大鳥のの

noteにて、深海の人魚バブルと海に挑む少年カケルの物語『烈空の人魚姫』を小説と挿絵で…

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noteにて、深海の人魚バブルと海に挑む少年カケルの物語『烈空の人魚姫』を小説と挿絵で表現していきます。 是非楽しんで読んで下さい。 自分の作品を書籍化することを目指して頑張ります!よろしくお願いいたします✨

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烈空の人魚姫 第3章 海底ワープゾーン ⑤海の世界へ

ゆっくり、ゆっくりと目を開く。 きらめく光の粒と淡いエメラルドブルーの世界。 色とりどりの魚たちは群れを作って渦巻いてーーーー カケルは「ふぅ」と息を吸い込んだ。 今、僕は海の中にいる。 息が苦しくないのは、目の前に潜航する水中ロボット、フレイム1号とカケルの精神が同期しているからだ。 それはフレイムシステムは正常に作動していることを意味している。初めての同期テストは成功したのだ。 魚の群れがある一定の方向に向かって降下していくのが見える。 その先にある海底には琥

    • 烈空の人魚姫 第3章 海底ワープゾーン ④フラッシュバック

      船に乗り上げてくる巨大サメのように、海の生き物がこちらの世界に食い込んでくる光景なんて映画の中だけで十分だ、とカケルは思った。 腕の力を使って上肢を防波堤に乗り上げた形になっているダイオウイカ先生はまるでパニック映画の中に出てくる巨大サメのように狂気を発している。 明らかにおかしな状況にも関わらず、上田たちはダイオウイカ先生の異常にダイナミックな動きにただ単純に感嘆しきりだった。 間違いなく、陸にいてはいけない生き物が目の前にいる。 ・・・いや、海の中だって、ダイオウイカ

      • 烈空の人魚姫 第3章 海底ワープゾーン③ダイオウイカ先生の再来

        結局その日は演劇部の練習を見守るだけで時間は過ぎていき、カケルは週末に動作試験をする方向で帰宅した。 そして、土曜日がやってきた。 カケルは松の木が並ぶ海岸沿いの道路を自転車で走らせる。 深海ミステリー研究部の待ち合わせ場所が泡津港なのだが、その前に港付近の魚市場に寄りたいと思っていた。 カケルは市場での買い物を急ぎ足で済ますと、待ち合わせ場所まで急いだ。 泡津港に到着すると、港に停泊する漁船のすぐそばで私服姿の男女がカケルを見て手を振っていた。 満堂君と日高さんだ。

        • 泡は儚いイメージだけど、同時に消えては生まれて、無数に湧き上がる強いエネルギーを感じる側面もあって。 そんな泡が好きです。 カケルには響かなかった磯貝先輩の脚本、、どんな感じなんだろう 劇のポスターとかイラストでゆくゆく作ってみたいって思ってます。多分B級映画風?

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        烈空の人魚姫 第3章 海底ワープゾーン ⑤海の世界へ

        • 烈空の人魚姫 第3章 海底ワープゾーン ④フラッシュバック

        • 烈空の人魚姫 第3章 海底ワープゾーン③ダイオウイカ先生の再来

        • 泡は儚いイメージだけど、同時に消えては生まれて、無数に湧き上がる強いエネルギーを感じる側面もあって。 そんな泡が好きです。 カケルには響かなかった磯貝先輩の脚本、、どんな感じなんだろう 劇のポスターとかイラストでゆくゆく作ってみたいって思ってます。多分B級映画風?

          烈空の人魚姫 第3章 海底ワープゾーン ②退屈な劇

          カケルはぐったりしていた。 演劇部室で日高さんと共に椅子に座って、次の文化祭用の演目の練習を観覧することはカケルにとって一面の砂漠を歩いているレベルで気が遠くなりそうな作業であった。 これも満堂君が演劇部の部長、磯貝先輩にエキストラのスカウトをされてしまったせいだ。 カケルは何度も繰り返される単調な物語を延々と見ているように感じた。 人魚姫が泡になった後も何度も蘇りむしろ宇宙にはばたいていく。どうやらこの台本は磯貝先輩による執筆のようだった。 さっきからずっと同じシーンの練

          烈空の人魚姫 第3章 海底ワープゾーン ②退屈な劇

          烈空の人魚姫 第3章 海底ワープゾーン ①深海ミステリー研究部

          放課後の教室の賑わいが引き始めた頃。 6限目の授業が終わっても、カケルはまだ帰る準備をしないまま机に頬杖をついてぼんやり考えて込んでいた。 (暗い海の底、深海の街を破壊したバブルの夢。あれは何だったんだろう。ひとまず藍澤博士からもらったアプリを発動して、満堂君と協力して泡津湾でフレイム1号で同期テストしてみようか・・・) 『何一人で考え込んでるんですか?』 おわっと思わず叫びそうになった。目の前に同じクラスの日高さんがいて、首を傾げてカケルの顔を覗き込んでいる。 誰もい

          烈空の人魚姫 第3章 海底ワープゾーン ①深海ミステリー研究部

          烈空の人魚姫 第2章 嵐の日のポラリス号⑦Nightmare

          『ふっふっふ・・・・乗り気になってくれて私も嬉しいよ』 藍澤博士が笑うと横にいた結城博士はため息をついた。 『いや、テスト出来るのが嬉しいの間違いだろ・・・』 カケルはヘッドホンを付け終えると、ヘッドホンから藍澤博士の声が聞こえてきた。 『聞こえるかい?カケル君。今からフレイム1号と君の精神を同期するため、まずは君の精神をスキャニングする作業を行うよ。』 藍澤博士の声が聞こえた後、キーンという聴覚検査で聞こえてくるような微弱な音が鳴り響いた。 『スキャニングは完了

          烈空の人魚姫 第2章 嵐の日のポラリス号⑦Nightmare

          烈空の人魚姫 第2章 嵐の日のポラリス号 ⑥テストマインドは・・・

          カケルはなかなかデスク下から動けずにいた。 藍澤博士に見つかってしまって最初は驚いて固まったけど、今はそれだけで動けずにいるわけではない。 博士と会えた感動と緊張のせいで身動きが取れずにいたのだ。 (フレイム1号を取り上げてどうするつもりなんだろう) カケルはふと藍澤博士がフレイム1号をどうしたのかが気になり始めた。 『ほんと、怒ってないから。出ておいでよ』 藍澤博士のその言葉を聞いて、カケルは観念した。 おずおずとデスク下から顔を出すと、思わず目を見開いた。 「

          烈空の人魚姫 第2章 嵐の日のポラリス号 ⑥テストマインドは・・・

          烈空の人魚姫 第2章 嵐の日のポラリス号 ⑤瞳の奥の炎

          水中ロボット研究者、藍澤聡介は体を屈めてデスクの下を覗き込むと、怯え切った少年が身を縮めて丸まっているのを発見した。 『君は・・・、高校生?』 『あ・・・カケルって言います・・・藍澤博士・・・・ぼ、僕・・・博士に相談したいことがあって・・・深海に・・・見つけに行きたいものがあるんです・・・』 ふぅん・・・藍澤博士はそう呟くと目を見開いた。 自分にわざわざ会いに来る高校生がいるとは。 相談とは、何なんだろう。 藍澤博士が完全にしゃがみ込んで高校生の顔を見ると、カケルと名乗

          烈空の人魚姫 第2章 嵐の日のポラリス号 ⑤瞳の奥の炎

          烈空の人魚姫 第2章 嵐の日のポラリス号 ④侵入者、発見

          『うあああ、もうダメ。船酔いきっつい・・・俺本当にもう無理です』 『何言ってんだ、藍澤。さっきもデッキで変なことしてたし・・・。まだ調査航海は始まったばかりなんだからへばってる場合じゃないぞ』  『もう船の上が気持ち悪くて、海中の方がましだって思って。タイタニック序盤のローズみたいな気持ちでしたよ』 『ポラリス号にはいないぞ、ジャックは・・・』 明かりが付けられた室内は研究者たちが入室し一気に賑やかになる。 カケルは部屋のデスクの下に潜り込み、フレイム1号を抱えながら

          烈空の人魚姫 第2章 嵐の日のポラリス号 ④侵入者、発見

          烈空の人魚姫 第2章 嵐の日のポラリス号 ③泡津海洋センターの博士たちのささやき

          泡津港は夜の闇と無数の雨粒が混ざり合って船の明かりもおぼろげに見えた。 黄色のレインコートを被ったカケルは自転車から降りると巨大船に近づいた。 白と赤の鮮やかな船体。 近くで見るとポラリス号は視界の悪い雨天の中でもこれでもかというほど存在感を示していた。 青色のレインコートを着た満堂君がのんびりと手を振った。 『やっぱり来たね。ポラリス号とか珍しいもんね』 満堂君は笑った。 カケルは頷く。 (水中ロボットに興味があるから船にも興味あるだろうと思って誘ってくれたんだ)

          烈空の人魚姫 第2章 嵐の日のポラリス号 ③泡津海洋センターの博士たちのささやき

          烈空の人魚姫 第2章 嵐の日のポラリス号 ②Take a chance

          何かやろうとする時、すごく息が詰まるんだ そう、例えば誰かのために頑張らないとって思う時 地球の重圧全てが体にのしかかって来るみたいにね でも彼女に会いたいと思った時初めて 自分でも不思議なくらいに自然と息が出来たんだ 泡津湾上空の雲は世界中の闇をかき集めたような真っ黒な雲に徐々に覆われつつあった。 嵐の影響で徐々に雨足が強くなってくるようだ。 府立泡津高校の帰り道、水凪カケル(みずなぎかける)は自転車で天空海岸沿いを猛スピードで駆け抜けていくところであった。 レイ

          烈空の人魚姫 第2章 嵐の日のポラリス号 ②Take a chance

          烈空の人魚姫 第2章 嵐の日のポラリス号 ①満堂君の秘密基地

          数年後。 府立泡津高校の1年3組の6限目の授業が終了する頃。 満堂洋夢(まんどうひろむ)は高校の授業が終わると同時に目が覚めた。 すっかり居眠っていたようで6限目の授業内容は全く覚えていない。 先生は起こしてくれなかったのだろうか?あるいはもう起こすことは早くも諦めているのか。 長い間寝ていたせいか、前髪に出来た寝癖が顔を上げたと同時にぴょこっと跳ねるのを洋夢は感じた。 ただでさえ寝癖がひどい洋夢のぼさぼさナチュラルヘアはより一層自由奔放に暴れていた。 洋夢はふあああとあく

          烈空の人魚姫 第2章 嵐の日のポラリス号 ①満堂君の秘密基地

          今書いてる小説、烈空の人魚姫に出てくる泡津市のモデルは京都府宮津市です。天空橋は天橋立🫧 京都の海を舞台にしたくて、数年前に現地を訪れて実際宮津の海洋センターも訪れて沢山お話を伺いました。 ダイオウイカも実際迷いこんで?くることがあるようで深海と繋がってるんだと思うとどきどき。

          今書いてる小説、烈空の人魚姫に出てくる泡津市のモデルは京都府宮津市です。天空橋は天橋立🫧 京都の海を舞台にしたくて、数年前に現地を訪れて実際宮津の海洋センターも訪れて沢山お話を伺いました。 ダイオウイカも実際迷いこんで?くることがあるようで深海と繋がってるんだと思うとどきどき。

          烈空の人魚姫 第1章 フレイム1号の帰還 ③真夜中の人魚姫

          カケルの住む天空橋付近のマンションは天空海岸からそう遠くない距離に位置している。 とぼとぼと部屋の中に入っていくカケルをお母さんは心配そうに見た。 水中ロボットをダイオウイカに取られてびしょ濡れになって戻ってきたからだ。 カケルの好きなオムライスが夕飯には用意されていたけれど、カケル自体は食べる元気がなかった。 いつもなら机の上にいるはずのフレイム1号がいないことがカケルの心を深く海の底まで沈み込むくらいに落ち込ませていた。 ノートパソコンを開けて机に置きっぱなしにしたまま

          烈空の人魚姫 第1章 フレイム1号の帰還 ③真夜中の人魚姫

          烈空の人魚姫 第1章 フレイム1号の帰還 ②水中ロボット泥棒

          次の日の朝は霧が立ち込めていた。 霧が出るってことは今日は晴れに違いない。 カケルは勢いよくベッドから飛び起きた。 今日も明日も夏休みだから学校も休みだし、ゆっくり水中ロボットフレイム1号の動作試験ができる。 昨日の気分の悪さも朝にはましになっていた。 自転車でいつものようにフレイム1号を乗せて天空海岸に向けて走り出す。 海岸と向こう岸を繋ぐ細長い陸地が見えてきた。 風土記によると、天界と下界を繋いでいたと言われる橋みたいな細長い地形で天空橋と呼ばれている。 百人一首の

          烈空の人魚姫 第1章 フレイム1号の帰還 ②水中ロボット泥棒