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【N=1に強烈にぶっ刺す】専門用語ゼロで伝えたい、マーケティングの基礎と本質

マーケティングとは何だろうか?
検索すれば教科書的な情報はいくらでも手に入るけれど、そこに書かれているのはただのアウトラインで、何が本当に大切なのかは分かりにくい。マーケティングという概念を実際に仕事に活かす上で何が大切なのか、そんなことを意識して自分なりに、やさしく説明してみたい。

マーケティング=お客さんの支持を集めるための企業活動

マーケティングを一言でいうと、「お客さんの支持を集めるための企業活動」ということになる。一般的にイメージされる宣伝広告だけでなく、開発も、営業も、サポートセンターも、お客さんの支持を得るためにやるのならば、それはマーケティング活動に含まれる。

だから、実際にはマーケティングをしていない会社なんか存在しない。マーケティングという言葉を使うか使わないか、意識的か無意識かの違いであって、全ての企業が何かしらのマーケティング活動をしている。

しかし、わざわざ「マーケティング」という言葉を使う時、それは戦略的にお客さんを増やすための特別な取り組みやノウハウを指すことが多い。現代においては何となく、当てずっぽうでマーケティングをしているだけではなかなかお客さんに支持されないので、再現可能なノウハウとして蓄積していこう、というわけだ。

「モノ余り」の時代はお客さんの奪い合い

マーケティングの重要性について、テレビを例にして考えてみよう。
その昔、初めてカラーテレビが発売された時は、店頭に並べたそばから飛ぶように売れたという。この頃は商品よりもお客さんの方が多い、「客余り」の時代だった。
しかし、現代ではどうだろう。新しいテレビが出てもさほど話題にならないし、お客さんが群がることもない。テレビを買いたい人の数よりもテレビの方が多くなっている「モノ余り」の時代になったからだ。

テレビに限らず、現代においてはほとんどの欲求が満たされ、あらゆる分野で「モノ余り」が起きている。お腹が空いた時も、椅子を買いたい時も、英語を学びたい時も、選択肢は山ほどあって、買う側に選択権がある。
これは企業からすると困った話で、新たに何かを売ろうとする時は、既に存在している先駆者やライバルとの戦いが避けられないだからこそ、お客さんに自社の商品を選んでもらうための特別な工夫が必要になる。
これが、わざわざマーケティングに力をいれる理由である。

一人のお客さんに強烈にぶっ刺そう

1対1の対人接客とは違い、マーケティングは一度に多人数を相手にするところがとても難しい。多人数にいっぺんに好かれようと八方美人的な企画をしてしまうのはマーケティングあるあるなのだが、これをやってしまうととにかく上手くいかない。

特にTVCMなんて一度に何百万人も視聴するのだから、誰を相手にしているのかわからなくなりがちだ。皆さんもきっと「私たちは挑戦を続けます」とか「お客様に寄り添ったサービスを届けます」とか、(もちろんそれなりの制作意図はあるだろうが)誰でも言えそうな抽象的な宣言をするだけのTVCMを見たことがあるだろう。誰もが知る大企業ですら何億円もかけてそんな感じになってしまうのだから、マーケティングは難しい。

マーケティングでは「一人のお客さんの心理を掘り下げて、強烈にぶっ刺さる商品やメッセージを開発すること」が常道とされている。一人に強くぶっ刺さすことができれば、同じ悩みや欲求を持つ不特定多数の心も動かせるだろう、という考え方だ。

よくあるマーケティングの説明として「商品が売れる仕組みづくり」というものがあるが、これは誤解を招きやすいところがある。「よーし、仕組みを作るぞ!」というマインドでは、一人の気持ちを掘り下げる発想になりにくいからだ。「強烈にぶっ刺さる何か」があって初めて、それをたくさんの人に効率的に届ける方法を考えられる。

マーケティングはシンプルだが、実行するのは難しい

ここまでで何となくマーケティングの大切なことは伝わっただろうか。
しかし言うは易しで、お客さんに何かを強烈にぶっ刺すのは簡単なことではない。実際のマーケティングは世間のイメージ通り、複雑高度な専門知識が必要になることもまた事実だ。

ではなぜ、こんなにシンプルなことを実現するのが難しいのか、いくつか理由を説明したい。

まずはじめに、人は自分の望みをうまく言葉にできないからだ。
誰かが「水が欲しい」というとき、それは薬を飲みたいのかもしれないし、手を洗いたいのかもしれない。薬を飲みたいおばあちゃんにキンキンに冷えた水を渡してしまったら、それはミスマッチだ。言葉の裏にある本音を的確に汲みとるためには、専門的な分析手法や思考の訓練が必要になるのだ。

もう一つは、ライバルもマーケティングに必死だからだ。
今の時代、よほど画期的な新商品でない限り、ライバル企業も自社と同じようにお客さんへのヒアリングを重ね、改善の努力を積み重ねていることが競争の前提になる。だからあなたが1日で思いつくようなことは、とっくの昔にライバルも思い付いていると考えた方が良い。

最後に、情報を届ける手段、つまり広告手法が発達しすぎているからだ。特にWEB広告が主流になってからは配信メニューが無数に増え続けており、それぞれが複雑なアルゴリズムで運用されているため、素人では効果を出すのが難しくなってきた。そのためデジタルマーケティングの世界では、あんまりマーケティングのことを理解していないけど、WEB広告の運用だけは超得意という、「マーケティングできないマーケター」が普通にたくさんいる。

ぐるぐるぐるぐる、泥臭く悩もう

雑誌やWEBニュースで取り上げられるようなマーケティングの成功事例は、スパッと鮮やかな戦略が炸裂したような印象を受けるが、実際はそんなことはない。成功を収めてから一本のロジックでカッコよく回想しているだけで、実施前にはあーだこーだ言いながらぐるぐる悩んでいる

教科書的には先にターゲットを決めて、それからポジショニングを決めて、訴求メッセージを決めて、と説明しているものもあるが、そんな風に直線的に戦略を立てられるのなら誰も苦労しない。誰に届けるか、何を伝えるか、どうやって伝えるか無数の選択肢が浮かぶ中でぐるぐるぐるぐる、泥臭く悩むのがマーケティングの醍醐味だ

さて、これを読んで「マーケティングって楽しそう!」と思っただろうか、それとも「面倒だな、大変だな」と思っただろうか。
奥深きマーケティングの世界にようこそ、一緒に脳汗かいていこう。


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