百万遍のカラオケ店へ行く

楽しみにしていた日はやはり雨が降る。自宅を出た頃は曇っているだけで雨は降っておらず、山科駅で列車を降り京都市営地下鉄に乗り換えて東山駅でまた列車を降りるまでは雨に濡れる事は無かったのだが、東山駅の地上に上がった途端、頭にポツポツと降るものがあった。雨男もここまで極まるとネタとして非常に有効である。やはり何処へ行くにしても傘は手放せないと思った。今日も特に何も考えずに傘を持って出掛けたが、それは大正解であった。

今日は私を含めて4人でのカラオケ会である。なので、目的地周辺である百万遍の交差点に着いたら、集まる予定のカラオケ店を具体的に探した。しかし、そのカラオケ店が見付からない。スマホで位置を確認すると確かに私の居る場所の左手に店舗があるはずなのだが、コンクリート打ちっぱなしの、客の入る扉も無いような無機質な建物しか無かった。が、よくよく周辺を見渡すと、カラオケ店の店名が書かれた看板があった。もしやと思いながら恐る恐る、従業員用と思われる扉を開いてみると、その中にはカラオケ店の設備がしっかりとあった。とは言えやはり、変わった雰囲気のカラオケ店であった。秘密組織のアジトのような雰囲気を目指している店なのかもしれないと思った。この雰囲気は私の好みであった。

昼から日が沈むまで思う存分カラオケを楽しんでそろそろ店を出ようと云う話になった時に、ふと思い出した事があった。以前クリスチャンの細川さんと黒田さんに連れて行ってもらった、ここ百万遍にある京大生御用達の焼肉店の事である。思い出したのも縁だと思い、私はみんなに「美味しい焼肉店があるから行きませんか」と言った。異存は特に出なかった。なので、当初予想していなかったが、カラオケを存分に楽しむと云う贅沢に、焼肉をたらふく食べると云う贅沢を重ねる事となった。

食べ放題の権利を余す事無く焼肉を楽しんだら、今日は解散となった。食事をして温まったからか、外の空気が冷たく感じられた。もう2月も中旬であるのにまだこうやって凍える事ができて少し嬉しかった。濃い味の残る口に、bossのホットコーヒーを注ぎたくなった。なのでコンビニに依って缶コーヒーを買った。缶はやはり温かかった。ずっとこの温かい缶を手に持っていたいと思った。温かい缶コーヒーを手に持てて幸せだとこれからも思いたいと思った。だがまず、ホットコーヒーを味わいたくもある。なので、コーヒーが冷めない内に飲もうと思い直して、缶の蓋を開けた。相変わらずどんどんと飲みたくなる味であった。飲み干した後は缶が冷たくなった。寂しさの強い冷たさであった。一方でふと、今は雨が降っていない事に気が付いた。それ程強い雨雲ではなかったのかとどこかホッとして、今度は傘を差さずに東山駅までの帰路を進んだのであった。

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