映画感想『ドラえもん のび太の人魚大海戦』(2010年)

2023年12月24日 AmazonPrime Videoで鑑賞

 子供の頃観た時もつまらなく感じたけど、今観ると積極的にダメな作品だなと思った。ドラ映画シリーズのマラソンしてるとこういう作品にぶち当たることもあるのか。厳しいぜ……。

 色々と思うところはあるけど、絞って書くことにする。

 まず話がよくわからない。
 ソフィアの家出、故郷の星探し、王者の剣探し、静香誘拐、怪魚族との戦争…と、話があっちに行ったりこっちに行ったりしてる。
 加えて一つ一つの話が面白くない。ドラえもん映画で(子供向け冒険映画で)ありそうなことを並べてるだけに思える。
 設定もよくわからない。「海の底にこんな町があるなんて!」というセリフがありつつ、どう見ても海の上の島に見える外観の絵もあり、その齟齬を埋める説明は何も無い。人魚族のキャラデザの魚具合、人間具合もバラバラで、人種構成がどうなってるかの説明もやっぱり無い。

 でもここまで書いたようなつまらなさや分かりづらさよりつらいのは、この話が提示する価値観へのノれなさ、もっと言えば倫理的な良くなさの部分だった。はっきり言って今回のドラえもん一行は、ドラえもん達の形をした別の何かだと思いたいくらい見ててつらかった。自分って思ってる以上にドラえもんへの思い入れがあるんだなと気づかされた。
 雲行きが怪しくなってくるのは、ジャイアンが中心になってスネ夫を責めるくだりのあたり。『のび太の恐竜』(原作漫画及び06版)と比べるまでもなく、ここ皆イヤなやつに見える。
 決定的なのは敵味方の単位が民族になってるという設定。怪魚族っていうのがどういう集団なのか例によって説明されないので微妙なとこだけど、この語り方だと民族と民族の争いが一方的な視点で描かれてるようにどうしても見える。勧善懲悪ですらなくて、言うまでもなくダメすぎる。
 美醜が正義/悪と直結した話作りも酷い。ドラミの「なんて醜いの」ってリアクションは何かの間違いかと思って巻き戻した。
 戦争という概念の能天気な扱いもキツくて、全然良いことじゃないのに目をウルウルさせてるのび太達を見るのがまたつらい。
 最後は捕虜虐待でフィニッシュ。1つの作品の中でこんだけ倫理的にアウトなことが詰まってることに驚く。
 ドラえもん的な、藤子F的な理性のあり方とはかけ離れた感覚なのは言うまでもないし、それ以前の問題として、子供が観る作品として絶対的に良くないと思う。

 誰だこんな話書いたの!って思ったら『アマルフィ』直後の真保裕一だった。脚本クレジット騒動やらで疲れてわけわかんなくなってたのかもね、って思うことにしよう……。 

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