地域住民組織は、空き家問題をどのように解決するか?

 先日、空き家問題をテーマとした講座のレクチャーまとめ。近年、空き家が社会問題化して久しい。講座企画者の問題認識は、空き家問題の解決はオーナーの独力では難しく、地域社会の協力が必要であるというものである。では具体的にどのような協力が有効なのか、ということを教えてほしい、ということであった。

 レクチャーは、「そもそも空き家とはなにか?」「空き家の発生原因とはなにか?」「地域活動をする人間が、できることとは?」という3つの問いに答えていく形で進めた。

 まず、そもそも「空き家」とは何か。空き家対策特別措置法(2015年〜)によれば、「空き家」とは「居住その他の使用がなされていないことが常態となっている住宅」のことで、「常態」とは「1年間」のこととされている。

 空き家は大きく三つに分類される。「二次的住宅として利用がされている住宅」。「賃貸・売却予定の住宅」。そして、「転勤・入院等のため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や、建て替え等のために取り壊すことになっている住宅」である。この3つ目が「その他住宅」と呼ばれている。

 では、この三つの空き家は、どんな割合で存在するのか。こんな感じらしい。

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 その他住宅の空き家率は、大雑把にいえば、都市部に少なく、地方部に多そうに見える。もう少し丁寧に見るとこう。

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 高齢化と人口減とが空き家発生の大きな原因となっている事がわかる。じゃあ、これだけ空き家が増えているんだから、もう新しい家は要らないよね、ということになるかというと、そうはならない。

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 世帯数より住宅数の方が伸びがいい。つまり、世帯に対し、住宅の供給の増え方のほうが勢いがあるわけだ。さらに、新しく作る戸数と、潰してなくなる戸数の差を見るとこう。

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 まだまだ新設住宅が増え続けている様子がわかる。なぜだろう?このサイトによるとこうらしい。

 まず、住宅が減らないことについては、お金を使って解体したのに税金が上がるので、使っていなくても解体せず、ほっときたいという事情があるようだ。住宅がない土地では固定資産税が最大4.2倍に増えてしまうこともあるそうだ。さらに、解体のためにも費用を要する。そこに加えて、日本の住宅市場特有の「新築好き」傾向がある。中古住宅に比べ圧倒的に新築住宅が選ばれる傾向だ。住宅市場に占める中古住宅の割合が、アメリカやイギリスでは80%程度であるのに対して、日本では36%程度にすぎないのだそうだ。さらに、災害の多い日本では、住宅の資産価値がほとんど経年上昇しない事情もこれを助長しているみたい。

 ここまで、空き家とは何かということと、空き家の増え続けている状況が明らかになってきた。では、空き家を所有する人々はどのような人々で、なぜ持ち家が空き家になって、そしてこれから空き家をどうしていこうと考えているのだろう。これらの問いについては、国土交通省「平成 26 年空家実態調査 調査結果の概要 」が答えを提供してくれている。以下、本報告を参考にしながら見ていこう。

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