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引き継がれないもの

歩いてよく見かけるのが、
切られた木。

ひと昔前に誰かが
植えたのだろうけど、

次の世代の人には
繋がっていないのか、

柿の木、梅の木、イチョウの木、
キンカンの木、
桑の木が切られている。


昔は干し柿をよく作っていた、
って聞いたけど、

今、柿を干している人は
かなり少ない。



今年は少なめとはいえ、
どれも立派な渋柿です。

昔は親子で柿をとり、
家族で干し柿作りをしていたらしい。

今は、下に柿が落ちて字面が
汚れるのを嫌って、

柿をとってくれてら助かる、
とさえ言われました。

記憶にあるだけでも、立派な柿の木は3本、バッサリと切られていました。

親の世代までは活用していた、
でもその子供は
全く関心なく、むしろ貴重な柿も
邪魔だと。


考えてみれば、数十年以上前に
誰かが植えたはずです。

おそらく、家族で楽しめるように、
冬場の貴重な果物として、
活用させたい。

色々な思いが
あったのかもしれない。



熟した渋柿ですが、そのままいけます。
ここまで熟せば、渋みはありません。
これ以上ないといってもいいくらい、
いい味の渋柿です。
甘くて渋みなし、とってもおいしいです。

熟したら、渋みが抜けて
美味しいですよ、って言っても

取るのが面倒くさいようです。

山の柿、
手入れしていない柿、

黒ずみやシミもあって、
見た目はよくない。

でも味はとてもいい。

甘みがちょうどよく、
例えようがない。

洗って、あるいは拭いて
丸かじりでいけます。

そんなわけで、
柿の収穫もしてきました。

収穫ハサミを伸ばして
とります。

結構体力を使うんですね。 

汗もかきます。
寒かろうが、結構な
運動量でした。

そんなときの柿、じゅくじゅくの
柿がとってもおいしい。

水筒わすれたけど、柿あれば
大丈夫でした。


ここまで熟したものは、そのまま食べるか、
柿酢作りにまわします。
むいた渋柿の皮の一部は
天日干しをします。

日数はかかりますが、
しっかりと渋抜きができたら、
立派な甘味料です。

そのまま食べてもいけます。

酔い覚ましにもいいらしい。
私はぬか床に少し入れて、

ぬか漬けの隠し味にしています。
山のみかんも、
酸っぱいけどいい味です。
ゆずではないけど、皮も食べれました。
この味、何かいい。品種は不明。


市販のものを買うのではなく、

環境があるなら、

実っているのがあるなら、

うまく活用すればいいのにな、

って思います。

まぁ毎年のことなので
こっちは好きなように

干し柿を作れるわけですが、
結構いいものです。

最近とくに思いますが、
売るために作った果物と、

誰も手をつけない柿って、
随分と違うなってことです。

味は薄めで甘さ控えめですが、
長く印象に残る味なんです。

例えば、柿の場合ですが、
甘さでいえば、蜂屋柿なら
もっと甘い。

確かに甘い鉢屋柿は美味しい。
でも今手にしている山の柿は、

干し柿にすると、
甘さ控えめでも余韻が残る、
不思議な感覚がします。

実はとても大きな鉢屋柿を買って、
干し柿を作ったことがあります。

干すまでは良かったのですが、

夜中にテンやイタチがきて、
結構食べられました。

動物は味をよく
わかっているんですね。

甘みがピークの時を。
干した鉢屋柿の約3−4割はやられましたね。

その次の年から、一部の山の柿の木を
管理していいことになって、

山の柿で干し柿を作りました。


ピーラーで皮むきします。
毎日少しずつ、でも柿は柔らかくなるから後で柿酢か
放置で生で食べるか、
分けていきます。

オレンジ色のカーテンみたいに
ぽつりぽつりと、やっていくのも
風情ありです。

早くしないと、
全て柔らかくなる。
柔らかいと、
干し柿はできなくなります。
渋柿の皮は柿酢へ。果実酒用の瓶に詰めていきます。
皮も入れると、とてもいい柿酢に
なります。
うっすらと黄色く澄んだ、
きれいな酢が来年にできます。
瓶に入れて熟し柿を握り潰す。干す時に枝が取れて失敗したものは柿酢へ。
これで無駄なしです。

山の柿で作ると、途中で動物に
ほとんどやられなかった。

市販の鉢屋柿の時にに比べれば、
被害はほぼ皆無です。

偶然かと思いきや、翌年、
さらに翌々年も被害は
ほぼなし。

今となって思うのは、市販の
鉢屋柿は甘いけど、

山の柿と比べれば
甘すぎるからやられた、
大きすぎるからやられた、

変に美味しいからやられた、
ってことじゃなかろうかと。


思うのは、
知人の自然栽培のお米。

シカ用の柵をたてていないのですが、
ほとんどシカにやられていません。

どうやら、素通りかたまに
新芽がたべられる程度だそうです。

私も田んぼを少しだけしていますが、
シカの柵はしていません。

それでも、ほぼ害なしです。

一方で、有機や一般的な農法のお米づくりの人は、田んぼ一面を柵で対策しています。

想像するに、何か手を加えたものって、
不自然さでもあるのかも、


それを動物が嗅ぎつけて
食べるのかもしれません。

となると、お金払って買った柿が
やられる。

肥料や農薬など、
色々と手間のかかったお米が
シカにやられる、

山の柿の木には
費用をかけていない。

自然栽培も費用はかけていない。

それでも楽でうまくいく。
なんだか変な感じもしますが、

手間暇費用少ないものが
うまくいっている。

そしておいしく食べられる。

収穫や多少の手間こそありますが、
そう面倒というわけでも
ありません。

天気のいい日に収穫するのは
いい気分転換になります。

柿の木があっても、放置か
切られる。

邪魔だし、
買う方が楽だから、
市販のはきれいで甘いから、
気軽だから、ってことでしょうか。

柿はどうやら親から子へ
引き継がれて
いないようですね。

思い起こせば、引き継がれていないもの、
って結構見かけますね。

フィルムカメラ (不燃ゴミで以前、とてもよい一眼レフカメラが捨てられていました。)

鰹節けずり器( 使っていないけど、
かつお節削り器は
家にある、っていう人は多いです。)

一方で削る鰹節が売っていない。

本枯れ節のカツオ節、一本買おうと思っても
通販でしか手に入りません。)

家にあるってことは、過去に
カツオ節を削っていたから
あったわけです。

スーパーでも一本入りのかつお節
って見かけません。

需要がないのか。

いや、親から子へと継がれていない。

いつしか商店街の乾物屋さんに
教わりましたが、
かつお節って、袋に入っているものと削りたては全く別、って聞きました。

特に本枯節は、あえてカビを生やして
半年くらい熟成させたものです。 

安いのは、ただカツオを
乾燥させただけ、

長期間発酵させたものじゃないから、
別物だっていうのです。

確かに、削りたての本枯れ節のかつお節、
とっても美味しいです。


削った本枯れ節のかつお節、
結局安上がりで味もいい。
いや、これだけで質素に見える料理
の味が激変します。

確かに削る手間は
あるかもしれませんが、

手間と思うかどうかが
分かれ道ですね。

かつお節って、カンナで削る感じで
結構楽しいものです。

今となっては、大きな
ショッピングモールは
遠くにあるけど、

詳しく教えてくれる乾物屋さんが
近くにない。

大阪、京都には商店街があって
乾物屋さんが結構あるのですが、
今いる地方ではない。

教えてもらったら、世界も変わってくる
のですが、

そもそも手間と思ってしまうのが、
残念に思えます。

めんどうくさい、じゃまくさい、
便利で気楽、パックにはいったものがある、

スーパーで小分けしたものを買う、安い、

といった流れかもしれません。

面倒くさいの積み重ねが
引き継がれない原因に思えてきます。

おそらく、かつお節の健康面(栄養素)も、本枯れ節のかつお節と
パックに入ったものとは、
似て非なるもの
じゃなかろうか。

発酵食品の本枯節のかつお節でも、
パックに入って窒素ガス充満なら、
生きている発酵食品とはきっと違う。

考えてみれば、
乾物屋さんのおじさんが
いい話知っているわけですね。

作り方も、鮮度も違う。
本枯れ節の削りたてなら、発酵食品の
出来立てのようなもの。

柿にしても、農薬肥料、
殺虫剤など使ったものと

自然環境豊かななかで、育った
自然の柿。

とても同じとは思えない。

知識なくとも、かつお節削り器でも
引き継がれていれば、

考えなくても、知らなくても、
十分な健康食品を
食べていることになるって
思います。

単純で当たり前に思っていたことが、
意外に良い、いや真理を
ついているように
思えてきました。


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