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洞口依子のら猫書簡

武富一門・師匠ヨシミと弟子の涼へ

今日、サリー鳥越嬢からちょっとさみしい話を聞いたので黙っておられずお伝えします。

松風苑の中にある一部の庭がなくなったそうです。つまり金城哲夫さんの仕事部屋があったあの2階へ上がる階段『キンジョーステップ』が消えたという知らせです。あの階段があったあたりからバーベキュー場の辺りというのかなあの庭の一部が消えたんだそう。事情はよくわからないが、サリー鳥越嬢は映画関係筋から聞いた情報だから確かだ。しかもサリー自身が写真を送ってきてくれた。ここに留めておく。

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ダンプ出入口とあるから、何かマンシオンのようなものが立つんじゃないかという予想。松風苑といえば、ちょうど昨年の夏前に福建省の永和さんのお別れの席を松風苑でやったんだ、サリーのセッティングで涼と私とで永和さんと昼会席をしっかりしたコロナ対策されたものすごい背が高いアクリル板が各席にあつらえられた個室で、窓も空いてて、こんなにしっかりコロナ対策して出迎えるんだなってちょっとびっくりしたほどだった。食事前に金城哲夫さんの仕事部屋を見学させてもらおうってあの階段を登ったんだ。階段を登るときに風が吹いて月桃の花がまるで鈴を鳴らすように揺れていてほのかな甘い香りを放ってたよ。

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2階に上がるのもやっとだったけどどうにか涼に支えてもらいながら上がったら、もうなんか奥の机のある部屋までちょっと喉に何かツカエルものが込み上げてきてウッとなったんだ。よくみたらそこには75年沖縄博の脚本がなぜかどどんと陳列されていて私はそれをみて涙がこみあげてきてしまったんだ。なぜだろう。私にはさっぱりわからなかった。その時は。で、その理由となる話は後で涼から聞いたけど、さらに、怪獣酋長の天野っちからもっと詳しく聞いたんだ。金城さんの仕事部屋を見た後に天野っちに電話したのよ、私。彼は以前大きな花束を抱えて金城さんのこの場所を東京からわざわざ訪ねているんだよね、確か親族のご好意で遺品とかも見せてもらったそう、そしてあの階段の意味や、いろんなことを聞いてまた涙したんだ。南風原の、風がそよいで月桃が揺れていたあの庭。奥様のて作りのゼリーの懐かしい味にほろりとなったり。しかも、ウルトラ関連を知らない福建省の永和さんのお別れ会じゃなければ来なかったってのも不思議な縁だった。

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こうして失われてゆくんだな、いろんな昭和が。南風原町はウルトラの里というんだそうだが、キンジョーステップが消えたことを知っているのだろうか。松風苑のこの金城さんの仕事部屋に続く階段もいろんな事情があったんだと思う。親族が抱えるいろんな事情はあるだろう。円谷のヤフオクの一件も然り。ブレードランナーのスシマスターの青山墓地のお墓の件しかり。そんなこんなは色々ある。私は特にファンでもないが、ウルトラ関連を見て育った世代としてせめてこうして失ってゆくものをせめてリベットで留めておきたくて手紙を書いて君たちに知らせた。ただそれだけだ。うん。それ以上でも以下でもない。ちょっとさみしいけどな。

私は死んだら失われてゆくままにしてほしい。一つ一つの記憶に宿るそれすらも彼方に風化させてほしい。那覇のあの生前葬もやったし。あの桜坂の公園の闇映画劇場。あの夜ほど美しく陽気で優しい沖縄らしい夜はなかったよ。みんなで笑えたんだ。闇の中でスクリーンに向かって。そんな時間を共有できるってすごいよ。

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そんなこんなだけど、人生は快晴だ。そう思いたいよ私は。

ではまたね。コロナ禍で大変だと思うけどどうかごきげんよくお過ごしください。元気でいてよ。

バンクーバーより愛をこめて ヨーリーより🐾

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