カリフォルニアは彼にとっては最悪な場所だった。

いつでも青い曇り一つない空の下整然とカットされた緑の芝生とパステルカラーの一軒家が立ち並ぶ光景。彼にとっては違和感でしかなかった。真っ黒な服を着て俯いて歩いた。

おまけに父は野球選手で典型的なスポコン野郎だったから自分の親とは到底思えず心を通じ合わせることが難しかった。学校ではチアリーダーとつるむフットボール部が大嫌いだった。

人と話すことが苦手で友達も出来なかったから自室でホラー映画を見ることだけが楽しみだった。「フランケンシュタイン」はいい映画だ。誰にも愛されないフランケンシュタインは自分を見ているようで気が楽になった。

ディズニーに就職しても劣等感、欠落感はあいかわらずで、ずっと寂しかった。このまま誰にも理解されないまま人生を終えるのかと思うと気が狂いそうになった。

映画を作ることにした。

主人公は手がハサミの青年エドワード。愛する人を抱きしめるにも傷つけてしまうこの手を持つエドは誰ともうまく接することが出来ない彼自身だ。
予期せぬ訪問者により一人暮らししていた古城から下界の人々と触れ合い、当初は歓迎されるも次第に疎まれる存在になってしまい、元居た城に戻る羽目になるも意中のキムと一瞬だが愛を交わすことが出来た。

この世界的大ヒット映画を作った後彼は、『フランケンシュタイン』のヒロイン、ヘレナ・ボナム＝カーターと結婚、憧れのフランケンシュタインになった。

彼の名はティム・バートン。
今やファンタジー映画の巨匠だ。