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この生徒さんとはやっていけないと思ったら

この生徒と合わないな、レッスンが憂鬱だなと思う生徒をお持ちの方はいらっしゃいますか?レッスン継続をお断りしようかなと思う場合もあると思います。


私もそういう方がいらっしゃいましたが、自分から切ったことはありません。ハラスメントを受けている、などといった場合を除いて、レッスンを継続するかどうかは学習者が決めることであり、その決断を代わりにしてあげる必要はないと思うからです。

やっていけないと思う理由

おそらく今まで200人以上の方とトライアルレッスンをして、100人くらいは複数回のレッスンを受けてもらったと思います。
中には、どうしても気乗りしない生徒のかたも極々少数いらっしゃいます。気乗りしない理由は主に2タイプです。
1:イレギュラーなレッスン
私があまり得意としない教科書を使わない会話のレッスン。特に学習者のレベルがあまり高くないと、盛り上がらないどころか、会話が成立しない可能性があるので憂鬱です。
基本的に私は初級の生徒に会話だけのレッスンはしないし、上級でもできるだけ教科書を使います。ただ、一部教科書反対派の方がいて、無理強いするわけにいかないので、やむを得ずフリー会話をしています。

2:極端に進捗が遅い生徒
2年ぐらいレッスンをしているのに、まだ「Genki1」や「みん日 1」を終えられない人がいらっしゃいます。休みがちで、数カ月休んでいる間にそれまでに習った内容をすっかり忘れてしまう方、脱線が多くて進捗が極端に遅れて、文法、語彙が定着しない方です。ご本人も原因がわかっていると思うので特に指摘はしません。みん日1,2を終えても過去形さえ怪しい方がいらっしゃいます。Genki 1,2を使い復習と称して再度初期文法を導入、それでも文法、語彙ともにあまり定着していないのでJLPT N5, N4の対策本をしていますが、記憶を塗り替え型のようで具体的には以下のような感じです。

私「今日の昼ごはんはなんでしたか?」
生徒:「ブリートです」
私「週末はどこか行きましたか」
生徒:「お母さんの家に行きます」もしくは「金曜日は友達とコンサートにいきます。と、土曜日はお母さんに会います」

それぞれの課の練習問題をしているときも、理解は怪しいのですが、なんとかヒントをあげて問題を解いています。定着していないので同じページを繰り返そうとすると「このページはもう、しましたよ」と言われてしまいます(しかも英語で)。
学ぶペースがゆっくりという状態を超えているので戸惑います。

生徒さんが決めること

私の手に負えないし、ほかの先生と学習するほうが上達するかもしれないから、辞めてもらおうかなと考えたこともあります。でも、特に大人の生徒の場合は、先生と相性がいいかどうか、レッスン内容に満足しているかどうかは本人が決めることです。そして、必ずしも日本語の上達に価値を見出しているのではなくて、週に何時間か自分の向上のために趣味の語学を学ぶことに満足感を感じている可能性もあります。

ピンチはチャンス

教える側としては、思い通りにいかないとストレスです。でも、このストレスのおかげで、私の日本語講師としての対応力が向上したと思います。

一つ目のパターンの方は、私が日本語を教え始めてから10人くらいいらっしゃたと思います。ほとんどの方が最終的には、Genki、みん日、JLPT対策本などの通常のレッスンに移行してくれました。何回か相手の要求を聞いたフリー会話をして、信頼関係を構築、それから徐々に文法の弱い部分を書き溜めて、文法説明を取り入れて、「いくつか文法を抑えた方が会話もスムーズですよ」という感じで教科書レッスンに持ち込むのです。これで憂鬱なレッスンが減りました。

二つ目のパターンも何人かいらっしゃいましたが、進捗が遅いのは一時的で、細く長く続けて行って数か月後に突破口が開けた方がほとんどでした。教科書の形式に慣れなかったり、プライベートが忙しくてそもそもレッスン中にほかのことを考えていて進捗が遅れていることもあるので、お互いに焦らずに地道に教科書を進めていくようにしています。
ただ、今までに二人、年単位で教えても、進捗がほとんど見られない方がいらっしゃいました。それでも、私はほかの学習者の習得パターンを大量に見ているので、「この人は例外中の例外なのだ。ご本人が満足ならば同じ内容のレッスンを続けよう。」と思えるようになりました。
レッスン数をこなせば、解決できる問題が増えると同時に超レアなパターンに当たることも出てきます。いくら優秀な医者でも手術の成功率100%ということはありません。日本語講師も同じです。

自分からは切らない


私にとって、憂鬱なレッスンが必ずしも不快なレッスンなわけではありません。最初は憂鬱でも工夫次第で憂鬱でないレッスンに変えることは可能だと経験をもって知ったので、自分から切ることはしないという私の方針を今のところは続けようと思います。

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