見出し画像

ゆめが教えてくれたこと その2

庭を見ながらぼーっとする昼寝時。
時々聞こえる車のエンジン音にはっとして振り返る。
さっきお昼ご飯を食べたばかりで身体は満たされている。
お外でランチもいいけど自分で作ったごはんが一番安心するの。
“さぁ、お昼寝タイムだね”と言わんばかりの太陽のぬくもりについついうとうとしている。
足先の細胞から眠りにつく感覚。机と頭の距離がぐっと近づく。
あぁ、頭の細胞までもが眠りについていく。

“私たちの声をきいて。”

またこの声、ということは私は眠っているの?

そうだ、私は納得いかないながらも草花と話すことを辞めていったのだ。
休み時間ごとに運動場へ行っていたのも辞めてしまった。
草花と話していた時間はぽっかり穴になり、どうしたらいいか分からなかった。クラスメイトを一生懸命観察した。
外に行ったらドッチボールをする、鉄棒をする、砂場でお山をつくる。
教室でいるときは本を読む、人とおしゃべりをする、絵を描く。
今までにやったことないことばかりだ。
ひとまず本を読んでみるけど、文字の羅列にしか見えなくて、内容は全く入ってこない。
次はどうするのかな、私。


クラスメイトがお家からお花を持ってきて、教室に飾ることがあった。
心が躍った。
一緒にやりたい、小走りに近寄ってクラスメイトに話しかける。

“きれいだね。お家のお庭にあるの?”

心臓の音がうるさい。
お友達の声が聞きたいの!心臓さん、もう少し静かにお願い。

“そうだよ。お母さんに持って行けって言われたの。”

く、苦しい。息ができない。近寄りたいのに近寄れない。
足がすくんでたてことに気が付いた。
この子と仲良くなりたいという思いが消えてゆく。


将来の夢を書く授業があった。
前なら草花のお仕事って書いたけど、今は頭の中も配られたプリントも真っ白けっけ。時間内に書けるわけもなく、宿題になった。

“ねぇねぇお母さん、将来の夢ってなんだったの?”

“学校の先生よ!”

明るい声で答える母の直ぐ隣で、私は自分がものすごく遠くにいるのを感じた。

結局、草花のお仕事と書き、クラスメイトの目を盗むようにして提出した。
先生は花まるをくれたけど、その花まるさえ私をくすくすと笑っているように見えた。

そのまま返されると思っていたプリントはその場で回収され、翌日には廊下に掲示されていた。
頭から火花が出た。また何か言われる。
これ以上草花と離れたくないのに!!早く返してほしい以外なかった。
クラスメイトから“草花の仕事なんだー”と言われる度、逃げたかった。
土足でぐりぐりとえぐられる感覚だった。
こんな思いをするなら学校の先生でいい。


“あなたに真っ直ぐに見てほしいよ。私たちの声をきいて。”

ぬくもりを感じて目が覚めた。庭の植木たちが風に揺れている。
一瞬だったけど、こっちを見ているような感覚があった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?