架空地図作者が自作架空国家に「プロ野球」を「創作」するなら。「野球史」を架空国家の歴史創作の一環として考察してみる試み

何やら珍妙不可思議なタイトルですが、筆者は結構クソ真面目に考えているお話です。
タイトルが冗長になるのも不親切なので省きましたが、「野球が国民的に親しまれていて盛んなスポーツとなっている」と言う前提はあるものの、「野球から見た近現代史」があってもいいじゃない。
実在する国家である日本ひとつを取っても、野球から見える歴史の一面は確かに存在します。今回は実在日本と、架空地図を描く舞台となる架空国家を照らし合わせつつ、ぼくの思考回路をいくらか開陳してみようと言う酔狂な話です。


そもそも架空の世界に「野球」と言うスポーツはあるのか? と言う最初にして最大の壁。

身も蓋もないことを言いますが、これが結構大事な思考なんです。

と言うのも、架空地図と言うのはタイプによっておおよそ3つに分かれます。名称は咄嗟の思い付きですが、パターンに関してはこの3つが大部分を占めるはずです。
1つ目は「現実改変型」。現実の地理情報を基に架空の改変を施していく創作で、日本を舞台にした架空鉄道(架空路線)を作るとなるとだいたいこのパターンになります。またこの手のパターンは架空戦記との相性がいいです。
2つ目は「現実付加型」。現実の地理情報に架空の島や大陸を作成して、その中で創作するものです。
3つ目は「完全架空型」。現実にある地球とは違う惑星から創作し、一から世界を作り上げるもの。

1つ目と2つ目は基本的に実在する地球を基にするため、プロ野球に絞って言えば「野球と言うスポーツが存在する」ことは断言出来ます。文化があるかどうかは歴史のifを許容・作成するかどうかで変わりますが、「実在する現代日本」をモデルにするのであれば、そこに変更の余地は少ないです。
しかし3つ目に関しては、完全架空故に設定は盛りたいようにに盛れます。ヒトと言う知的生命体がないかも知れないし、物理法則が地球とは違うかも知れない。根本からして設定を一から作らなければならないため、スポーツひとつを取っても野球に限らず様々なスポーツが「地球世界と同じようにあるとは限らない(保証出来ない)」のです。

が。
ただまあヒト以外の知的生命体や地球と違う物理法則を作ろうとするのは並大抵のことではないですし、あまりそこを改変しすぎると初見殺しになります。架空言語と言う趣味もありますし「地球と違う惑星(世界)なのであれば、実在する言語がその惑星にあるとは限らない(もしくは合致する確率は天文学的)」のは合理的な思考となりますが、実在する母国語以外の他言語ですらマスターしようとすると四苦八苦する受け手が多い中では、架空言語もまあそこそこ…………でしょう。リアリティは増すので、興味があればやったほうがいいとは思うんですけどね。
架空地図作者は育った国の地理と文化には強い影響を受けますので、恐らくは日本をモデルにしている架空地図・架空国家では特に「野球」の存在感はスポーツ界で無視出来ないはずです。あとスポーツとそのルールは案外新規作成するのが難しいので、スポーツの大まかな文化は実在するそれを流用したほうが楽だと思います。実際にぼくもそうしています。

架空世界にも野球が「ある」と仮定して、その源流、発展をどう設定するのかと言うお話。

この先は、架空世界にも野球が「あるもの」として考えます
そしてぼくの作成している架空地図・国家の「豊津国」でやろうとしている創作と言うのも示しておきます。ホームページのリンクは以下の通り。

以下「野球史」と一言で示しますが、野球史に関しては「その国で生まれたモノ」なのか、「外国から輸入されたモノ」なのかが最初の選択肢となります。
実在する日本と比較しながらになりますが、日本の野球史はみなさんご存知の通り後者からスタートします。そして豊津国でも、後者でスタートさせることを決めています。

明治時代に西洋からもたらされたスポーツは野球以外にも当然多々ありますが、日本人の性に合ったのか、野球はその後トップクラスの人気を獲得して発展しました。
その先導役になったのは学生野球で、日本野球の草創期はそのまま「大学野球の草創期」に当たります。野球熱はその後高校野球(当時は旧制中学校)や社会人企業に広がり、現在の高校野球「夏の甲子園」にあたる第1回全国中等学校野球大会は1915年に初開催。社会人を対象にした都市対抗野球大会は1927年に初開催されています。
プロ野球の源流は1920年の日本運動協会に始まり、1934年に今年で創立90周年を迎える読売ジャイアンツ(当時は「大日本東京野球クラブ」)が誕生。2年後の1936年に、現在の日本野球機構へと連なる日本初のプロ野球リーグ「日本職業野球連盟」が設立されます。
日本の野球史においてはその後スポット的に別団体のリーグが誕生し消滅しましたが、カテゴリとしては概ね「高校野球」「大学野球」「社会人野球」「プロ野球」の4つを軸に発展。21世紀に入ってからは四国アイランドリーグ(現・四国アイランドリーグplus)の誕生を皮切りに「独立リーグ」が定着し現在に至ります。

この5つのカテゴリの「人気度」を考えた場合、草創期からしばらくは大学野球が先行。同じアマチュアのカテゴリである高校と社会人も人気を博していくのに対し、プロ野球の草創期は「いい大人が野球に現を抜かすものではない」、「賤業」とみなされていました。
プロ野球が国民的な人気を得るのは1959年のいわゆる「天覧試合」から。1960年代以降はプロ野球が徐々に大学・社会人を超える人気を得て、現在でも「スポーツ」の接頭語が付かないマスコミのニュースでもプロ野球と高校野球は頻繁に扱われます。

ぼくの作成する「豊津国」に照らし合わせる場合、現段階では構想段階であるものの、流れとしてはある程度日本の野球史を参考にするでしょう。

ただ世界全体を見た時、例えば「社会人野球」と言うカテゴリが明確にあるのは日本の他には台湾のみ。日本国外の野球史についてはそこまで詳しくないですが、東アジアで日台とともに野球が盛んな韓国にそのカテゴリはないか、あっても影響はかなり小さいはずです。本場のアメリカもその概念はなく、代わりにマイナーリーグや独立リーグなどで大量の選手を抱える構造となっています。
そして北中米カリブ海や日韓台と比較すると野球がマイナースポーツである欧州諸国の場合、「プロ」の肩書きを名乗りたいのであればだいたいは渡米していたはず。欧州諸国にも野球リーグはありますが、試合数は日本のように週6試合はなく、あって半分程度。野球だけで収入は得られないので、基本的には兼業の選手が多いです。昨年のワールド・ベースボール・クラシックで日本とも対戦したチェコは代表選手の多くが野球以外の仕事を持ち、マスメディアに「二刀流」と形容されていたことを覚えている方も多いかと思います。

少し話が逸れましたが豊津国の場合、「プロ野球」はまず日本と同じ規模で発展していないと「創作する意味がない」くらいには思っているので、そこは確定。プロに関しては後述します。
問題はアマチュアと独立リーグの扱いですが、日本に関して言えば「独立リーグ誕生の経緯」は「社会人野球市場の縮小」と表裏一体なので、「最初から社会人野球と独立リーグが併存する」シナリオはあり得ない
その2つのカテゴリに選手を供給する高校・大学は日本と同規模の発展を想定していますが、特に高校に関しては架空国家の経済史や人口動態にも左右されるので、日本のそれを「パクって」も少なからず齟齬は生じるでしょうね。
社会人野球の創作は他にも問題があって、その特性故に「企業も大量に創作しなければならない」のがネックです。ただこれはチームを保有する企業を見ることで「架空国家の経済の一端を知ることが出来る」ので、やれるならやってみたいんですよね。

プロ野球の制度設計にも、様々な選択肢がある。「アメスポ型?」「欧州型?」

先に見出しの話を回収すると、プロスポーツリーグの運営方法は大きく分けてこの2つで分類出来るのではないかと思います。これが結構大事な話。

アメスポ型」とは、アメリカ合衆国の「4大スポーツ」と称されるアメリカンフットボール・バスケットボール・野球・アイスホッケーのプロリーグを指しました。言うなれば「寡占」で「戦力均衡に重きを置く」スタイルを取ります。
日本で言えばまさしく野球(日本野球機構)がそれで、リーグに加盟するチームは少数に絞ります。別の言い方をすれば「カルテルを組んでいる」状態ですが、その中で各チームの実力は均されるように運営されます。戦力均衡の目的のために選手の獲得は基本的に「ドラフト」の形式を取り、原則自由獲得は出来ません

一方で「欧州型」は、日本で言えばサッカーJリーグがそれ。自由な競争原理に基づきチームは自由に設立させることが可能で、参加チームが多い場合は1部・2部……と階層分けを行います。戦力均衡の概念がないので、選手は実力によってチームの自由獲得に応じます。

「どちらがいいか」と言われればそれは創作者の思想にも因るんですが、野球に関しては日本人にとって馴染みがあるのは「アメスポ型」でしょう。と言うか創作においては、「欧州型」を採用するとチーム作成数だけでも際限がなくなってしまうので…………。

日本プロ野球の場合、現行は日本野球機構だと2リーグ12球団制。二軍では今季から2球団が新規参入し2リーグ14球団制となっていますが、下部リーグを合わせても一軍・二軍の2階層のみが存在しています。
これがアメリカメジャーリーグだと2リーグ×3地区の30球団制で、下部にあたるマイナーリーグも5階層(最下層は「六軍」とも言える)あります。
日米に次ぐ規模を誇る韓国と台湾はそれぞれ1リーグ制で、加盟球団は韓国が10球団、台湾が6球団となります。
この日米韓台を軸に話を進めた場合、アメリカだけが2リーグ制確立移行、消滅した球団はありません。日本は1950年の2リーグ分立からの数年は13球団以上ありましたが、1950年代後半からは12球団を維持。韓国はいくらかの増減を繰り返しつつ、近年は増加傾向。台湾は一時期2リーグ制を採っていましたが片方のリーグが消滅、1リーグ4球団まで減少していた時期もあります。

ぼくの現在の構想段階においては、「豊津国」の人口が日本の1.5倍ほどになりそうなのもあって「メジャーリーグを模倣する」方向になるでしょう。
ぼくはやれるなら選手やその成績も作成したいと思うタチですが、さすがにマイナーリーグまではやれない。ただせめて24球団は創作したいな、とは思っています。選手獲得の手段であるドラフトや移籍等の様々な制度も、日本のそれは馴染みがあるからやりやすいけど(あとは「パワプロ」シリーズで日本プロ野球の制度に準拠して別の創作をしているのもある)、せっかく違う世界・国でやるのだから違う制度でやってみたいと言うのもあるんですよね。
周辺国家もいくらか形を作ると思いますが、それに関しては韓国や台湾の野球史をモデルにするでしょう。あとぼくの架空世界では「現実の地球世界よりは野球が普及している」世界線を構想しているので、設定を詰めていくにつれて野球界のほうでも動きは色々変わりますね。
ついでに言うと、独立リーグも日本をモデルにするなら作成はします。ただ独立リーグに関しては「作成したい」だけで、現時点では何も決まっていません。

ちなみにスポーツ・プロリーグに関しては、ぼくは大相撲も好きなので「架空国家の大相撲」もやってみたい。と言うか目途が付いたらやると思います。
こちらはこちらで思考実験も面白いですが、これについては恐らく開陳するにしてもnote以外でしょうね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?