑務所でレイプをした人物がいたことはサイト運営者の言った通りです。

収監された11人の中が1人レイプをする人物がいる、つまり9%の割合で刑務所内レイプを実行した訳です。
これはあまりに高い割合ではないでしょうか。それを恐れるのは差別なのでしょうか?


3.リスクアセスメントが正しくできない仕組みは問題ではないのか

サイト運営者はトランス女性による刑務所内でのレイプについて、「カレン・ホワイトは過去の犯歴を照会することを怠ったためにリスクアセスメントが正しくできなかった」と
運用上のミスであるかのように説明しています。

ですが、「リスクアセスメントが正しくできな」いような仕組みであるならば、
そもそもその仕組み自体が問題ではないでしょうか?

サイト運営者は「トランス女性は正しく調べてから女性刑務所に送りましょう」という立場な訳ですが、
「トランス女性は女性刑務所に送りません」という仕組みであれば、
そもそもカレン・ホワイトによるレイプ事件は起きなかった訳です。


4.性的暴行者はカレン・ホワイト一人ではない

サイト運営者はカレン・ホワイトのみが特別で、運用を改善すればすむかのように語っています。
ですが、問題はカレン・ホワイト一人ではありません。

下記のbbcの記事を見てみましょう。

Between 2016 and 2019, 97 sexual assaults were recorded in women's prisons, the judgement said. Of these, it appears that seven were committed by transgender prisoners without a GRC. It is not known whether any were committed by transgender women with a GRC.
「2016年から2019年にかけて、女性刑務所で97件の性的暴行が記録されたと、判決文は述べている。このうち、7件はGRCを持たないトランスジェンダーの囚人によって犯されたようです。GRCを持つトランスジェンダー女性によって犯されたものがあるかどうかは不明である。」(deeplによる翻訳)

女性刑務所にいるトランス女性は11人に「すぎない」にも関わらず、7件の性的暴行を起こしているというのです。

3,795のうち11人(0.29%)が
女性刑務所内性的暴行97件のうち7件(7.2%)を起こしているのです。
7.2÷0.29≒24.9
ですので、トランス女性は女性平均の約25倍の確率で
刑務所内で性的暴行をしていることになります。

25倍は偶然と言える程度の差でしょうか?


5.再発防止策の中身を隠している

「英国法務省は謝罪し再発防止を誓っています。」とのことですが、
その再発防止策とはどのようなものでしょうか?

こちらは英国政府が2023年1月に発表した内容です。

その中身はこうです。

As a result of the new policy, transgender women who are in future sentenced to custody and
・have male genitalia
OR
・who have been convicted of sexual offences
will not serve their sentences in the general women’s estate unless there are exceptional circumstances.

「新しい政策の結果として、将来拘留を宣告され、男性器を持っているトランスジェンダー女性、または性犯罪で有罪判決を受けたトランスジェンダー女性 例外的な事情がない限り、一般女性の場所で刑に服することはありません。」(google翻訳を元に一部修正)

「性自認にもとづきトランス女性を『一部』女性刑務所に移送する」というこれまでの政策を改め、男性器があるままで女性刑務所に送ることはしないという政策に切り替えたのです。

性自認基準に基づいた運用を取り入れたら問題が生じ、
身体的基準に基づかなければ女性を守れないと判断した訳ですね。

何故サイト運営者はこのイギリス政府の再発防止対策の内容を説明しないのでしょうか?


6.まとめ

以上のことから以下のことがいえます。

・トランス女性受刑者は女性受刑者の4~5%を占め、一般女性より高い確率で犯罪を起こしている。
・トランス女性受刑者の半分以上は性犯罪者である。
・刑務所の中では少人数のユニットに分かれるため、同室の女性にとっては数人のうち1人がトランス女性となる。
・トランス女性受刑者が刑務所内でレイプをできる時点で、リスクアセスメントが正しくできない仕組みになっている。
・性的暴行を行ったのは一人ではなく、7件の性的暴行が起きていて、女性平均の約25倍の確率である。
・イギリス政府の再発防止策とは性自認基準による運用をやめることなのだが、それを隠している。

Q24については以上です。


目次はこちら
はじめての「はじめてのトランスジェンダー」目次|ヘイトを許さない一市民🐸人権を相対化する改憲に反対|note

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