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ラジオ講座で多言語学習

今、ちょうどいいシーズンなのでまとめてみます。
ここ2、3年くらい、NHKのラジオ講座を利用して、ざっくり多言語学習をやってました。いろんな言語の「初級」のみです。初歩の初歩ならちゃんとやればわかるようになるので、挫折しにくいです。

英語のヒアリング力をいい加減なんとかしようと、英語講座の多いラジオ第2を作業用BGMにしていたのがきっかけです。途中にいろんな外国語講座が挟まるので、何やってるのか気になってしまったんですよね。最終的にはラテン語が少しでもわかるようになりたいなあと思っています(ラテン語講座はないけど、あったらいいな)。



聞き逃し配信があるので、続けやすいです

中国語は過去に一度まじめに取り組んだことがあったのですが、その時代は今みたいにネットで聴き逃し配信などなく、聴き逃しはCDを買って聴くしか方法がありませんでした。CD買って取り込んで、みたいなのがだんだんめんどうになり、途中で離脱しました。

いまは聴き逃し配信があるので、以前と比べて続けやすさが段違いです。試しに聴いてみてどれをやるか決める、といったこともできますし。

1週間で撤去される(ずっとあるわけではない)のもちょうどよく、撤去される前に1回でも聴いておこう、となるので。中国語とハングルは週5講座で計1時間15分(1講座15分)、それ以外は週3講座で45分を割ければいいので、忙しくても2ヶ国語くらいまでは同時になんとかなるかもしれません。3ヶ国語同時にやったときがあったんですが、さすがにちょっと頭が疲れました。

だいたい6ヶ月を1期として、期ごとに先生や出演者が変わります(出演者は期をまたいで掛け持ちしてることあります)。基本的に4月始まりと、10月始まりです。つまり、今期が始まったばっかりです。


方針が合わなければ来期を待てばいい

講座の方針は先生のスタイルでがらっと変わり、発音や文法重視で初心者に配慮しつつゆっくり進めるものから(まあスタンダードですね)、とりあえず聞いて慣れてみよう系(この場合、初回からハイレベル)、実際に使えそうな表現を集めた実用系、朝ドラみたいに一連のストーリー仕立てのもの(文法を網羅するためにたまに無理な回がある)などいろいろあるので、自分に合わないなと思ったら、次の期を待てばいいです。
格変化がある言語の場合、6ヶ月ではまず全部通れないので、そんなものだと思ってるといいと思います(無理やり全部やってた講座もありましたが、スパルタでした)。

今はもう、ネイティブの声優さんやイケボの出演者さんなどもいらっしゃるので、ただ聞いてるだけでも耳が楽しい講座もあります。先生自体がイケボなこともありました。
記憶だと以前は、気功とかやりそうなおじいさんに中国語を習っている感じだったんですが(文字通り老師…と呼びたくなる)、現在はいろいろなかたが参加しているので、実際に使われていそうな表現も学べます。
性別で使う言葉が変わる言語の場合、男性と女性の出演者がいるケースが多いのですが、ストーリーによっては国際ロマンス詐欺にしか聞こえないこともあり(旅先で唐突に出会って「どこ住み?」「この人がわたしのお父さんよ」みたいな会話になるので)、そのへんも面白かったです。いい声&いい声だと、なおさらあやしい雰囲気になっていました。とくにフランス語。

再放送がある(期ごとまるっと再放送)ので、買ったテキストが1、2年後に再利用できることもあります。実際、だいたい半分くらいが再放送です。問題は、中国語とハングルを除き、初級と中級が同じテキストに同居しているので、初級編が新作、中級編が再放送(すでに持っている)というときもあるんですよね。


テキストは製本するとコンパクト

テキストが揃ったら、宣伝やコラムなどを外して1冊に製本しています。そのままとっておくとけっこう場所をとるのですが、講座部分だけ抜き出すと2/3くらいになって保管しやすいです。初級/応用ごとにまとめられるし(ほんとはこの状態で売って欲しいですが、1冊が高くなってしまうので、買いにくくなるのかも)、ページの開きもよくなるので、とても見やすくなります。

前置き(アルファベットの読みかたとか)が共通してるので、そういうのを抜くとだいぶコンパクトになります。

表紙はフランス装でつけています。フランス装というのは、本体と表紙を背で接着し、中厚程度の紙を折り込んでつくる、簡易的な装丁方法です。開きやすさや持ちやすさ(軽い)、製本の手間などを考えると、これが最適だなと思いました。表紙の素材は、ショップの紙袋が丈夫でコーティングもあり、リサイクルにもなるのでよく使っています。

これをやるためによさそうな紙袋はとっておいたり。
背の接着剤はできるだけ削っておいたほうが開きがよくなります。


地理的に近い言語、たとえばフランス語とイタリア語あたりは似てそうだから、まとめてやったら効率良く覚えられそう、と思っていましたが、やってみたらぜんぜんそんなことはなかったです。ひとつひとつ丁寧にやらないと到底わかるようにはならないだろうな…と思いました。なので、距離的に近い言語を同時にやっても、とくに混ざるようなことはなかったです。

日本語とハングルもちゃんとやってみると、たしかに構造がよく似ていることはわかりますが、助詞の「が」以外は音がぜんぜん違うし、元になる漢字は同じだけど、読みかたがけっこう違うので、音だけ聞いているとやっぱり「どこが似てるの…?」となります。
あと、「文字のかたちにローマ字が対応しているから、対応を覚えたらすぐ読めるようになるよ」も嘘だと思いました。この記号とこの記号が連続すると読みかたが変わる、このパーツは読まない、とかもあるので、そんな簡単なものではなかったです。

ストループ効果のようなもの

頭のなかで、ある文字とその読みかたが結びついている場合、別の読みかたを覚えようとするときにそれがすごく邪魔をするらしいんですが(たとえばロシア語の「c」をサ行、「p」をラ行に読むとか)、わたしの場合、この現象はハングルを覚えるときに発生しました。
ハングルの文字を構成するパーツに、カタカナや漢字と同じかたちをしているものが多数あり、たとえば「ロ=m」、「ト=a」、「人=s」、「己=r」みたいな対応をするのですが、わかっていても知っているカタカナや漢字の読みかたに引っ張られるんですよね。
ロシア語やドイツ語でこれが起きなかったのは、ようするに英語(アルファベット)にそこまで深く慣れ親しんでいなかったから、ということなんだろうなと。

色に関して発生する現象で「ストループ効果」というものがあります。文字の意味と色が食い違うと認識に時間がかかる、というものです(『つくるデザイン』でも解説しています)。職業柄、いろいろな色のついた文字を見慣れているので、この現象はわたしにはあまり実感できなかったのですが、文字とその読みかたが食い違うと混乱することはあるな、と思いました。

『つくるデザイン』で解説しています。本当はこれ、『色の大事典』に入れるべきなんですが、わたしが実感なかったので外したんですよね。

あとわたしの場合、覚えたての文字を頭の中に書く(想起する)のは、わりとすぐできるようになったけど、文字を目で見て読むのはいまだに時間がかかるので、目から入った刺激を解釈するのは、頭で考えるより複雑な工程を踏んでいるんだな、というのを体感できました。知らない文字を無理やり覚える過程を、意識して観察できる機会はなかなかないので(アルファベットはいつのまにか覚えてしまっているから)、貴重でした。
うろ覚えの文字ひとつでこんなに読み取りに時間がかかるわけだから、多くの人間が理解できるデザインをつくるというのは、そんな簡単なものではないな、と思います。

慣れない言語を読むときは、かたちが不安定で規則性が弱いフォント(ハンドライティング風とかスクリプト体とか)は読み取りづらい、というのもすごくよくわかりました。Times RomanやHelvetiaなどの、見慣れたごくふつうのフォントが認識しやすかったです。

とくに強い動機もなく始めてみた多言語学習ですが(今も何がしたいわけでもないです。とくに話すこともないしな…)、未知の情報を覚えるときに踏む段階や、かたちを認識するときの目と脳のはたらきなどを、自分の体を使って実験できた気がします。『つくるデザインIllustrator』や『つくるデザイン』には、このときの経験も反映させています。


外国語組版もわかるようになる

いろいろかじってみて、名詞の性別は言語によって違う(揃えてくれてたら覚える気も起きるのに…)、語順厳守な言語とゆるゆるな言語がある、どの国の言葉にも敬語はある(敬語がめんどくさいのは日本だけではない)、同じ単語を繰り返すと野暮と思われがちなのはどの国も一緒、みたいなこともだんだんわかってきました。

もうひとつ収穫だったのが、外国語組版の注意点が具体的にわかる、ということです。
モリサワさんのところに、外国語組版のポイントをまとめたPDF(MORISAWA PASSPORT 英中韓組版ルールブック:とてもありがたいPDFなのでぜひ読んで)があるのですが

英語以外の言語についても、言ってることの意味がわかるようになりました。字形パネルをさらっと見て、その言語の組版に必要な文字が全部あるかチェックできる、というのは便利だなと。外国語の初歩の初歩でも知っていると、解像度がだいぶ違うなと思います。

今期は当初の目的に戻って、英語をまじめにやろうと思っています。この講座は合間にきいていて、話が暗くないのがわかっているので、安心です。今期からは文法やるみたいなので、受験生にもいいのではと思います。

あとはスペイン語とポルトガル語が残っているのですが、また次の機会に。話者人口からいくと、本当はこっちからやるべきなんですよね。

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