見出し画像

「廃刊」で打ち切りになる作品を無くしたい。

漫画家のかっぴーです。少年ジャンプ+「左ききのエレン」、スピリッツ「15分の少女たち」原作者やっています。

原作版「左ききのエレン」を5年以上連載していた媒体・cakesが廃刊となり、ちょうど1週間前noteに移籍し、完全なインディーズ連載として再始動しました。

noteが新しく開始した「メンバーシップ」というサービスを利用しています。

正直な所、不安で胃が痛い日々が続いていますが「こういう事を、多くの作家が考えなくてはいけない時代が来る」と思っている節もあり、おこがましい様ですが私の見苦しいトライ&エラーが、何処かの誰かのヒントになる日が来るのでは無いかと思い、前向きに気力を振り絞っている次第です。

と言うのも、ふつう雑誌などの媒体が休刊・廃刊になると連載作品は打ち切りになります。人気がある作品は、同じ出版社の別に雑誌へ、というケースもあるかも知れませんが稀な事です。

そして、ざっと調べた限りですが、ここ5年で休刊・廃刊になった雑誌は30以上あるそうです。WEB媒体などを含めると、媒体の都合で連載が継続できなくなってしまった作品が数え切れないほど存在します。

もちろん、同人誌などで作品を描き続けるケースはこれまでもあったと思いますが、こと「連載」となると事例が思い当たりません。

noteに移行するに際して、私はメンバーシップが一定数に達しなかったら、自分で作品を打ち切ると宣言しました。ほんの僅かでも読者が付いてきてくれるなら描き続ける甲斐はあるとは思っていますが、これは私の意地です。cakesで連載していた時と同等の条件を自力で整える事が出来なければ、廃刊の道連れになってしまった形になる。それでは、私は今は亡き古巣を恨んでしまうと思ったんです。

少し余談になりますが、cakesはここ数年で度々炎上騒ぎを起こしていたので、正直キライな部分もありました。それでも古巣は古巣、自分が住んでいた故郷のようなもの。故郷の悪口を言っても、嫌いな部分があっても、それでも故郷への愛情はあるものだと思います。だから、私はcakesが廃刊になると聞いて、まずは一重に残念でした。

そして、そのあとに「同じ条件を自力で整える方法を考えよう」と思ったんです。note以外の選択肢も当然ありました。自社で媒体をイチから作る事も視野に入れて、エンジニアに見積まで取っていました。でも、色々と考えた末に「noteに力を入れるためにcakesを廃刊にしたのなら、その覚悟を信じよう」と思ったんです。(cakesとnoteは、同じ運営元なんです)

同じ条件を整える事が私の意地だと書きましたが、読者から直接応援されて原稿料を賄う作家が「週刊連載」を続けたらスゴい事だと思ったからです。それが成立したら出版社から睨まれるかも分かりませんが(笑)幸い私は出版社との仕事も多いので、取引がある間は大丈夫かなと思ってます。

ここで出版社の顔色を伺う訳では無いのですが、私は出版社での連載を辞める事はまず無いと思っています。私は出版社の優秀な編集者と仕事をするのが好きだし、編集者と一緒じゃ無いと作れない作品があると思っているからです。スピリッツで連載している「15分の少女たち」などは好例です。「アオアシ」などヒット作品を多く手掛けている編集者と仕事をする喜びと学びは大きい。それでも、原作版「左ききのエレン」の連載をインディーズで意地でも続けたい理由は、漫画家の、ひいては作家の働き方に出版社以外の選択肢が無いのはおかしいと思ったからです。

よく言われる話で「本の印税10%(原作者は4%)これって悪習だよね」というものがありますが、私自身も世知辛いとは思いつつ、出版社にお世話になりながらこれを言うのはどうかと思っている派で。「文句を言うなら一から十まで自前でやってみなさいよ」と、出版社の優しい人達は言いませんけど、言いたくもなるはずです。私は、それをガチでやってみた上で「やっぱり出版社と仕事するの楽だわ、仕事が捗るわ」と思いたいんです。あくまで選択肢として、自前でやる道も持っておく。その上で、出版社との仕事も選ぶ。そうなったらフェアな関係だなと思うのです。

ですから、cakesの時と同じ条件を整えて、初めてスタートラインに立てると考え、躍起になっている次第であります。現時点で、すでにスマートさの欠けらも無くジタバタと見苦しく活動しておりますが、その分色々な学びがあります。「こうやると応援される」とか「こうやるとウザがられる」とか…。そうして傷だらけに(主にメンタルが)なりながら、いつか誰かの道標になるやも知れないと信じ、「読者の支援のみで連載している、幸福な作品」を現実のものにしたいと思っております。

また、cakes廃刊に伴い活動の場をnoteに移行したのは私だけではありません。

理想を語らせてもらえるなら、cakes出身の作家が全員、別の場所であっても連載を続けてくれたらいいなと思っているので、余計なお世話かも分かりませんがここでご紹介させて頂きます。

cakes出身の作家さんが全員、変わらず活動を続けられる事を切に祈っています。私も、この逆境に負けない様に出来る限りの努力を続けたいと思います!

どうか、応援の程を宜しくお願いいたします。

かっぴー

サポートも嬉しいですが、よかったら単行本を買ってください!