第三回:行動を決められないのは失敗を避けたいから

お昼になにを食べるかというメタファーがあがりました。
そんなとき、悩まずスパッと決めてしまう人もいますが、なかなか決められない人もいます。
つまり、性格によって決められない、ということがあります。

優柔不断、などと言われる人がいます。
そういう「性格」の人は、なぜそういう性格なのかと言われても困るでしょうが、決められないのはきっと怖いからなのだと思います。

なにが怖いかといえば、間違った判断をするのが怖いのです。
お昼のメニューを選ぶに当たって、とりあえずハンバーガーと決めてみようとします。
しかし、実はラーメンにした方がいいのではないか?と思ってしまうのです。
なぜなら、その方がおいしいかもしれないし、自分が満足するかもしれないからです。

自分が満足するかもしれない可能性があるものを差し置いて、そうでないものにお金を費やしたり食欲を費やしてしまうことが、怖いのです。

運命を決してしまうのが怖い

行動できないときには、この種の不安がそれなりにあるものです。
大げさに言えば「運命を決してしまうことへの恐怖」が、ごく微量であっても感知されているのです。

では、タスクを実行するときにはどんな不安があるのか?

時間を失ってしまう不安があります。
それに、本当にいまやるべきことなのか、ということがわからないのです。もっとちがうことをやるべきなのではないか。
さらにいえば、元気を失う不安もあります。そうでなくてもいろんなことを抱えているならば、「それ」をすることで元気を失ってしまったら、後々困ったことになるかもしれない不安です。これは時間も同じことです。

ちょうど、お昼にたくさんの食べたいものがあるとき、カツカレーで「食欲」を失ってしまって、実はパスタが食べたかったとき取り返しがつかない、と恐れているようなものです。

「時間があるのにやれない」というときには、時間がなくなってしまう状態が怖いのです。日頃から「時間欠乏」に悩まされている人にしてみれば、貴重な時間は貴重すぎて、使うことができません。

おいしいものが並んでいるとき、カツカレーで食欲を満たしてしまうことが怖いのと、少し似ているわけです。人はとにかく、失うことを恐れます。貴重なものであれば、当然です。貴重なうえに、豊富に手に入らないものなら、ますます失いたくありません。

やりたいことがたくさんあればあるほど、さらにその中にはたくさんのやるべきことが混ざっているとなると、「最もやるべきただ1つのこと」を選び抜くのはかなり難しいことです。

1つを選んで「実行してしまった」時、そのせいでたくさんの時間が費やされ、夕暮れになって、しかもあまり満足感が残らなかったら?

待ちに待ったゴールデンウィークがそんな風に失われてしまうと思えばゾッとするでしょう。

そんな、たくさんのやりたいことの中のたった1つしかできず、しかも不満足感を残して、翌朝からまた毎日のように会社生活だと思えばゾッとして当然です。

だから「選べない」のです。