白砂生松

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  • 私小説「七里ヶ浜物語」あの頃私は?鬱のはじまり?だったのかも

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初夏の頃(28)footprint

初夏の頃(28)footprint あの時、私、死のうとしてた! うん、知ってた! 別荘は自分で燃やした? 分かった? 僕らの思い出は僕らだけのものだからさ 子供ができたのは知ってた? なんと無く感じてた、自分が子供がこんなに好きだったかな?って 何歳? 3歳になった。・・・・・ね! お名前は? 夏実ちゃん! 笑、そうか、夏実ちゃん!まんま、いい名前だ! 生きてると思ってた? オレたち何度も宇宙的に魂が繋がったから生きてるとはいつも感じてた。 確信してた、意識がふーって消え

    • 初夏の頃(27)夏の終わり〜

      初夏の頃(27)夏の終わり〜 夏休み最後の日は軽井沢最後の日だった。 彼女と私は素晴らしく濃密な時間を過ごした。 それは人生の中でも、とても充実して満足だった。 別れは別荘の玄関、抱きしめられれてキスして、受験!幸運を祈ってる。 ありがとう!お元気で、いつか又! 鉄扉の門を閉めて手を振った。 それが最後だった。 あとはベストを尽くして受験した。受験会場は大学の外だった。都内の大学は殆どロックアウトで入ることも出来無かった。入学式も別会場、そこにも学生デモは押し寄せた。オリ

      • 初夏の頃(26)エロスの愛 Love

        初夏の頃(26)エロスの愛 Love 軽井沢に戻った数日後は雨だった。午前中から二人は確かめ合う事を約束していた。 雨の中、自転車でびしょ濡れになった身体は冷え切っていた。お風呂に暖かい湯は満たされていた。ゆっくりと温まった。バスタオルを腰に巻いて出るとダイニングテーブルには沢山の食事が用意されていた。 朝ごはんも食べずに来たのでお腹は空いていたが、私はまだオーブンに何かを入れていた彼女の後ろに回り、後ろから抱きしめた。頸にキスをし、両方のバストを後ろから手に抱きしめて乳首

        • 初夏の頃(25)御射鹿池

          初夏の頃(25)御射鹿池 麦草峠の下りはつづれ折りが続く急勾配だ。 ポルシェ356の水平対向エンジンは空冷で、登りもキツかったが、下も、未舗装のガタガタでスピードが出せないとエンジンには厳しい。国道とは名ばかりのR299だ、だいぶ降り切ったところで、国道から左に折れると舗装路になった。 彼女は詳しい!用水路の工事のために舗装になっていたみたいだ。やがて道路脇のパーキングで車を冷やすために、エンジンを切らずに停車した。 美しい、小さな湖のほとり、堰止めのダム湖だ。 エンジンをか

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        • 私小説「七里ヶ浜物語」あの頃私は?鬱のはじまり?だったのかも
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          初夏の頃(24)麦草峠

          初夏の頃(24)麦草峠 清泉寮からさらに上に広い道があった。八ヶ岳八巻道路。まだ玉石砂利の道だが車線は広い。 右に折れて野辺山に向かった。 「スティーブ・マックイーンは何処が魅力ですか?」 「孤独感?かな。それと声、短い髪、寂しそうな目と眉間の皺、Gパンに白いTシャツが似合う、車好き、運転の上手さ、スタントマンを使わないところ。 肌触りとか、温もりとか、五感で感じることが出来る人、役者なのに人間を感じる。」 「どんな小説がお好きですか?」 「ヘルマン・ヘッセ 「知と愛」

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          初夏の頃(23)Do You Believe In Magic?

          初夏の頃(23)Do You Believe In Magic? 良く寝た! 朝の空気は気持ちよかった!ベッドの中で目覚め起きた瞬間に何かの啓示を天から受ける感覚が時々ある。今朝はそんな朝だった。 隣のベッドはもぬけの空だった。 私も着替えて散歩に出た。気持ちの良い高原の朝、上空は晴れて青空だが視界の下の方は霧が流れていた。針葉樹の森を歩く鳥のさえずり、カッコーの遠くにこだまする声。素晴らしい朝だった。 清泉寮の朝は特別気持ちよかった。 森を抜けて清泉寮のロータリーまで来る

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          初夏の頃(22)暖炉とダンスと

          初夏の頃(22)暖炉とダンスと 話終わると彼女は起き上がって暖炉の前でバスローブを脱いでだ。 暖かい光の中で彼女の体は美しい彫刻のように見事にデフォルメされた様に均整の取れた完璧な美しさを、私の脳裏に焼き付けた。 揺らめく暖炉の火に背中やお尻を向けて、踊る様に手を広げ、ゆっくりと回り始めた。そして、手招きする。バスローブの僕の体はまだ熱を持っていて、早く脱ぎたかったから、その誘いに乗った。全身、裸で二人は静かに距離を保って互いを見せ合っていた。 アダムとイブとは違う私たち二人

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          初夏の頃(21)kokuhaku

          初夏の頃(21)kokuhaku hirosi ココカラハ コクハクデス 私は貴方に恋をしました。 もしかすると生まれて初めての恋かもしれません。 真っ直ぐで、嘘つかない、真面目で飾らない青年に。 まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき 前にさしたる花櫛の 花ある君と思ひけり やさしく白き手をのべて 林檎をわれにあたへしは 薄紅の秋の実に 人こひ初めしはじめなり 年上の人に恋心を抱いたと思った時期もあったけど、今は違ったと君の前では正直に言える。 私は、心のどこ

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          初夏の頃(20)ロッジ キャビン 2

          初夏の頃(20)ロッジ キャビン 2 「ヒロシ、お風呂のお湯、入ったと思うから、先に入って。出たら、私も入る。」 私は察して、先に入った。バスタオルとタオルは沢山あって、バスローブもあった。 キャビンは全てログハウスのような部屋でお風呂場は暖かい湯気が充満して水蒸気たっぷりで呼吸は気持ちいい。熱目のお風呂は疲れた体を癒してくれた。バスローブを着て出た。 冷たい水の入ったコップを手渡された。「入ってくるね!」 彼女は長い時間かけてお風呂に入っていた。ロングドライブで疲れていた

          初夏の頃(20)ロッジ キャビン 2

          初夏の頃(19)ロッジ キャビンに

          初夏の頃(19)ロッジ キャビンに 僕はお肉モードでサーロインステーキ500gをサラダとスープとパン付きで! 彼女は魚介のグラタンとサラダ。 万平ホテルは空いていた。窓際の席の隅の方に案内してもらった。 食事中は、好きな食べ物とか、嫌いな食べ物、絶対食べられないもの、 出汁の話とか、京都の味と東京の味、昆布と鰹節とか、味醂の話。 蜂蜜と花の香りやハーブやスパイスの話、舌の感覚や嗅覚の話など、他愛にない話をしていた。ぺろりと平らげた。 デザートにアップルパイと彼女はガトーショコ

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          初夏の頃(18)インベンションとシンフォニア

          その朝、軽井沢の街は深い霧が流れていた。 視界が悪くなるほどで、到着した頃には自転車の私のウインドブレーカーもしっとりと濡れた。鉄扉の門を開けて玄関に近づくとドアが少し開けてあった。中からピアノが聴こえる。スケールとか、指鳴らしのためのパッセージとか短いトリルとか聴こえてきて少し聴いていた。 ドアを静かに開けて中に入ると〜「おはようございま〜す!」と大声が響いてきた。なんだか元気そう。 入って行くとお茶が入れてある、「飲んでいて!」と言って、弾き続けた。楽譜を見る事もなく、ミ

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          初夏の頃(17)ピクニック

          初夏の頃(17)ピクニック 「散歩しよう!」「うん!」 お腹一杯の腹ごなし、食べ物は車に載せて、後はそのままにして少し沢を降りてまた、昇りやすそうなところを見つけて上がった。 彼女は食事の前にエプロンのような長いスカートに着替えたが、それほど歩きずらそうでも無かった。私は先に立って時々手を引いて、でも段差の高いところは自分で歩く方がいい。明るい空の見える木々の方に上がって行くと一本道になり道はないけど歩きやすくて、少し馬の背のような尾根に少しずつ視界が開けて大きめの岩があって

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          初夏の頃(16)山岳ドライブ

          初夏の頃(16)山岳ドライブ いつもより少し早め、早朝の時間に着いた、既にシルバーの356は暖気していた。彼女は玄関ポーチから籐のバスケットを持って降りて来た。 帽子はキャップで、スポーティーな服装にポケットの沢山ついたベストを着ていた。サングラスはレイバンのティアドロップのシルバー光沢のホリゾント!あれは確か?航空機用だ!そのまま車に向かう。後部座席にはヘルメットとゴーグルも二人分載っていた。 籐の大きな手提げの深い丸い籠も載っている。段ボール箱にはポットとかケトルとかコ

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          初夏の頃(15)会話

          初夏の頃(15)会話 二人でシャワー浴びた。熱いシャワーだった。 ゆっくりと全身を温めるように、軽くキスはしたがシャワー! 雷鳴が遠くに聞こえた。やがて、突然閃光が光って、濡れた彼女の 耳からうなじと顎のラインが、フラッシュして残像として残った。 綺麗な残像だった、儚い残像だった。 雷鳴はそれでも雷光から数秒あった。まだ遠い、 少しして、今度は近くにもっと近くにズドンと落ちた。光と音はほぼ同時に、私は出ようとして居たので少し離れた位置から閃光の中のシャワーを浴びる彼女のシルエ

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          初夏の頃(14)不覚にも寝る

          初夏の頃(14) シャワーは私が先に浴びて2階に上がる。 身につけてるのはバスタオルだけ。 乾いた風が気持ちいい。 ソファーに座り大きな窓の外を眺める。 木立は疎だがこの家からは隣家は見えない。 針葉樹と広葉樹の緑の木々の葉と空と芝生だけ。 明るい陽光に乾いた爽やかな風がわたる。 開け放したドアから階下に電話があった。何か話しているようだ。 ふと この大きな家は誰の持ち物なのだろうか?そんな風に考えると漠たる不安が支配する。 だから、いろいろと何も考えないようにしていた。刹那

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          初夏の頃(13)会話

          初夏の頃(13)会話 ピアノを弾いた後、料理の前に彼女は着替えていた。 それは、胸元が大き目に開いた濃い黄色、マンゴー色の半袖のタンクトップ! ランチタイムはダイニングで楽しく会話した。 「軽井沢は好きですか?」「大好きかな!東京の湿気が苦手。」「僕もです。」 「暑い日も在るけど、朝夕は涼しい。」「霧も好き。乾いた風と明るい光。 電話も余り掛かって来ないし、てっ言うか、余り教えてないから。」 「僕も、電話掛かっても居ないしね!」と笑った。 「此処まで来る行程も好きかな、電車で

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