夏なので怖い話を書きます。

夏なので、以前ぼくが体験した怖い話を書きます。別段オチも無い、本当にただの怖い話なので興味が無い人は閉じて下さい。

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正確な年齢は覚えていないのですが、初めて携帯電話を持たせてもらった時期なので、中学3年生くらいの事だと思います。

最近の子はもっと早く携帯電話を買ってもらえるんでしょうけど、当時としてはちょっと早いくらいだったと記憶してます。高校に入る前に持たせてもらえれば御の字という感じで。機種名はさすがに覚えていませんが、きっと見たら分かります。Pなんちゃらだったと思う。「Pなんちゃら」が最近の子には伝わらないと思いますけど。

今でこそ携帯電話、もといスマホがポケットに入ってないと不安になる程ですが、当時も当時でメールが来たら速攻で返信してたし、好きな子とやり取りしてる時なんかは「センター問い合わせ」までして、メールがセンターで詰まって無いか確認してました。ここで言う「センター」らしきドット絵が画面に表示されていたので、「これがセンターか」と受け入れていましたけど、よくよく考えたら「センター」って何なんでしょう?ドコモの施設?それとも概念?謎は深まるばかりです。

まぁとにかく、そんな具合で当時も当時とて携帯電話は肌身離さず持っていました。あの夜も、しっかりと枕元に置いて。

真夜中、ぼくは目が覚めてしまいました。仰向けで顔は壁側を向いた体勢。目は覚めてるのに、身体はピクリとも動かない。「またか。」と思いました。

ぼくはたまに金縛りにあう体質なんです。寝付きも悪いので睡眠の質には慢性的に悩まされてるのですけど、金縛りは年に一回くらいの頻度であるので気になって調べた事があり、(詳細は忘れましたけど)科学で解明できる現象だと分かって以降は怖くもありませんでした。だから「またか。」と。

加えて、金縛りの時に心霊現象を目撃する理由も知っていました。恐怖によって脳が錯覚を見せるみたいな話で。だから、例え何かが見えてしまったとしても錯覚だと思えば耐えられると思っていました。ただし、視界の隅に写り込んでいた「それ」は、心霊現象というよりも、物理的な現象でした。

枕元に置いてあった携帯電話の明かりが付いていたんです。いわゆるパカパカ携帯、二つ折りの携帯だったんですけど、壊れたら嫌なので寝るときは間違えなく閉じて寝ていました。それが、なぜか開いてるんです。それで明かりが付いて光ってる。ぼくは「何でだろう」と色々考えました。まぁ寝ぼけて自分が開いたのかな、というかそれしかありえない、など。ちなみに、金縛りの時は脳は完全に起きた状態なので、頭は通常通り働きます。ただし、顔とか目線は一切動かせない。携帯電話は、視界の隅にギリギリ入ってる程度でした。

次の瞬間、携帯電話が動きました。着信などで震えた感じではありません。ズルッと引っ張られる感じ。ぼくの視界の外側に、数センチ動いた形です。さっきまで全体像がギリギリ見えていた携帯電話が、4分の1くらい視界から外れました。誰かいる?誰かが視界の外側にいて、携帯電話を動かした?家族の誰か、とも考えましたが、それはありえません。そっち側は壁に接しているので、立つ場所が無い。

ぼくはいよいよ怖くなって来ました。金縛りは怪奇現象では無い、科学で証明できる現象だ。そして何かが見えたとしても脳の錯覚だ。しかし、目の前で起きている現象は、確かにぼくの携帯電話を動かしているんです。こればかりは説明がつきません。

視界の隅に何かが見えました。二つ折り携帯と同じくらいのサイズの影です。動きが生き物っぽい。ネズミ?いや、もっと意思がある感じの動き方です。

それは、おじさんでした。小さなおじさん。携帯電話サイズの。

余談ですが、小さなおじさんの目撃談が世界中にあるそうです。それを知ったのはこの出来事の大分後で、何故か安心しました。結構いるんだって。

そのおじさんは、ぼくの携帯電話の上に馬乗りになって、両手を大きく振り回しながらボタンを乱打していました。乱打。そして、ぼくが起きているのに気がつくと、小さなおじさんは小さく会釈をしました。

ぼくが覚えているのは、ここまでです。もちろん夢かと思ったんですけど、起きてから携帯電話を確認したらめちゃくちゃな文字列が打ち込まれた新規メールが未送信フォルダに入ってたんですよね。宛先は、なぜか自分でした。





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