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カゴの中の天使

私は彼に捕まえられた。
天使と言う存在は、人間からしたら珍しいようで、
政府がきびしく保護する対象だそう

政府に見つからないようにこっそりと私を守ってくださる

鳥かごからは出られない
私はいつも彼を見ているだけ

たまに静寂を殺すように羽をパタパタと鳴らせてみせるの。

それでも彼は5回に1度ほどしか振り向いてくださらないけれど

ご主人は1人で生きていらっしゃる

いつも何かを熱心に書いている
だからできたペンだこ

あの華奢な見た目からは想像ができない、あのゴツゴツした手の感じ。
たまらない。

私は意識を失っていて、気がついたらご主人のもとにいた

だから、彼の過去は知らない
きっと、お友達が少なくて、一匹狼に勝手になってしまうタイプだと思うの

そんな彼が好き

3時になった。ご主人はいつも休憩でコーヒーを入れているの

あっまたつまずいていらっしゃる。
あぶないあぶない

豆を挽いていい香りをただよわせて、雰囲気は完璧なのに
毎日コードに引っかかって、つまずく

そんな姿が愛おしい

私はのコードを引っこ抜いてやりたいカゴから出て手をとってあげたい。

でも私はここから出られない
彼は私のことを心配してカゴの外からは出さない。
その優しさに惚れてしまう

あっ羽が抜けてしまったわ。

最近羽が抜ける日が増えてしまったの
私は生まれつき羽が少ないものだから、こまっちゃう

本当の私になっていく。
何も隠せないようなこの感じ

恥ずかしくってたまらない

ご主人へのこの思いも隠せなくなるのかしら。なんてね

彼はたまに私を見て
「ん?ひとまわり小さくなったかなぁ。俺がデカくなったのか。ははは」
だなんて。冗談のひとりごと言っている

あ、また抜けてゆく

この羽を気にしてカゴの外に出さないのもわかっている
本当になんて優しい人なの。

でももっと彼の近くにいたい。
肌に触れたい。
そして彼の字をずっと見ていたい。
息を感じたい。

私は日に日に動けなくなっていきました

目が覚めているのか、夢なのか、昨日なのか今日なのか

あれ私も羽の元気がないみたい

体が1ミリも動かない。

そろそろ3時だわ
豆をする音が聞こえてきた

今日もいい香り。

私、まだ1度も彼がつまずくのを助けられていないのに

私が人間だったらよかった
彼を支えて、共に生きられたのに

すると、目の前がパッと明るくなって何も見えなくなったの

なんだか懐かしいこの感触。
あぁご主人のペンだこのある指だ

優しくて温かい。


「「守れなくてごめんな。こんな僕でごめんな。いっしょに過ごしてくれてありがとう」」

遠くで主人の優しい、今まで聞いたことのないような声
すすりながら震えた声

幸せでした。

あなたと出会えて
私は世界一の幸せ者です。


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