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誤解と確認(ヒロカマ展補足)

前回のnoteの補足である。

ブレースの加工

きっかけは、孤高の構造家・白狐氏(@ninetailsfox63)の一言だった。

制作を担当した大住豊氏(MATELIER株式会社)は確かに「Lアングルを溶接する前にブレースを溶接した」と入ったが、あの全長のままとは言っていない。勘違いのままもよくないので、確認に行くことにした。

切断していた

結論から言うと、白狐氏のおっしゃるとおり、切断していた。ある程度の長さの状態で加工していることになる。

切断→溶接している

広瀬鎌二アーカイブス事務局の寺内氏によれば、
「施工中の写真が切っていたので、それに倣った」
という。それも再現したわけだ。図面ではターンバックルが作図されていながら、実際には採用されなかった理由は不明という。当時設計や建設にかかわった方はすでに鬼籍に入っており、資料をみてもわからないため永遠に謎となった。
私は「コスト面からなくしたのではないか」と聞いたが、寺内氏は
「ターンバックルのコストとターンバックルをなくしたことによるコストはそう変わらなかったはず」という。
当時、彼の審美眼にかなうターンバックルの製品がなかったのではないか、というのが事務局の見解とのことであった。

なお余談だが、一部のブレースに2点切断しているものがあった。たまたまそこに大住氏が居合わせたので(奇跡!)確認したところ、スタッフが長さを間違えて加工したため再切断したとのことであった。

柱の加工

もう一つ確認したかったことがある。柱の溶接だ。私はてっきり、強度を確実に伝達するために全溶接されていると考えていた。しかし、前回のnoteで画像を確認したときに全溶接されているようには見えなかったのだ。

全溶接には見えない(特に赤マル部分)

全溶接ではなく点溶接

これもやはり全溶接ではなかった。実測したところ、600mmピッチで40~50mmの溶接がされているようであった。隣のSH-30でもメイン柱はLアングルの抱き合わせになっており、そこでは製作図として「L-7*90*90 エッジ45°面取りの上、抱き合わせ 開先、溶接、みがき(溶接長30、600ピッチ」と明示されていた。おそらく同様に有効30mmの溶接長がとられたと考えられる。

柱の加工過程
溶接されている箇所の拡大

試作では、おそらく開先角度の検討もされている。きっちり開先をとると十分な余盛ができず、きれいなエッジが確保できないのではないか。

展示されていた試作品

このオーダーでは全溶接をする必要がないのだろう。自分のセンスのなさに落ち込むばかりである。


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