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アメリカまでヨットで行きますか? それともChatGPTを使い倒しますか?

 自動車があれば、1日でさまざまな用事を済ませることができる。
 飛行機があれば、何から何まで物珍しく、見るものすべてが目新しい異国の地におもむくことができる。

 先人たちの知恵を結晶させたテクノロジーで作られた移動手段を使うことで、私たちの生活は、より良い状態を保ちやすくなる。

 一方で、自動車や飛行機があっても、あえて自転車で、あえて徒歩で…という選択も、私たちの生活を豊かにすることがある。

 「太平洋ひとりぼっち」の堀江謙一が、ヨットを操ってアメリカに行ったときの体験を想像してみよう。

 波、風、太陽の光、突然の風雨、近くを行き過ぎる巨大なクジラ、マストで羽を休める渡り鳥、降り注ぐように輝く空いっぱいの星々。

 94日間にわたってちっぽけなヨットに身をゆだね、太平洋をひとりぼっちで旅した23歳の青年の胸裏にどんな思いが去来していたのか。

 これはこれで、きわめて貴重な体験である。

 だからと言って、夏休みに家族旅行をするのにヨットで太平洋をわたる必要はないし、ビジネスマンが商談をするためにわざわざ時間のかかる船便を使う必要もない。

 福沢諭吉やジョン万次郎の時代、アメリカに行くためには船を使うしかなかったわけだが、21世紀の今日、移動手段として飛行機を使う人が圧倒的に多いことには理由がある。

 ポストイットや模造紙を使ってブレインストーミングをおこない、鉛筆をなめなめ原稿用紙に向き合い、時間をかけて文章を書くことには意味がある。

 ただ、チャット GPTの助けを借り、対話的に向き合いながら文章をつくっていくと、はるかに短い時間で良い文章を仕上げることが可能だ。

 生成系AIが出現した今、常に0から言葉を紡ぎ出そうとするのは、自動車を使えば1時間で行けるのに、わざわざ歩いていくようなものかもしれない。

 歩くという選択肢を捨てる必要はないし、歩くという営為に尊さがあることは否定しないが、少なくともそれと同じ絶対値だけ、自動車で移動すること、飛行機で移動することに「イエス!」と言うべきだろう。



           未

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