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【詩】わたしはまだ知らない

薬局で食器洗い洗剤をえらぶ
半透明のみどりやピンクの粘り気のある液体の中に
彼女を視る。
見た、気がした。
午後8時すぎ
タバコの煙が煙突からの白煙に変わった瞬間を
わたしは知らない
それ、で。
幻視する
あの人が手掴みで撒かれた土から

これからくるながい午睡
生きているという非常事態に時折ぶつかる
ぶつかってしまう。ぶつかれる?
その祝福が重い。
「くが?」
パンを差し出した手から緑が溢れる
わたし達は常に一つの輪の中で回り続けている
に、すぎない。
たぶん

薬局の棚、から
選ばれた液体が買われ/選んだ液体を使う
皿を洗う頃、幻視は消えている。それ、
でも。無くなっていない
何か
いつでも違う何かの違和感を
何兆分の一失った末に人類は気付く。

もうここにはいないというその人の
さい後の。匂いを
色を
その温度を

わたしはまだ知らない

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