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正しい字体と正しい性愛

オンライン授業が始まることになった5月。休校中の課題を配信するために4月初旬につくったGoogleサイトの特設HPをコピーして非常勤の複数の大学の共通課題としてアップしました。8本の動画と1本の論文を提示し、それぞれGoogleフォームで回収した感想をスプレッドシートに書き出して特設HPで共有するという方法です。

8本の動画は、「学校システムを告訴する」・「小学校1年生のSNSデビュー」「YouTube大学・芥川龍之介『羅生門』編」など、教育関連のものが中心ですが、新海誠の短編アニメ「彼女と彼女の猫」のようなコンテンツも混ぜてあります。

その中に、高校生がつくった傑作動画「漢字テストのふしぎ」があるのですが、想像以上に学生の感想が保守的で、少し意地悪に言えば「頑迷」ですらあることに驚いています。

手書きの字体は手書きであるがゆえに多様性があり、漢字の字体の歴史をさかのぼれば、優れた書家たちが書いた多様で多彩な字体がそれぞれに固有の輝きを放って乱舞しています。

文部科学省や漢字検定協会をはじめ、関係各所に取材して製作された「漢字テストのふしぎ」を見ることでわかるのは、手書きの字体は多様であっていいという平明な見識です。常用漢字表の前書きを見ても、そのことは明らかなのですが、学生たちの多くは異口同音に「正しい字体を教えるべき」「基準を明確にすべき」と主張します。

一方で、同じ特設サイトにアップしてある「コロンビアのボゴタでバーチャルプライドを祝う」に対しては、ほぼすべての学生が「LGBTに対する理解を広げるべき」とか「性の多様性を尊重すべき」と主張しています。

「標準的な字体」とか「正しい字体」という考え方は、「標準的な性愛」とか「正しい婚姻」といったイデオロギーと地続きであるはずなのですが、そのことに気づくのは案外むずかしいことなのかもしれません。


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