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「500頁の夢の束」京アニ事件に思う事

7月18日。
毎年この日は、京アニのファンアートを描くことにしています。私なりの追悼です。

京都アニメーションといえば日本のお家芸、ジャパニメーションの最高峰というべき制作会社。その多くのスタッフが亡くなられたのは残念でなりません。有名なクリエイターの方々も然ることながら、学校を出たばかりの若い方々が志半ばに生涯を閉じたという話には胸を打たれます。幼いころからの努力の末、やっと夢の入り口に立ったというのに。
 
 知人のご子息の話になりますが、イラストレーターを目指していた若者がおりました。現役で有名美大に合格し通学していましたが、大学4年の、ちょうど今頃の季節に自殺を図り、この世を去りました。大きくは進路に悲観して、失恋の痛手もあったという事で、将来を楽しみにしていたご両親の落胆ぶりは大きく、どう声をかけて良いのやら周りが苦悩する有様でした。若いのだから道はいくらでもあったろうに。
 
 生前、彼が一冊の画集を出版していたことを思い出しました。お祖母さんに頼み込んで100万ほど融通してもらったとか。同人誌ならともかく自費出版とは、最近の若い人はヤル事が違うなぁと当時は考えておりましたが、出版元を調べてみると、彼がどんな酷い目に遭ったのか合点がいきました。
 
 出版元は碧天舎。いわゆる「自費出版ビジネス」の被害に遭ったのです。
 
碧天舎のやらかした自費出版ビジネスとは、
・一般公募のコンテストを開催。
・入賞者の作品は出版の確約。
・しかし目的は落選の人たち。
「惜しくも次点でしたが作品には価値があります。制作費を肩代わりしていただければ弊社の出版物として書店で販売いたします。」
・かくして自費出版の顧客を獲得する。
 
 こんなことを社会経験の乏しい学生がされたら、天にも昇る気持ちで飛びついてしまうでしょう。実質の被害者は懐に余裕のある年配の方々が多かったようですが、落胆は若者のほうが大きかったに違いないです。
 
 そして問題はその先にありました。碧天舎の破綻によって問題が露呈、出版物は差し押さえ、費用を投じながらも出版の白紙撤回。そして提出していた原稿が手元に戻らない、という憂き目に遭ったのです。苦心の末に結実させた成果物が、すべて水泡に帰してしまった。
 
 碧天舎の不始末は、経済的損失に限ったものではなかったのです。

 京アニ事件の発端は、京アニが催した原作小説の公募だと聞きます。犯人は自筆原稿をコンテスト作品として送りつけたようですが、コンテストの要綱は電子文書に限定されていました。恐らくは沢山の応募があったのでしょう。要綱にそぐわない作品は、目を通されることはなかったと思います。
 しかしながら自筆原稿です。そのまま倉庫にしまわれたらどうにもならない。せめて返却か、受け取り拒否で返送することは出来なかったのか。今更ではあるのですが、そうすればもう少し違った結果になったのではないかと、そんな風に思えてならないのです。
 
「500頁の夢の束」という映画をご存じでしょうか?発達障がいの女性が、配給会社の公募した「スタートレックの脚本」を提出すべく自力でハリウッドへ向かうロードムービー。クライマックスで彼女がありったけの勇気を振り絞って訴えるシーンが胸を打ちます。
 
どんなに苦労したかわかる?
考えて組み立てて、読み手のために書き直して夜も昼も考え続けたの。
正しい言葉、最適なセリフを探して。
伝えたい物語があるから!

私が誰だか知ってる?!

 奇しくも昨日、7月17日は「第3回日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト(さなコン3)」一次審査結果の発表がありました。惜しくも選外となった作品にもスポットを当て、丁寧に講評している姿勢には頭の下がる思いがします。

 私の作品は…選考通過しちゃったので、もうちょっと後で講評していただけるみたいです(笑)

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