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日本から少し遠いこの見知らぬ街に愛着が湧いてしまうのは、きっと(ラオス・ルアンパバーン)

ああ、好きだなあ。何度目かわからない同じひとりごとをつい呟いてしまう。それは特別な誰かに向けたものではなくて、ただ言葉にしなければ、私の中に蓄積され、いずれ何か違う物質に突然変異を遂げてしまうようなそんな気持ちになったから。例えそれが決して悪いものではなく鮮やかで、美しく、魅力的なものだったとしても。
それは何だか淡い初恋のようで、わたしを至極切ない気持ちにさせた。

沢山の長い宛名の無い、ラブレターを綴ってみたけれど、何だかどれもしっくり来ない。だからひたすらに写真を並べてみることにした。

息を止めて、1枚のシャッターに全神経を集中する。
獣の狩りのようなあの瞬間が好きだ。

「上手く撮る」はなかなかに、まだまだ、難しいけれど。
それでも私はシャッターを切らずにいられない。
この街を、愛してる。


「ラオスにいったい何があるというのですか」
頭の中に、一度も読んだことのない本のタイトルがポツリと浮かぶ。
一度も読んだことがないのだから、どんな内容なのかを知らない。
もしかしたらラオスへの愛がたっぷり詰め込まれているかもしれないし、その逆かもしれないし、全く関係の無い内容かもしれない。

温もりを感じるものに、人は愛着が湧く。

「ラオスにいったい何があるというのですか」
そう、ラオスには何もない。
コンビニもない。
娯楽施設もない。
ショッピングモールも、便利な乗り物も何もありはしない。

あるのは、溢れる程の愛しさと、泣きたい程の暖かさと、私達が失ってしまった、あるいは失いかけている、地球と人とが共存し慈しみ合い生きる、文化だけなのだ。

夕陽が川へと帰っていくのを見届けながら、気づけば、泣いていた。

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