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「ENDING STORY」制作ノート

 年度末が近いせいか、あちこちで漫画のコンテストが開催されています。ひとつ試しに「Groval comic award 2024」という国際コンテストに応募してみました。

「お終いの物語」は元々、日本SF作家クラブ主催の「第2回 小さなマンガコンテスト」に応募した作品でした(残念ながら入選は果たせませんでしたが)。さなコン2は画像生成AIの使用が認められていた、当時は珍しいコンテストでもあったので、この作品はエントリー作品の中で特に画力に注力して制作にあたりました。
 当時の制作メモを読み返してみると、プロットから最終稿までに実に4回も推敲を繰り返した力作でしたが、実は2つほど「やらかし」をしてしまったのです。

 ひとつは台詞を英語にしてしまったこと。外国映画を観ているような演出を狙ったのですが、これが運営には受けなかった様子で「第3回 小さな小説コンテスト」から外国語禁止のレギュレーションが明記されるようになってしまいました。でも英語にしておいたおかげで「Groval comic award」に出してみようか?という気になったのですが。

 もうひとつは…露出度の高い少女を描いてしまったことです。

実はとても気に入っていて、PCの壁紙に使っています(笑

 プロットでは「天使と思しき少年」と老婆の会話劇としていましたが、客寄せもあって裸の美少女に改変していました。コンテストでは全年齢対象という規定があったので、胸は見せずに尻をチョイ見せ程度に抑えることにしました。Pixivでは乳首の描写に関しては厳しい規制が設けられていますが(ニプレスと言い張ってもR-18認定を受けたことがあります)、尻ならある程度は許容されるという解釈でのアイデアだったのですが…
 問題はプライベートゾーンではなく、年齢と写実的表現にあったのです。

 日本における児童ポルノに関する規定は、マンガなどの二次元創作物であれば片目を瞑る、というのが慣例となっています。実写は問答無用でバッサリ処罰される中、手描きのソレは写実的表現と抽象的表現との間に明確な線引きが定義されていません。かつて少女ヌード写真を基に写実的なイラストを描いていたイラストレーターが訴えられましたが、これも「写真をトレース」が有罪の証拠となりました。
 対して海外での規制はもっと厳格なもので、こうした日本の規制に対して否定的な目を向けています。

 米国で90年代に人気を博した、トレーシー・ローズというポルノ女優がおりますが、彼女が年齢を偽って17歳で出演したビデオの存在が明るみになり大問題に発展しました。現在、該当作品は発禁となり入手することはできません。海外では胸や性器の露出度ではなく「年齢」に明確な線引きが存在するのです。
 旧Twitter「X」の代替として注目される「Bluesky」でも、水着のイラストをUPしただけでアカウント凍結になったという騒ぎがありました。おそらくは肌の露出云々ではなくキャラクターが幼い少女に見えたことが問題視されたのだと思います。

 そんな訳で、苦心の末に仕上げた作品は惨々な結果と相成ったのです。可愛らしい少女の裸が、作品そのものを台無しにしてしまいました。こうして忘却の彼方へ埋もれるはずだった作品でしたが、今回の5回目の改変を経て再び発表に至ります。少女の姿を小鳥に変えて。「猫」に変えたアイデアも描いてみましたが、どこか納まりが悪くて没にしていました。しかし鳥ならば、(バードウォッチャーということもあり)資料も豊富で著作権の心配なく作業を進められたのです。

人懐こいハクセキレイは、初心者の撮影練習にはもってこいの対象でした。
トレースではなくスケッチからのクリンナップで彩色しています。

 作品の締め「こうして人類は永遠の眠りについた」は「さなコン2」でのお題でしたが、当時はどう考えても人類滅亡のシナリオしかアイデアが浮かばず悩みどころでした。でもキャラクターを「鳥」にしたおかげで、「人類」という表現がすとんと嵌るようになって「滅亡」まで示唆する必要が無くなったのです。これは意外な発見でした。

 こうやって改めて旧作を見直すのも、新たな発見と発想の萌芽があって楽しさを感じます。そういえば海外のユーザーから、こんなコメントを頂戴しました。「これは瞬間の出来事なのかな、」と。
 時間軸は考えてなかったな。また表現の新しい切り口が、見えてきた気がします。

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