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ブックレビュー:消費者の行動を変えるPRの取り組みの鍵を教えてくれる「戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則」

※このnoteは、自分で投稿したAmazonレビューの内容を少し追記・変更したものです。

現在、商品情報はあふれているが、製品の質の向上を続けた商品は、どれを選んでいいかわからない。必要なものはだいたい手元にある。商品・サービスの提供者は、消費者の「買う理由」を作るしかない。

広告を使って、購買意欲を喚起するメッセージも溢れている現代。押し付けるのではなく、企業が情報を発信して、それを複数のメディアが取り上げ、消費者のモノの見方を変え、行動が変えるまでしないといけなくなっている。

関心テーマの探り方/合意形成の6要素

行動変容まで至る、消費者との社会的合意形成を作るための「関心テーマ」は、以下の共通部分から見つける。

①商品便益:既存や競合との差別化ポイント
②世の中の関心事:世間や第三者が気になっていること、世間の話題
③生活者の関心事のメリット:商品・サービスを使う人が抱えている問題、その解決

そして、その合意形成の取り組みには、以下の6要素が必要。
・社会性の担保(おおやけ):世の中のニーズ
・偶然性の演出(ばったり):過剰なアプローチを忌避する傾向で有効
・信頼性の確保(おすみつき):第三者発信による信頼
・普遍性の視座(そもそも):潜在的な普遍性
・当事者性の醸成(しみじみ):感情に訴えるストーリーテリング
・機知性の発揮(かけてとく):機知とリアルタイム性に富んだコミュニケーション

本書より社会的な合意形成がうまくいった事例抜粋

ベビーカー

日本は、アップリカとコンビの二強:「軽い」「ファッショナブル」
対して、ビジョンのランフィは、大きなタイヤが特徴。

ベビーカー利用者の80%が、段差を乗り越えるストレスがあった。
50%強が「子供の安全性が重要」と考えていた。
シミュレーションで、段差でつまづいた時の赤ちゃんの衝撃度合を計測し、自動車の急ブレーキの5倍の衝撃をつきとめ、そのレポートを使って、販売。

味の素の冷凍餃子

Twitter(冷凍餃子:手抜き)
→手間抜きですツイート(味の素が反応)
→反応したメディアの取材に丁寧に応じる→記事が増える
→144工程を1分15秒の動画にまとめ、公開
→好意的に受け入れられ、前年比118%の売上増

洗濯洗剤のアリエール

・インドのお父さん、家事しなさすぎ問題(アリエールのキャンペーン)
・話題性のある動画を制作
→テレビの討論番組
→アパレルメーカーのメッセージ「なんで選択は母親だけの仕事なの?」
 & 洗濯マークタグに「男女関係なく洗濯できます」メッセージ

バーガーキング

・34日間にわたって、カビのはえていくワッパーを広告掲載(2020年2月)「防腐剤を使ってません」というメッセージじゃ弱い

本の少し残念なところといいところ

私が感じた本の欠点は、二つ。

・紹介の事例は多いが、テーマに合っているか微妙に感じた
・実際に行動変容を起こす取り組みをどうやって考えればいいかわからない

「こんな文章をこんな要素を盛り込んで、こんな構成で書けば、あなたもベストセラー作家になれます。」とは書いてあるが、それをどうやって書けばいいのかわからない。

ただし、要素はわかるので、しっかり読んで理解すれば、企画のレビューはできるようになるかもしれない。

「いい企画だけど、社会性が足りない(社会性の担保)」
「誰がいいって言ってるか見えないね(信頼性の確保)」
「その問題意識って、誰もがほんとに感じてることかな?(普遍性の視座)」

なんて具合に。

もちろん、こんな要素を盛りこめれば、勝てる! なんて企画も、いつか出せるようになるかもしれないが、特に、機知に飛んだメッセージが必要と理解したからと言って、明日から一休さんみたいなうまいことは言えない。
(機知の例に一休さんの話があったので)

まとめ

総じて、いい本です。
事例については、テーマに合った事例かどうかは微妙な感じですが、事例の数も多く、あぁ、それはうまい取り組みだなーと感心するPR戦略も多く知ることができました。で、どうすれば、そんなことができるようになるの? という点が弱いと書きましたが、途中の対談ページに、「パブリシティは歯磨きするのと一緒」=ニュースを作ることなんてPRパーソンにとって歯磨きのように当たり前のようにやること という文があったので、自分で日々考えるんだよ、というメッセージも受け取っています。

こんなトレーニングも日々行いながら、歯磨きをするように企画を考えていきたいと思っています。

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