年末年始の日記
どんな言葉から書きはじめようか、少し迷いながらパソコンに向かっています。
実家で過ごした数日間は、穏やかで、あたたかくて、しあわせなひとときでした。そんな数日間の思い出を書き残しておきたい気持ち。
実家から遠く離れた場所で起きたことでも、他人事とは思えなくて、かといって何を語ればいいのかわからない気持ち。
そんな二つの気持ちのあいだを揺れています。
両方のきもちを一つの記事にするのは、少し乱暴かもしれないとも思うのですが、今感じていることをそのまま言葉にしてみようと思います。
ここ数日、私は北野武さんの言葉を思い返していました。
津波警報が出た今回の地震で、東日本大震災のことを思い出した人も多かったのではないかと思います。
私もそのひとりでした。
ここ数日間に目にするニュースでも、犠牲者の数が見出しになっていますが、北野さんの言葉を思い出しながら、その数字の裏には、ひとりひとりの命があるのだということを思うのでした。
私は、東日本大震災のときに、祖父母を失くしました。
祖父母が住んでいた集落は、土台すらも残りませんでした。
震災から数年間は、どうしてもっと会いに行かなかったのだろう、どうしてもっと感謝の気持ちを伝えなかったのだろうと後悔ばかりして、失ったものの大きさにうちのめされていました。
いまも、そんな後悔が消えたわけではなく、
心に空いた穴が塞がるわけでもありません。
にかっと笑う祖父母に会うことも、祖父母の家の庭で寝ころぶ猫を眺めることも、二度とありません。
でも、いまの私は、それが失われたことよりも、それが「たしかにそこにあったこと」に目を向けたいなと思っています。
私は、祖母がつくるおだんごがとてもおいしかったことを覚えています。
祖父が得意げに吹くハーモニカの音色は、いまも耳に残っています。
祖父母の家の縁側で感じる海風が心地よかったことを忘れることはないでしょう。
時間は一直線に流れ過ぎていくものではなくて、私の中に層となって積み重なっているような気がしています。かつてそこにあったものは、いつもここにあります。
悲しい出来事をずっと考えているのは苦しいですが、かと言って、そのことから目を逸らすのも、そのことを考えないのもなかなか難しいような気がします。
ここ数日の私は、たしかにそこにあったものに、そしてその人たちが残してくれたものに思いを馳せていました。
もちろん、そう考えなければいけないとか、そうやって前を向いたほうがいいということではなくて。いまの私はこう考えているよ、というだけです。
被災された方々に平穏な日々が戻ってくることを心から祈っております。
心穏やかになれる曲を添えて。
年末に車でラジオを聴くのにハマったのですが、朝にラジオからこの曲が偶然流れてきたとき、いい一日がはじまるような予感がしました。
みなさんにいい朝が訪れますように。
ここからは、私の年末年始のお話を。
12月後半は、美術館の年報の校正と、展覧会の印刷物の校正作業に追われて、毎日目まぐるしい忙しさ。タイトなスケジュールは、私だけでなく、まわりの人たちや業者の方々も苦しめてしまうから、次からはもっと余裕をもってスケジュールを組まなければと反省した。
仕事がおさめられるのか、と冷や冷やしながらも、上司の協力のもと、なんとか年末を迎える。
忙しかった12月後半のごはんは、ちょっぴり手抜きの日が多め。
でも、おいしければそれでいいや、と開き直っている。
休みの日に、スーパーで大きなサツマイモが30円で売っていたから、「ビストロ微熱」の扉を叩く。
おいもの風味がしっかりするけれど、食感はお芋のもさもさ感がなくて、もっちもち。絶妙なたれの甘じょっぱさ。
大学芋のような味なので、親しみやすさ抜群なのに、食べたことのない新鮮さもあって。
一言でいうと、「ああ、しあわせ!」な味。
お芋やかぼちゃが大好きなぺこりんも、とてもしあわせそうな顔で食べていた。
クリスマスは、ごちそうをつくるのもいいけれど、私もぺこりんもお疲れ気味だったので、今年は外食することに。
夜は寒いので、ランチを食べに行く。
私が行ってみたいと話していたスペイン料理屋さんをぺこりんが予約してくれた。
奮発して、1人1万円のコース。
と聞いたときには、ランチに1万円は高すぎでは…と少し後ろめたいような気がしたけれど、そんな後ろめたさを吹き飛ばすようなおいしさだった。
むしろ、おいしさと照らし合わせると、安い気がしてしまうくらい。
今年は二人とも新しい生活でよく頑張ったね、またここに来ようと思ったら、お仕事の励みになる気がするねと話しながら、おいしい料理に舌鼓を打った。
ひと月前から年末年始の新幹線を予約していたので、年末年始の休みに入ってすぐ、実家へと向かう。
ぺこりんは東京のおばあちゃんの家に寄ってから宮城に来ることになっていたので、ひとり一足先に宮城へ。
丸善でぺこりんがくれたクオカードで文庫本を3冊買って、丸善のすぐ隣のスープカレーやさんでお昼ごはん。
仙台の好きなお店を覗く。この日は、何も買わない。帰る日に買おうと思いながら、ほしいものをチェックする。
次の日
石巻で友人と会う。私の大好きな中華料理やさん「一龍」へ。
本当に何を食べてもおいしい。帰省したら、ほぼ毎回行っているお店。
友達には、お土産として、軽井沢のジャム(ゆず・桃)と宮田ナノさんのエッセイ漫画『ハラヘリ読書』をプレゼントした。友達は、パンが好きで、おいしいものが出てくる本が好きなのだ。
ごはんを食べた後、イオンをぷらぷらと歩いて、観慶丸本店に行く。ここも私の大好きなお店だ。器を中心に、雑貨を扱っているお店で、訪れるたびそのセンスの良さに脱帽する。
センスの良いセレクトショップは、品数が少なくて、手の届かないような値段のものばかり置いてあるところも多いけれど、観慶丸は品数が豊富で、1,000円以下の手にとりやすい価格の商品もたくさん扱ってくれている。
私は、あれもこれもほしいという欲を抑えつつ、湯呑をふたつ買った。青みがかった白い小ぶりの湯飲み。
友人は、レンジでも使える、ノリタケのマグカップを買っていた。
と思ったら、それを車で私にプレゼントしてくれた。私がものほしげに眺めていたからかな、と反省しつつ、友人からのステキなプレゼントをありがたくうけとる。
次の日
幼馴染の友人が実家に遊びに来てくれる。前の晩にぺこりんも到着していたので、3人でボードゲームをして遊ぶ。
『ワーリング・ウィッチクラフト』、『クジラオルカ』、『テストプレイなんてしてないよ』というボードゲームで、お昼前から、夕飯前までずっと遊んだ。おしゃべりしながら遊べるボードゲームは、年末年始の遊びにぴったりだ。
幼馴染の友人は、介護施設で働いているため、昨年までは帰省しても会えなかった。画面越しに通話したりはしていたけれど、ようやく顔を合わせられた。
おっとりとしていて、やさしくて、凛とした強さもあるすてきな友人だ。ぺこりんは、その子を、「ちびまる子ちゃん」のたまちゃんみたいな子だね、と言う。私もいつもそう思っていた。
父がお昼ご飯をつくってくれた。
父は、私が帰省している間、ずっとおいしいものをつくりつづけてくれていた。
私も、おいしいおいしい、とお代わりして食べたし、ぺこりんや友人も来て、きっとつくるのは大変だっただろうけれど、父はにこにこしながら次々と料理を出してくれた。
父はあまりおしゃべりではないけれど、父の料理から、私は父の愛情を受けとる。
父の料理(ときどき母の料理)
紅白をみて、ゆく年くる年をみて、今年もよろしくと母に言って(父は早寝早起きだからもう寝ていた)、お布団にもぐる。
お布団に先に入っていたぺこりんに、今年もよろしくねと言う。
お布団のなかでぽかぽかになっているぺこりんは、私にハグしながら「初なかよし!」と言う。わたしの今年の初キュンでした。
元旦
岩手の平泉へ初詣に。毛越寺ちかくのお蕎麦屋さんで、暮坪そばを食べる。暮坪カブという大根よりも辛くて、少しワサビにも似た香りのするカブをすりおろして冷たいお蕎麦とともにいただく。
ごちそうつづきだったおなかにもやさしく沁み渡る味。
中尊寺でお詣りして、おみくじを引く。私は中吉だった。少しずつ幸せを実感すると書いてあった。自分本位にならず周囲への気遣いを忘れなければますます運が向く、らしい。今年の目標にしようと思う。
次の日
本を読んだり、母とぺこりんとボードゲームをしたり、ドラマ『いちばんすきな花』を観たりして過ごす。
年末年始に読んだ本たちを写真で紹介。さらさらと読める本が多め。
次の日
ぺこりんはぺこりんの実家のある青森へと帰る。私はその次の次の日からお仕事だから、今回は自分の実家だけに帰った。
ぺこりんは私の実家でも寛いでいて、かわいさとやさしさを振りまいている。そんなぺこりんをみて、私の父も母も安心してくれている。
なのに、私がぺこりんの実家にあまり顔を出さないのはとても申し訳ないと思うのだけど、自分の実家にもたまにしか帰れないのだから、できるだけ自分の実家にいたいと思ってしまうのだ。
それに、義両親と話すと、チクっとする(たまにカチンとくる)小言を言われて凹んでしまうことが多い。
そんなことをネチネチと覚えている私は嫌なやつだな、と思う。
義両親は娘ができたような気持ちだと言ってくれているのに。
でも、私の両親は、私の両親だけで十分だと思ってしまったりして。
本当に嫌なやつだ、と我ながら思う。
大切なぺこりんの大切な人なのだ。
ぺこりんを育ててくれた人たちなのだとは頭ではわかっているんだけど。
私も、ぺこりんのように、義両親を安心させてあげられるといいな、と思う。
今年の夏にはちゃんと会いに行こう。
次の日
母と仙台で買い物をする。お昼は、帰省していた母の友達と一緒に武屋食堂に行った。私は油淋鶏、母は牛モツラーメン、母の友人は海鮮丼セットを頼んでいた。母の友人は、母みたいにふんわりした人だった。それなのに、生ビールのジョッキを勢いよく2杯も呑んでいて、おもしろかった。
私は、surba-surbiという雑貨屋さんでランチョンマットを買う。母がもうすぐお誕生日だから、と私が欲しがっていたお香立てをプレゼントしてくれた。
ボロボロになっていたリュックも新調した。前から気になっていたマリールゥのパンケーキミックスも買う。
仙台はお買い物がしやすい、と東京の大学に通っていた友人たちは帰省すると口を揃えて言っていたけど、本当にそう。
あまり混んでいないし、おしゃれなお店もたくさんあるし、きゅっと駅前にお店が集まっているし。
夕方、仙台駅で母と別れる。
「ちょっと寂しいね、でもまたすぐに会おうね」と母が言う。
少し寂しそうだけど、いつもどおりまんまるにこにこの母だから、私も笑顔で「ありがとう、また来るね」と言う。
故郷から離れていく新幹線に乗るのは、やっぱり寂しい。
でも、たくさんおいしいものを食べて、父と母にもお年玉を渡せたし、お気に入りのものを買った私は、ほくほくとしていた。
父や母とこうやっていつまで過ごせるのかわからないけれど、できるかぎりこんな時間がつづくといいなと思う。
年末年始の日記はこれでおしまい。
また今年も毎日を大切にしながら、生きることを楽しみながら、自分にできることを精一杯やっていきたいな、と思います。
どうぞ今年もよろしくお願いします!