#はじめて買ったCD

正直に言おう。
初めて買ったCDが何だったか、思い出せないのだ。
部屋にあるCDを眺めても、実家の押し入れを思い返しても、どうしてもわからない。
ちなみに、初めて買ってもらったCDは鮮明に覚えているが、確実に世代がバレるので書くのはちょっとやめておく。

もともと音楽が好きだったが、特に聴くようになったのは中学生の頃だと思う。
勉強のお供がラジオだった。
色んな国の、色んな音楽が、次々と流れてくる。
好むと好まざると関係なく毎日聴いていた。

高校生になると、通学時間に音楽を聴くようになった。その頃はまだサブスクサービスなんてないので、CDをレンタルして取り込んでいた。
この頃からCDは身近な存在すぎて、はじめて買ったCDにも思い入れがなくなってしまったのかもしれない。少し悔しい。

大学生になり、バンド音楽が好きになった。「流行っているからいい曲」が、「自分がいいと思うから好きな曲」に変わった。
バイト代でCDが買えるようになったので、好きなバンドの新譜が出るたびにタワレコに向かった。
届いたばかりのCDが店頭に並ぶ火曜日が、とにかく待ち遠しかった。
発売日よりも先に音源を手に入れて、家に帰ってから開封して歌詞カードを見ながら再生するのが、ワクワクしてたまらなかった。もちろん、1曲目から順に聴くのだ。

今ではCDを買うのは決まったバンドだけになった。
仕事帰りにタワレコに寄ることもできない。
でも変わったのは私だけじゃない。
たいていの曲はサブスクで配信されているし、
発売日よりも先に配信されることだってある。

新譜が出たあるとき、受け取りを宅配じゃなく店頭にした。
久しぶりに行ったその場所は、あの頃とはいろんなところが変わっていた。棚の配置、目立つ場所に展開されているアーティスト、ちょっとだけ知らない場所のような気がする。

それでも目に入ったのは、目当てのバンドの展開と、その前で音源を聞いている人だ。
火曜日じゃなかったけど、あの頃の気持ちはそのままで私はCDを手にした。

2024年4月
nolan