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#14 あるべきカタチを考える。酒呑の、酒呑による、酒呑のためのプロダクトデザイン

このnoteは「to savor alcohol more(より深くお酒を味わうために)」をスローガンに活動するガレージブランド NON JOHN の活動やお酒に関するあれこれを発信するものです。このnoteを読んで、粋な酒客を共に目指しましょう。

ウェブサイト: non-john.com



このnoteも14回目を迎えました。最初は一桁台だったアクセス数も、いまでは1記事当たり数十件になっています。加えて先日は「今、このnoteが面白い」「お酒 記事まとめ」にもピックアップいただき多くの読者に閲覧いただく機会もありました。

細々とやっていければいいかなと思ってましたが、閲覧いただける数が増えると思っていた以上に嬉しく、モチベーションが高まります。

私も基本サイレント読者だったのであまり人に言えたものではないのですがあえて言わせてください。

面白かったらスキとフォローしていただけると励みになります🥺


🧑‍🎨 あるべきカタチを考える。
酒呑の、酒呑による、酒呑のためのプロダクトデザイン


今回は製作面の話で、NON JOHNのプロダクトデザインについて書いてみようと思います。

👤 誰がデザインしているの?

筆者です。NON JOHNはデザインを内製しております。
独学(といってもいまはネットで多くを学べます)でillustrator, photoshop, 3D CADを学んできました。

初期スケッチ


✁ 3Dプリンターで造形が自由に、そして手軽に

NON JOHNでは鋳型の元となる「原型」を3Dプリンターで作っています。

3Dプリンターが安くなり、認知が広がってきたのが、2010年代前半くらいだった記憶です。それでも当時は何十万円もした気がします。これが安いものだと数万円で買えるようになったのが2020年あたり。いまやネット通販で多くの人が扱える”家電”になりました。

3Dプリンターはこれまで手仕事では難易度の高い造形を容易く具現化してくれます。左右非対称、流線形、角丸、NON JOHNのプロダクトの形はこの恩恵に大いにあずかっています。


🍵 Simple is the best.

NON JOHNでのものづくりは、機能性を重視したデザインを志向しています。いかにすればお酒をおいしく呑めるのか、いかにすれば粋な酒客に合う器になるのかを考えます。

「機能を増やすには技術がいるが、機能を減らすには哲学がいる」

これはプロダクトデザイナーの秋田道夫さんの言葉で、私の好きな言葉のひとつです。色々なアイデアが出ますが、良さそうと思ったアイデアを切り捨てる覚悟も必要。

どうあってほしいのかをカタチにするために、一番大切なものを、明確にして、中心に据える。それがNON JOHNの酒器では「より味わいを深める」ということになります。

🥎 制約がモノをあるべき姿にする

とはいえ、出てきたカタチがそのまま使えるわけではありません。

  • 手に触れたときの具合

  • 器としての飲みやすさ

  • 製造のしやすさ

  • コスト

などの制約や経済的合理性に初期デザインを寄せる作業が必要になってきます。こうして試作を繰り返すわけですが、当初のデザインに妥協を含めたにも関わらず最終的な形は不思議と「これだ」というものになることが多いです。

今後出す予定の試作品の没作。のモザイク画


デザインや技術検討はだいたいお酒を呑みながらやっています。お酒によってインスピレーションを得、お酒を呑むために放たれるNON JOHNの酒器。まだまだ模索と試行錯誤の只中ですが、引き続きみなさんに手に取っていただけるよう精進したいと思いますので、どうかご愛顧ください。


🍺 肴のオマケ:歴史の始まりはビールの中に。ビールが醸した古代文明


以前のnoteで、人類は農耕を始めてお酒づくりの技術を発展させた、と書いたのですが、別の本を読んでいたら、

人はお酒を呑むために農耕を始めたのではないか

という説を見つけました。狩猟生活から農耕生活に変わったのはお酒が欲しかった(儀式用や飲用で)からという一因もあるのではということ。

農耕を発展させるためには水源と治水が必要になってきます。治水工事は多くの労働力を要するので、集団をまとめるリーダーが必要です。リーダーは「長」となり村ができ、村の競争で都市ができ、ザ・長 オブ 長の「王」が生まれて国ができ、そこに文明社会が誕生しました。

その一つが四大文明に数えられるメソポタミア文明。
そしてその地はビールが「発見」された場所でした。


🕛 その時歴史が動き出す。人類、ビール発見

メソ=川
ポタミア=間 

ということでチグリス川とユーフラテス川に挟まれた場所がメソポタミア。ここは氷河期が終わった後、麦の生い茂る穀倉地帯でした。

ここで麦を食べ始めたホモサピエンスですが、そのままでは硬いので器に入れて水に浸して火にかけると美味しいことに気が付きました。麦のお粥です。

豊作で食べきれないほどのお粥を作ったのでしょう。お粥をしばらく置いておいたら発酵してアルコール飲料となっていました。これがビールの発見だと考えられています。


🌞 ビールは万能!メソポタミアのビールな日々

ビールの発見から、自在にビールを作りだすための努力がなされたことは想像に難くありません。量産化に成功した彼らの文明社会にビールが隅々までそそぎ込まれていきます。


💧 安心安全な水分として

狩猟生活では拠点を転々とするので問題になりませんでしたが、定住しはじめると問題になってくるのが水の衛生面です。水源に生活排水が流れ込んできます。
生水を飲むと健康を害することに気が付いたメソポタミアの民は「お水がないならビールを飲めばいいじゃない」とビールを飲むことにします。
ビールは加熱消毒&アルコール消毒がされているので水に比べてだいぶ安全なのです。子供から大人からビールを飲んでいたのがわかっています。麦と酵母の栄養も摂取できて一石二鳥でした。

💰 労働の対価として
労働の対価としてもビールが用いられました。労働階級は約1リットルのビールが、上に行くほど多くのビールがもらえました。ビールは小分けにできるから都合がいい。重いのが難点。
ビール文化はお隣の古代エジプト文明にも導入され、ピラミッド建設労働の報酬がビールだったのは有名な話です。

💊  薬として
古代、お酒がもたらすトランス状態は神性と結びついていました。今でこそ「酔い」と規定されていますが、知らなかったら摩訶不思議・超越的な何かに触れている気持ちになるでしょう。
いまでもお祭りでお神酒が奉納されたりするように、古来からお酒は神性を持つものでした。その力にあやかるためか、メソポタミアの民は鎮静剤として飲んだり、陣痛を抑えるためにビールをお腹に塗ったりするなど薬として使っていたことがわかっています。

💕 コミュニケーション手段として
メソポタミアに栄えた古代バビロニア。ハンムラビ王が定めたハンムラビ法典にはビールにまつわるルールが多く書かれています。居酒屋もあり、人々はそこに集いビールを飲んで楽しんでいたようです。いまと変わりませんね。違うのはストローでビールを飲んでいた点です。

ストローでビールのんじょん

もともとは浮いてくる殻やゴミを避けるためにストローを使っていたそうですが、ビール醸造技術が発展してその必要がなくなった後も、分け合ったり共有することができるので親愛の証としてストローでビールを飲んでいた模様。その気持ちは現代のピッチャーやお酌に引き継がれています。

💭 酒は人を作った、人は酒を作った。

以前のnoteでもご紹介したヴィクトル・ユーゴーの言葉です。

文頭の仮説「人はお酒を呑むために農耕を始めた」を採用するなら、ビールなくして文明は生まれなかったと言えるでしょう。まさにユーゴーの言葉の通り。
ということは、今や火星に行かんとする高度な文明の最初のきっかけは、酵母が生み出す副産物を得るためだったということになり、ビールをはじめとするお酒の影響力の大きさを感じずにはいられません。

Focus on things that don’t change.
変わらないものを軸に戦略を立てよ

Amazon創業者 ジェフベゾス

知るほどにお酒と人の結びつきは強く、昨今お酒への忌避が話題になったりしますが、程度はあれど人類社会が続く限りお酒がなくなることはないのではと思います。健全な飲み方が必要なだけで。

お酒についてより知り楽しむことで、新たな閃きが生まれることを期待しながら、今宵もお酒のグラスを傾けます。

それではみなさんよい連休を。
(来週はお休みします)


📅 今後の予定


5月
5/11にいよいよMakuakeのリターンの出荷を開始します。
Nitoryu/rocksの販売を開始します。
キャスティングオブザイヤー(鋳造の賞レース)にエントリーします。


🍺 🍺 🍺


ここまでお読みいただきありがとうございました!
ご意見・ご要望がありましたら以下からお寄せください。NON JOHNは褒められて伸びる特性ですので、できるだけポジティブな内容で、ご批判や誤りの訂正等がありましたら優しい口調でお願いします!

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