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美しき世界…



『天間荘の三姉妹』



公開二日目に、地元のシアターで観た。
とても暖かく心が満たされる映画だった。



輝く海に沿って走る一台のタクシー

虚ろな目で海を眺める女の子…は『ホットロード』の和季みたい…


小川たまえ(のん)


助手席に座る少し妖しげな女性、イズコ(柴咲コウ)から、たまえは交通事故で臨死状態にある…ことを告げられる。


生きてますけど…


ここは、地上世界ではなかった…

天界と地上の間にある世界


三ツ瀬


天然で明るくて、前向きなたまえだが…、地上ではちがったようだ

あの…東京では、地味で暗くて、向上心も協調性も、存在感も個性も華もない、何かパッとしない子…

に、似てやしないか…?

タクシーが坂を登って到着したのは『天間荘』という老舗旅館。

海の眺望が素晴らしい。

たまえを迎える和服姿の若女将の天間のぞみ(大島優子)と妹の天間かなえ(門脇麦)

たまえは腹違いの末娘だ。




のぞみ、かなえの母親で、女将の恵子(寺島しのぶ)は、たまえを歓迎しない。

ことあるごとに、逃げた旦那の清志(永瀬正敏)への腹いせに、たまえにあたり散らす。

小姑の径子に、ガミガミ言われるすずさんを思い出してしまう…

のんちゃん、いや、たまえが
かわいそう…と、思ったが…

たまえにとって、そんな仕打ちよりも、天間荘へ来てから、人々と親しく接する日々は、楽しくて充実したものだった。

孤独でつまらなかった地上よりも、「ここに居たい」と言い出すたまえ。

(オラ、地上に帰りたくねえ)




たまえにとって、この旅は
ある意味では残酷だと思った。

まだ命あるたまえに、地上に戻らない選択をさせてしまうかもしれないから…

だが、三ツ瀬は長く居続けられる場所ではなかった。


突然の三ツ瀬との別れ


しかしそれは、悲しい別れではなく
明るい希望に満ちた別れだった


イズコは、初めから信じていたのではないか?

たまえと三ツ瀬の人々が、熱い希望を共有することを…

ミッションを託せるスーパーヒーローであることを…





もはや地上にはいない人々と、希望を共有するなんて…

考えたこともなかった、世界観の壮大さ
人間愛の深さに、思わず涙が…



安らかに天界に向かう光の群…



映画の冒頭に「津波の映像が流れる」との注意が表示されるとおり、東日本大震災が背景にある…


これは、あの『あまちゃん』では表現されなかった世界だ。



生きたくても生きられなかった人々が暮らす、儚くて美しき世界


儚いが、旅人を強く生きる希望に目覚めさせてくれる美しき世界


この物語からは、熱くて大きな希望をもらった気がする。


三ツ瀬、天間荘

ありがとう…





(敬称は略させていただきました。)

※ 『美しき世界』は、テーマ曲
     Beautiful Worldより

Beautiful World
· Koji Tamaki feat. Ayaka