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読書家をサポートする人工知能APIのマッシュアップShapeOfStories

 昨日は、「人工知能が変える仕事の未来」の第8章「新サービスの開発が始まる」で語ったことが現在もまだまだ通用することを示唆しました。桁外れの事業スピードのデジタルエコノミーを支える企業間API接続を実現し、その調停にAIを活用するためには、もっと多くの人が人工知能APIを使いこなしていく必要があります。

  本書を2016年秋に脱稿した直後にメタデータ賞を受賞した面白いマッシュアップ作品があります。やはり感情解析APIでテキストから感情を抽出した「ShapeOfStories」です。APIの出力は、3つの軸、楽しい/悲しい、怒り/怖れ、好き/嫌いの度合、プラスマイナス各3段階です。これを、長いテキストの先頭から末尾までグラフ描画したというシンプルなアプリですが、対象テキストがなんと小説!

このグラフは、宮沢賢治の「注文の多い料理店」です。途中からだんだん真ん中の赤っぽい恐怖が芽生え、ふくらみ、ややしぼみつつも最後まで残っている。でも結末では、好感や哀しみも大きくなり、なかなか名作らしい読後感を出しているようなことが一目で読み取れます。

 API提供社としては驚きました。主にマーケティング目的で、SNSやアンケート自由回答、お客様の声VoC、パブリックコメントなどを対象に想定していました。文学作品に応用されるなどとは予想もしていませんでした。少し考えてみると、こんな活用事例が思いつきます:

・ハーレクインロマンスなどを通勤電車内で読むのに、同じカテゴリ、主題の作品(教師と生徒とか)でも、淡々と進行して最後に劇的展開がある作品よりも、ほぼ30分間に1度、感情的なクライマックスのくる作品を、一目、ShapeOfStoriesのグラフを見て選ぶ。

 優れた道具とは、独り歩きして、その道具を生み出した者が想定した以上の使い途に供されるもの。これが事実なら、感情解析APIも優れた道具の仲間入り出来たことになるのやもしれません。授賞に際しての講評は、字数制限の関係で短かったですが、こうでした:

"これまでも時系列でツイート等を分析する利用法はありましたが、1つのコンテンツ(物語)の感情の流れを可視化する、というアイデアが新しく、また出力画面の表示も工夫されていました"

 文学作品、書籍に応用してくださった作品ですので、副賞は、「人工知能が変える仕事の未来」と、電子書籍リーダーkindle fireとしました。読書家を静かにさりげなくサポートするAI応用。一見地味ながら秀逸な着眼だと思います。

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