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リソグラフ機探訪

イベント「紙me」の打ち合わせ行ってきました。
中野活版さんにて。

https://www.kamime.net/me-vol-3

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「紙me  vol.3」のメインビジュアルをリソグラフ機でいろんな紙に印刷したテスト校。今回は「栞」がテーマで、それにまつわる紙チョイスにしたいそうです。

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紙meに、理想科学工業さんが最新のリソグラフ機とオルフィス機持ってきてくださるということで(持ってくるっつったってどっちもでかいよ、と思うんですけど、理想さんそのへんのフットワークが軽すぎる…。最初リソグラフ機があるだけでありがたいことだと思ってたんですが、ポテトでもつけるような感じでオルフィスどうですかと)、性能を活かせそうなデモを計画中です。オルフィス機はオフィス用のでかいカラーインクジェットプリンターで、印刷後も紙のテンションを変えないという強みがあるそうで、じゃあリソグラフ機で追い刷りできるかな?とか考えています。

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わたしはおもにインキのおねだりに(明るい水色をいれてほしい…それさえあれば夢が広がる)。
リソグラフのインキは、基本色17色、金インキ、カスタムカラー50色、受注生産のオーダーカラーという構成になっています。比較的導入しやすい基本色+カスタムカラーのラインナップは、暖色と淡色が弱いんですが(逆に、寒色の濃色はやたら充実している…こんなん見分けつくのかというくらい)、そもそもリソグラフのメインのユーザー層がどの辺かというと、お役所、学校、不動産販売、折り込みチラシ印刷などのお堅い系で(不動産のチラシは青色を使うことが多いそうです。)、ふわっとしたアート目的のユーザーは微々たるもの(たぶん無に近い)なんですよね。
去年のアートブックフェアでリソグラフが大人気だったんですが、当の理想さんが「何故?」って不思議に思ってるくらい。

学生時代を日本で過ごしていると、学校の職員室にあってテストをプリントするコピー機みたいなもの、くらいの認識だと思いますが(コピー機だと思っているかも)、海外のアーティストにとっては版画が刷れるありがたい機械、ということになっているらしいです。まあ、版をつくるタイプの印刷ってぜんぶ版画ですけどね。最初に見せられたのが黒1色のプリントか、バリバリの多色刷りフライヤーかによって印象だいぶ違うので、それはまあしょうがないと思う。わたしだって最初から多色刷りを見せられたらありがたがる。そして遊ぶ。

せめてシアンとマゼンタに相当する色があれば、掛け合わせてどうにかできるんだけどなあ、どうしてこれがないんだろうなー(カスタムカラーの中にもないです)とずっと不思議に思ってたんですが、それがないのは、12色の色鉛筆や絵の具にそういう色がないのと似たような理由なのかも。そもそもデザイナーとかアーティストが使うことを想定していない。だいたい「シアン」「マゼンタ」っていう色名自体、印刷やってないと一生知ることがないと思います。

これは中野さんが見せてくださった印刷サンプルなんですが、

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これもリソグラフ。
すごくうっすい紙で、洋服を買うと包んでくれるあれみたいな紙。

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こんなに薄いと、中でぐしゃっとならない?と思うんですが、大丈夫だったそうです(中野さんはこういうトライアルをよくされているみたいです)。こんな薄くてつるっとした紙もOKなのに、トレーシングペーパーは厚みがあっても機械の透過センサーで止められるので印刷できない、というのが不思議。

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これも見せていただたいた印刷サンプルなんですが、リソグラフのインキの中で、蛍光ピンクと蛍光オレンジだけは、黒紙で発色するそうです。印刷直後は姿が見えなくても、しばらく置いとくとじわじわ発色してくるらしい。蛍光色の中でもいくつか使える色がある、というのはきいたことがあるんですが、ここまでくっきり出るとは思ってなかったので、いっぺんやってみたい。ちなみに上の写真で、グリーンに発色しているのは蛍光イエローです。

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中野活版さん、都内にある数少ないリソグラフスタジオです。刷って持って帰れるので、「明日要る。」みたいなときにもなんとかなるかも(ただし中野さんが空いていれば)。紙meにも出店されるので、お話聞いてみるといいかも。金インク使えます。ふつうに(これはもっとアピールしてもいい情報だと思うんですよね)。あと最新機が入ってます。

https://www.letterpress.so/

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こういう感じのスタジオなんですけど、2、3人くらいでいっぱいになるので、訪問の際は少人数がいいです。

薄曇りのぼんやりした日で、

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緋寒桜が咲いていました。

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このあたり、レトロビルがたくさんあります。
つまり、レトロ看板の宝庫でもあります。
そのうちなくなってしまうだろうなと思います。いまがギリです。

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こちらは理想さんのショールームで見せていただいた、リソグラフ機のドラムです。

https://www.riso.co.jp/

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これ(リソグラフの版)を見て紙meの岡村さんが「かわいい!」と叫んでました。版をかわいいというひと、あんまりいないな…

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リソグラフは、原価で計算すると、10枚刷ればコピー機より単価を下げられるんですが(商業の場合は維持費などが乗るので、だいたい50枚くらいが損益分岐点だと思います)、それは毎回「版」をつくって印刷するからなんです。オフセット印刷などとおなじ仕組みで、枚数が増えれば増えるほど、1枚あたりのコストが下がります。逆に1枚だけコピーする、というケースの場合はかえって高くつくし、そもそも版がもったいない。でも、見た目が完全にコピー機なので、この違いは印刷沼に片足をつっこんでみないと実感できないだろうな、というのは自分がそうだったので(大学のサークル棟にこれがあったんですが、「たくさん刷るとき以外は使うな」という掟の意味がわからないまま卒業した)、よくわかります。

一度版をつくってしまえば、インキを取り替えて印刷できるのも、リソグラフ機のメリットです。そういうのがわかる感じのデモにしたいな、と岡村さんと相談してました。

リソグラフ機といっても、いろんなのがあって、ショールームで説明していただいて、やっと判別できるようになりました。だいたいこんな感じ。
・片面1色刷りのリソグラフ機:2色機があれば十分かと思いきや、学校みたいなところでは黒1色しか使わない。2色入れたところで片方のドラムが乾くので、1色機のシェアって意外と多いらしい。
・同時に両面刷りできるが色数は片面1色のみのリソグラフ機:1色刷りの冊子印刷に便利なので、台本とか、投資系などの、直前までデータがぶれる冊子にピンポイントで需要があるそうです。両面の位置ずれがけっこうあるので、印刷屋さんはやっぱり片面機で片面ずつ合わせながらいくことが多いそう。これの2色機がでたら最強なのに(位置ずれの調整は気が狂いそうですが)。
・片面2色刷りのリソグラフ機:片面2色同時に刷れるやつで、アーティストに人気なのはこれです。紙meに持ってきてくださるのもこのタイプ。

『リソグラフと活版印刷』、理想さんの展示会のところに置いていただきました。おもに、リソグラフ印刷の入稿データのつくりかたのノウハウ(ネット上にもあんまりないです)をまとめたものです。レトロ印刷さんで印刷していただいたので、オールリソグラフです。活版印刷のデータのつくりかたも、リソグラフを理解するとすんなり入れるので、後半にちょっとあります。いまをときめく二大アナログ印刷に強くなれます。

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通販は現在、アリスブックスさんで取り扱っていただいています。紙meでも販売します。

https://alice-books.com/item/show/2755-25




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